加藤寛一郎 『生還への飛行』 講談社 1998

今月26日で24歳になってしまうことに愕然としている、
らぶナベ@14歳のあの頃がすでに10年前になってしまっている
なんてかなり驚きっす!(*o*)

さて、『生還への飛行』加藤寛一郎著(講談社+α文庫)1998年初版。
著者は航空力学の専門家で東大名誉教授。
ばりばりの理系だけど文系チックな本をけっこう書いている。

内容の方はまずこの本のテーマ性がとても面白い。
航空機を操縦している最中の事故やミスは一瞬で死につながってしまうことが
多くて特にテストパイロットなどは「優秀なやつから死んでいく」
とまで言われるほど危険な目にあうことが多い。
そうした中で事故を経験したパイロットでも生き残ったパイロットと
死んでしまったパイロットに何か違いはあるのだろうか?
窮地を乗り越えて生き残ったパイロットたちに
共通点ははたしてあるのだろうか?
・・ということをきっかけに絶対絶命の死地を脱した
世界中のパイロットへのインタビューを通して
この疑問に挑もうとしたとても興味深い一冊。

インタビュー中もっとも微妙でかつ確信的な質問である
「なぜ貴方は生き残ったのか?」という答えに対して各パイロットたちは・・
○絶対にあきらめなかったからだ(エミール・ウィック)
○いま何が起こっているか正確に判断できること(ニック・ウォーナー)
○怖がらないこと、アクティブにする。麻痺してしまってはだめだ。
何が起こっているか知っていることが必要(ジャン・クーロー)
○キャプテンが平気な顔をしていたら大丈夫、
だけどもし彼がうろたえていたら、たいへんだぜ(ザビエル・バラル)
○平均的なパイロットよりは、少し早く事情を理解する(ピーター・ベガー)
○基本にもどる(藤原定治)
○できるだけ変数を減らして処理するのがパイロットの仕事
(リン・フリーズナー)
○生きるために、一生懸命働いた。
・・そして新しいものには常に疑いを持ってのぞんだ(トニー・レビエル)
→などが特に印象深い。

そして著者が・・・
○航空事故は基本的には「予想できないこと」が原因で発生する。
というように、非常的事態に接しなおかつ生き残ったパイロットたちに
共通した点として四つ列挙している・・・
1:生き延びた理由の一つに「幸運」を挙げている。
2:事故中、時間の経緯が極めて遅くなる。
3:短時間の出来事でも、有能なパイロットはそのあらゆる細部に
正確に対応し、それを詳細に記憶している。
4:事故がパイロットにほとんど後遺症を与えていない。←本質的に楽天的。

そしてこれらを踏まえて・・・
○技巧の優れてパイロットと武道の達人の間に
共通点があってもよいのではないか。
少なくとも両者は際立ってすぐれたセンサーを必要とする。
なぜなら両者は瞬時の判断と決断を要するからである。
・・・として、さらに勝海舟が『氷川清話』で書いた・・・
「天下のこと、すべて春風の面を払って去るごとき心境、
この度胸あって始めて天下の大局に当たることができる」
・・・をも引用している。

そしてこのような領域まで達するには非常な努力がいるだろうという
著者のインタビュー前の考えを・・・
○彼らは一生かけて仕事を楽しんでいる。
必ずしも刻苦精励努力しているわけではない。
好きで楽しんでいるからこそ、長続きし、上達する。
・・・と修正している。
例えば生き残ったパイロットでも・・・
○重要なのは練習と現実が同じでない、ということを認識することです。
しかしまず必要なのは練習です。
これを繰り返すことです(ジョーフレイ・ホールダー)
○学ぶことが好きなこと(ジャン・クーロー)
・・・と述べている。
このことをもっとも端的に表している例がある。
菱川暁夫が墜落して重体として病院に運び込まれたときに、
かけつけた奥さんにまず言った言葉は三つだけで・・・
「うろたえるな」「子供のことを頼む」、
そして「体が治ったら、また操縦してもいいか」だった。
奥さんは「いい」と答えたので何としても生き延びて
また飛ぼうと決心したそうだ。彼はいまでも空自の一線で飛んでいる。
・・・達人とはつまりはマニアだということだろう(^^)

また、面白かったのは零戦の撃墜王として有名な坂井三郎が
彼の極意である左捻り込みを実戦で使ったことが無いことを引用して・・・
○名人は極め技を使うところまでは追い込まれないのである。
・・・ともしている点は考え深いものだった。

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1999 5/9
ドキュメンタリー
まろまろヒット率4

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