らぶナベ@大阪の万博公園内にある「みんぱく(国立民族学博物館)」の
入館無料日に見学に行けてうかれているっす(^^)
さて『組織の心理学』田尾雅夫著(有斐閣ブックス)1991年初版を読みました。
政策科学研究科の講義に来ている組織論の教授の著書。
組織に関する心理学の研究について現在おこなわれている研究と諸説、
相反する意見や議論を紹介している。
この本を読み通して伝わってくるのはこの分野は研究され始めたのが
かなり新しいということもあっていろいろな定義や概念などが
まだまだ結論に至っていないということだ。
この本でもっとも面白く感じれたのは実は後書きにあたる”後記”だった。
大学の同級生とたまにあって飲むときに大学教員である著者に対して
「お前は気楽で良いよな」と愚痴られることがあるそうだ。
「俺だって・・・」と喉まで出かかることはあるが生き方の重たさの違い
というようなものを感じてしまい言葉にさせてくれないらしい。
現実はメルヘンのようでないからメルヘンを必要とする。
しかし学生時代のモラトリアム人間を続けている(と述べている)
著者にとってメルヘンの意味はわかるようで、
その奥行きまでは理解できない。
もしかしたらこの言い訳のために本書を書いたかもしれないし、
このなかに免罪の意味を込めようとしかもしれないと記述している。
→実に正直で微笑ましいと感じられた(^^)
またこの”後記”では本書の理念的柱とでもいうべき記述が多く・・・
○「組織と人間」の関係は微妙である。
・・それほど脆いカゴのなかに青い鳥など住んでいるわけがない。
本気になって探す人がいれば・・・それはそれで幸せかもしれないが、
羨ましく思わせるような幸せではない。
○いい古されたことではあるが「組織と人間」の関係は
本来ハッピーではない。むしろ、奥深くに入り込むほど、
苦い酒を飲むことも多くなるであろう。
それが現実と、したり顔でいう以前の、もっと身近な現実である。
○組織の人になれば、組織にのめりコムのではなく、
かといってソッポを向くのでもなく、
それなりに組織と擦りあわせができるような関係とは
どのような関係であるかと考えるようになる。
・・それはテクニックの問題で済ませられないところがある。
・・人の一生で何分の一かを費やすところである。
もっと深い意味がありそうである。あってほしいという気持ちもある。
→という風に学術的な記述ではないが著者の組織論に対する姿勢を
率直に述べている、このようなところに非常に好感が持てた。
さて、では本題の注目すべきと思いチェックしたところの・・・
第1章”心理学の方法”
「個と全体」
○人間性と組織は本来折り合わないものである。
・・・というアージリスの発言を引用して・・・
○組織が、現代社会のために不可欠な制度であることを認めつつ、
組織におけるこの二律背反を注視しなければならない。
「現代社会のなかの組織」
○組織は、おそらく人類の歴史とともにあったかもしれない。
・・・しかし、組織を自覚的に、つまり自然にできるものではなく、
人為的に創り出されるものであるという視点から
捉えるようになったのは古いことではない。
ウェーバーの官僚制、テイラーの科学的管理法、フェイヨルやアーウィック、
ギューリックの行政管理論などは、科学的な組織分析は、
ようやく1世紀を超えたくらいの歴史が数えられるくらいである。
「科学としての組織の心理学」
○組織における心理学が、実際的な意義をもつのは、
個人の自由意志が組織の目標と対等に出会うところであり、
それは社会全体の成熟とともにあると考えられる。
強制的な応藷によるシステム運営が当然であるとする社会にあっては、
組織の心理学が成り立つ素地はない。
→これは本当だろうか?一見そうかなと思ってしまうがどうもひっかかる。
「組織の中の合理と非合理性」
○理論やモデルだけではなく、思想そのものがまだ熟していない
ということであろうか・・・組織と人間に関する確固たる思想が望まれる。
「分析視点の刷新」
○組織と人間の出会いは、ただ1つではなく、さまざまなモデルが
成り立つことをごく自然なことと考える寛容さが望まれる。
第2章”社会化とキャリア”
「社会化とは」
○(組織の社会化について)社会化は2つの視点から捉えられる。
1つは、個人が自らの利益のために、すすんで組織人になろうとし、
組織の価値や規範を積極的に取り入れ適応する過程である。
他の1つは、組織が自らのために、個人を順化させ、教化しようとする
過程である。この2つの社会化、つまり個人が関心を向けるところと
組織の意図するそれが合致しないところもある。
「コミットメント」
○ブキャナンの定義・・・
a)同一視(identification)
B)投入(involvement)
C)忠誠(loyalty)
第3章”モチベーション”
「欲求説の比較」
○欲求説における個人差とは、人間一般の区分けであり、
それぞれのメンバーの個人的な事情に配慮した差違ではない。
第4章”組織とストレス”
「ストレス・モデル」
ストレッサとストレイン、モデレータの関係を・・・
○ モデレータ要因
↓
ストレッサ→→→ストレイン
「個人的達成感の後退」
○役割葛藤や曖昧さの多い仕事ではバーンアウトしやすい。
「コーピング」
○(ストレスに対するモデレータ要因について)状況を変えることが
できそうであると判断したとき、問題中心型のコーピング(coping)になり、
変化させられそうにないと認知すると
情動中心(emotion-focused)型になる。
第7章”プロフェッショナリズム”
「スペシャリスト」
○半ば組織人、半ば職業人の行動は組織がインテリジェントになるほど
無視できない要因にならざるを得ない。
第8章”グループ・ダイナミックス”
「会議の心理学」
○会議の機能について・・・
a)アイデアの創出
b)情報の意図とその解読をがっちさせる
c)成員性を改めて確認する
○会議運営について、経験的には知られていることも多いが、
体系的に整理されているとはいけない。今後に残された問題は多い。
「プロジェクト・チームなど一時的な集団の形成」
○その特徴について・・・
a)相互依存的関係
b)成果の先行→とりあえず成果を得なくてはいけないので、
いわば勝ちを急ぐ集団でもある。
c)基準や規範の単純さ
・・・永続を前提とする集団に比べると、
「その場」を切り抜けることを何よりも優先さえたがる傾向に陥り、
合理的な判断や行動に欠けるところもある。
第9章”対人葛藤”
「社会的技術」
○適応できないことが葛藤の要因であるならば、
葛藤関係は学習の機会である。
・・・修羅場を何度かくぐり抜けることが適応のためには
欠かせないということである。
第10章”リーダーシップ”
「リーダーシップとは」
○リーダーシップとは特定の個人の能力や資質によるのではなく、
対人的な関係のなかで発揮され、場合によっては、
集団の機能そのものである・・・バブリンによれば、
リーダーはその機能を必要とする状況の制約から外れることはできない。
ある状況のもとで有効であったリーダーも、状況が変われば、
そして、役に立たないことが明らかであると、その地位から追われる。
「パス・ゴールモデル」
○フォロワーを動機づけ、満足させるために、
リーダーは彼らに目標の達成にいたる道筋を明確にしなければならない。
通路、つまり、パスの明示化(path clarification)である。
第12章”組織風土”
「行動環境としての組織風土」
○リットビンとストリンガーの組織風土(organizational climate)
の定義として・・・
組織システムの要因とモチベーション性向の間に介在しうる
1つの媒介変数であり、一群の個人のグループと一群のモチベーションの
グループに対する状況的なモチベーション影響力の累積的な記述をあらわす。
「方法の問題」
○(組織風土という言葉の使用の問題点について)ペインらも、
満足では分析の単位は個人であり、分析の要素は仕事であり、
観測は感情であるのに対して、風土では、単位は集合ないしは組織、
要素は集団か組織、そして、観測は記述的であり、
論理的にも操作的にも明確に区別されるものであるとしている。
・・しかし、現実には・・満足との相関関係を明らかにしようとする研究が
圧倒的に多い・・概念としても、まだ成熟するのはいたっていない。
「組織文化との相違」
○風土とは、あくまでそれぞれの個人による特性の記述であり、
必要に応じて、個々の心理的風土は平均され、
その組織の特性であるとされる。
しかし、そのものに評価的な、規範的な特性はないとされている。
その点、文化には、程度の差はあるが、
メンバーの判断を方向づけ、行動を規制する働きがある。
「外部的な役割規定」
○組織風土とは・・・その是非や可否と別途に論じるべきである。
倫理的な概念ではない。
第13章”パワー関係と管理”
「パワー関係の動態」
○ザルドは、組織とは、パワーを保持するものの間で繰り返される
内部的演技(interplay)であるとして、競いあいのなかのパワー関係に
分析の焦点を合わせなければならないとしている。
「ポリティクス」
○メイエスとアレンによれば、ポリティックスとは、
組織によって是認されない目的に到達するために、
あるいは、是認されない手段を通して是認された目的に到達するために
影響力を行使することである。
「管理者とリーダー」
○肝心なことは、管理者は、対人的な影響力を重視するリーダーとは
区別されるべきである。
リーダーの働きは監督者に近似しているといえるであろう。
「管理者は何をすべきか」
○ミンツバーグによる管理者の定義、3つのカテゴリーと10の役割として
・・対人的(シンボル、連絡、監督)
情報的(モニター、普及、広報)、
意思決定的(革新、妨害除去、資源配分、ネゴシエーション)
第14章”組織デザイン”
「支持の調達」
○変化については、実際の変化とシンボリックな変化を
区別しなければならないことがある。
組織が内部の構造を変える場合、もし資源や権力の再配分が伴わなければ、
それは単にシンボリックな変化が起こったことでしかない。
このような変化はスタイルを変えただけで、
中味や重要度を実質的に変更してないからである。
「変化における成功条件」
○デルベックが挙げた変化が成功にいたるための条件・・・
a)変化の一般的な目的について、組織エリートからの委任と、
計画を実行に移すことについての同意を取り付けていること。
b)パフォーマンス・ギャップに関して文書化するなどの明示的にすること。
c)可能な解決策と、それによって得られる成果に関して、
広範で技術的に確かとされる調査を実施し、データ得ておくこと。
d)内部的に強力な支援が得られるような工夫。
e)変化の効果をみるためのパイロット・テストが行えるような
許容能力や余裕の調達。
・・・要は、一方で支持をできるだけ多く集めること、
他方で抵抗を除去するための方策を立てることが
変化をすすめるために重要である。→いちいちこんな言い方するなんて
この人たちは戦略と戦術を知らないのでは?
1999 5/5
組織論、心理学、経営学
まろまろヒット率5