新撰組副長として京都中を震撼させ、幕府瓦解後も戦い続けた土方歳三の小説。
『峠』が予想以上に当たりだったので「幕末ものを続けてもう一冊」と思い読んだ本。
この本は一般に知られている坂本龍馬像が『竜馬がゆく』から
主に来ているのと同じように土方歳三の一般像の基本になっている。
後書きでも司馬遼太郎は『竜馬がゆく』とこの『燃えよ剣』で
男の生き方の典型を描きたかったと述べているように、
この二冊を読み比べるとまた深いものを感じてしまう。
(連載時期もだいたい同じだったらしい)
単純な感想としては「男くさいなあ」だ。
土方歳三はほんとうに男くさい生き方の典型だろうと思う。
僕の知りうる限り彼を好きという人間もたいていは男くさい(笑)
思想、信条などの議論を軽蔑し、性格は寡黙で無愛想。
自らの腕だけを信じ、剣の腕と戦術指揮においては
右に出る者がいない天性の喧嘩の達人。
戦いによる「男の生き方」を常に追い求め、榎本武揚らと共に
蝦夷共和国設立時の中心メンバーとなりながらも政治には
まったく興味を示さず、ただ戦うことだけに生き甲斐を見いだし
絶望的な状況下でも平然と戦い続ける。
蝦夷共和国首脳陣に降伏の意志があることを見て取るや、
死に場所を求めて一人で新政府軍の防御陣に突撃、
一時は防衛ラインをずたずたにするほどの戦果ををあげるが
ミエニー銃による一斉射撃を受けて死亡。
印象に残っているのは最後に突撃をするときに新政府軍の幕僚から
所属を聞かれたときに蝦夷共和国陸軍奉行(最後の役職)ではなく、すでに
崩壊して形も無くなっている「新撰組副長 土方歳三」と答えたことだ。
(結局これが遺言となる)
・・・こいつもむちゃな生き方や(^^;
でもなにかそこに「感動」があると思える。
そんな僕も男だからか?
1997 12/19
歴史、小説
まろまろヒット率5
“司馬遼太郎 『燃えよ剣』 新潮社 上下巻 1972” への0件の返信