今晩から来年までスキーに行くのでこれが今年最後に読んだ本になる。
読書録を振り返って見てみると今年は一冊きっちりと読んだ本が52冊だった。
吉本プロジェクトや就職活動などで忙しかった去年よりもずっと読めたので
来年はきっと良いことがあるだろうと思いこんでいる、
らぶナベ@さぁ読書も終わったので、いざ妄想銀行白馬支店設立へ!?
(ゲレンデ妄想ファンドを創ってやろう(^^))
さて、本題の『伊藤真の商法入門』伊藤真著(日本評論社)1997年初版をば。
「どんなに馴染みが無くても3冊読めば理解は飛躍的にアップする」という
僕の勝手な読書理論の方針に添って読み終えた商法関連3冊目の本。
この本の前に民法と民事訴訟法はすでに3冊読み終えていたので
商法の入門は何の問題もなく読み通せた。
民法を基本にして取引の活性化と流通を重視するために
保護の色合いを薄めたのが商法だからだ。
そういう意味でおそらく六法の中ではもっとも危険な法律なんだろう。
法学部の人が見たら怒る表現だろうけどどちらかを重視したら
どっちかが軽視されるのが現実なんだから仕方ない(^^;)
読み終わって一番感じたことは結局は法律なんてものは
どんなに公平、厳格を建前にして強調したとしても
「どっちを優先させるのか?」に落ちつくという点だ。
原則と修正という柔軟性はあってもしょせんはルールでしかない。
最後は限りなく二者択一的な戦略的勝敗に集約される。
そういう視点で見ればどんなにややこしかったり
むつかしそうに見える法学理論や判例も楽に理解できる。
現実社会の物事を実際に扱うんだから対立する利害を
完璧に問題なく公平に裁くなんてこと自体が最初から無理。
もちろんそうなって当たり前なんだがこのことを理解せずに
奇麗な語句で飾られた建前論を頭から信じ込んで法学に接すると
かなりやばい事になるんだろうなっとあらためて感じた。
それは僕が法学のずっと前に政治学と歴史学に接していたから
そう感じるんだろうけど。(混じりっけ無しの理想家こそ実践で弊害を生む)
以下、チェックした箇所・・・
☆「合理化」(アクセル)と「適性化」(ブレーキ)の調和が
商法のテーマ→対立ベクトルの調整が法律全体のテーマ
☆倒産という言葉は法律上存在しない。
→倒産と破産とはまったく別の概念!
☆「ヤオハン・ジャパン」倒産の直接原因・・・
大量に発行した「転換社債」が不況のために株式に転換されずに
社債として償還されてしまい決定的な資本割れをおこしたため。
→株式には払込金の返還義務はないが社債は債務なので返還義務がある
☆資本制度の大原則・・・
「資本充実の原則」、「資本維持の原則」、「資本不変の原則」
☆手形における法律関係には手形関係(手形法)と原因関係(民法)の
「二本立ての法律関係」がある。
☆民法と商法との違い・・・
<法的利率>
民法→5%、商法→6%
<債権時効>
民法→10年、商法→5年(手形法→3年)
<支払免責>
民法→善意無過失、商法→善意無重過失
☆民法第93条から96条までの意思表示瑕疵に関する規定が
手形行為に適用されるかどうかの争いがある。
→取引の安全を図るために民法の原則を修正する
○商法ではまずどんな利益が対立しているかを理解することが最も重要。
→条文の趣旨を読みとること!
○範囲が広い商法の中で特に重点的なポイント・・・
<会社法>
株式会社→「資本制度」、「設立」、「株式」、「機関」
<有価証券法>
約束手形→「有価証券理論」、「振出」、「裏書」、「支払」
<商法総則・商行為>
商法総則→「商人」、「商号」、「商業使用人」、「商業登記」
○「資本金」とその会社が実際に持っている「財産」とは基本的に無関係。
○株式会社の出資者(社員)は「間接有限責任」しか負わないので
その会社の債権者を保護するために会社財産の確保が必要→「資本制度」
○「資本」は枠組み、「財産」は中身。
○純粋持ち株会社は独占禁止法改正で解禁された。
○商法上株式の払い戻しのことを「退社」と呼ぶ。
→「資本維持の原則」からこれは認められない。
○「株式譲渡自由の原則」の存在理由・・・
・会社にとって株主の個性は問題にはならないという「許容性」
・投資家にとって投下資本回収の唯一の方法だという「必要性」
○取締役は商法上の「忠実義務」の他に民法上の「善管注意義務」を負う。
→これは株主共同訴訟などで重要になる点
○取締役は「競合避止義務」、「利益相反取引規制」、「報酬決定の制限」
を受ける。(前の二つは取締役会の承認あれば可)
○会社の役職を現す社長、専務、常務などの言葉は商法上には無い。
法律上での役職は「取締役」、「代表取締役」、「監査役」しかない。
→日常用語とはまったく別の概念
○商法第254条2項が所有と経営の分離を表している。
○「変態設立事項」とは会社設立に関して定款に定めないと
効力が認められない「相対的記載事項」の一部。
→「現物出資」、「財産引受」、「設立費用」など
○商法で言う「信用の授受」とはお金の貸借りのこと。
○手形は信用授受の手段、小切手は単なる支払の手段。
→手形は振出した本人が支払う、小切手は支払を委託するだけ
○手形の裏書人の人数が増えれば増えるほど保証人=人的担保が増えるので
手形が流通していく上で支払がより確実になっいき理論上は
「流通促進の法技術」となる→ただし実務では「回り手形」として警戒される
○手形の債務がどの時点で発生するのかという「手形理論」では
「交付契約理論」と「創造理論」が対立している。
→手形事件の時には大きな焦点に、ただしどちらも「善意無重過失」で
取得した手形所持人は保護されるという結論は同じ
○手形関係と原因関係との文言・・・
・原因関係と併存するつもりで手形を振出せば「支払のために」
・そのうちどちらを先に行使してもいいならば「担保のために」
・原因関係上の権利を消滅させて振出すならば「支払に代えて」
○裏書きの効力・・・
・「権利移転的効力」
・「担保的効力」
・「資格授与的効力」
○「権利外観理論」とは善意の手形取得人を保護すべきとした
条文には書かれていない学説上の理論。
○振出人が支払を拒む事由には・・・
「物的抗弁」→すべての人に主張できる
「人的抗弁」→特定の人にだけ主張できる
・・・の二つある。
○手形取得人を保護する制度は「人的抗弁の制限」と「善意所得」の二つ。
1999 12/27
法学、商法
まろまろヒット率3