マルクス・アウレリウス・アントニヌス、神谷美恵子訳 『自省録』 岩波書店 1956

ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌス(相変わらず長い名前!)
が自らの行為、感情について自省するために記述したと思われる本。
元々人に見せるためのものではなく、自らの反省と励ましに
記述したものなので「どうしてそういう考えにいたったのか?」という
個々の前後関係や背景が全く書かれてない。
また、欠落している箇所や読み方不明の箇所も多い。
そのためにこの本は一見、単なる教条主義的説教本に見えてしまう。
これは僕がやりたい参加観察としての視点から見れば決定的な欠陥になるが、
彼自身が内的人格と向き合うために使った言葉や表現は
その背景が不明確でも何か心打つものがある。
この本の中で「君」と呼びかけている箇所は実は自分自身に投げかけている
言葉だということ、強大な権限と責任を常に意識しながらも自らの力量の限界
と理性の破綻を必死で止めようとした葛藤は十分に伝わってくる。

たとえ一冊の本として完全ではなくても、卒論で参加観察を書く僕にとっては
パックス・ロマーナを築き上げた五賢帝最後のローマ皇帝として
執務に奔走しながらストア派哲学者としての視点から自らの行動を見直し
記述したこの本は非常に興味深いものだ。このような彼の姿勢は学ぶ点が多いと思う。
ちなみにほとんど意味も分からない点も多いこの本の中で
僕の心をどこかしらとらえてしまった記述を・・・
「遠からず君はあらゆるものを忘れ、遠からずあらゆるものは
君を忘れてしまうであろう。」
「行動においては杜撰になるな。会話においては混乱するな。
思想においては迷うな・・・人生におていは余裕を失うな。」
ところでこうやって誰にも見せないように影でこそこそ文字を
書きながら自分を励ましたり反省したりと
・・・彼ってけっこう性格暗いんとちゃうん?(笑)

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1998 2/5
エッセイ、哲学
まろまろヒット率4

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