藤田達生 『蒲生氏郷: おもひきや人の行方ぞ定めなき』 ミネルヴァ書房 2012

渡邊義弘@松阪市情報政策担当官としての任期も残り約3ヶ月となりました。

さて、『蒲生氏郷: おもひきや人の行方ぞ定めなき』藤田達生著(ミネルヴァ書房)2012。

安土桃山時代に近江日野(現・滋賀県日野町)に生まれて、織田信長、豊臣秀吉の下で活躍して、伊勢松坂城(現・三重県松阪市)、会津若松城(現・福島県会津若松市)を築城。
城下町作りを行なって、それぞれの町の基礎を作った戦国大名、蒲生氏郷の伝記。

蒲生氏郷は江戸時代に家が断絶していることもあって、史料に基づいた伝記が少ない。
この本は、歴史学のアプローチから蒲生氏郷の実像に迫る貴重な一冊。

特に蒲生氏郷を中心にした蒲生一族を通して中世から近世への転換期像を明らかにすることをテーマにしていて、
個々人の武勇に頼る戦いからシステム化された軍政への変遷、さらには戦闘集団から統治集団へと変換する武士団の姿が詳細に描かれている。

中でも印象に残ったのは、この本の副題にも使われている蒲生氏郷が故郷の近江日野の方向を眺めて歌ったとされる・・・

おもひきや人の行方ぞ定めなき
我ふる郷をよそにみむとは

・・・という歌への解説だ。
本領を”一所懸命”に守る中世の武士から、転封を受け入れる近世の武士への転換期にあって、出世と共に故郷を失うことの感慨を歌ったものだとする著者の指摘は胸に残った。

ちなみに、この本を読み終えたことで、「松阪の三傑」と呼ばれることがある、蒲生氏郷、三井高利本居宣長の三人の伝記を読み終えたことになる。
一つの区切りを感じた読書でもある。

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2012 12/21
伝記
まろまろヒット率3

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