関谷直也 『風評被害 そのメカニズムを考える』 光文社 2011

渡邊義弘「がんばっぺし!石巻復興応援ブース」を七夕まつり・鈴の音市に出展しました☆
(2012年8月5日 『読売新聞』朝刊・第12面 「養殖業者の復興支援 松阪の商店街 石巻の海藻、祭りで販売」)

さて、『風評被害 そのメカニズムを考える』関谷直也著(光文社)2011。

1954年の第五福龍丸被爆事件から2011年の東日本大震災までの戦後日本の風評被害の経緯をたどりながら、風評被害の実態に迫ろうとする一冊。
風評被害は比較的新しい言葉で、まだしっかりとした定義がなされていない。
そこで著者は・・・

☆風評被害の定義=ある社会問題(事件・事故・環境汚染・災害・不況)が報道されることによって、
本来「安全」とされるもの(食品・商品・土地・企業)を人々が危険視し、消費、観光、取引をやめることなどによって引き起こされる経済被害
<第1章 風評被害とは何か>

・・・と定義し、事例を通して・・・

☆風評被害=情報過多社会、安全社会、高度流通社会における災害や原子力事故などがもたらす経済被害の一形態
→これを避けることは根本的に困難であるという前提で対策を進める必要がある
<終章 風評被害にどう立ち向かうか>

・・・と結論づけている。
その上で・・・

☆許容量=害か無害か、危険か安全かの境界として科学的に決定される量ではなくて、
人間の生活の観点から、危険を「どこまでがまんしてもそのプラスを考えるか」という社会的概念
<終章 風評被害にどう立ち向かうか>

・・・と、許容量を科学的概念から社会的概念へ位置づけている。

ただ、事例の紹介の多くの紙面を割いているということもあり、著者自身もあとがきで述べているように、
副題の「メカニズムを考える」ところまで踏み込めているかについてはやや疑問がある。
現代社会では不可避のテーマという点では同意できるので、次作も期待したい。

以下はその他でチェックした箇所(一部要約含む)・・・

○風評被害という概念、およびその事象が、歴史的に原子力ときわめて深い関係にあった
<第2章 「放射能パニック」と風評被害>

○(マスメディアは)科学的な安全性を伝えることよりも、「不安」の方がニュースバリューを持つ
→結果「不安」に満ちた主観的な意見や感情が広く共有されていく
<第5章 安全と風評被害>

○風評被害に加担しない一番の近道=普段通りの生活を送ることで経済を回していくこと
<第9章 東日本大震災における「風評被害」と「うわさ」>

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2012 8/7
風評被害、情報・メディア、社会学、社会心理学、心理学、経済学
まろまろヒット率3

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