黒岩重吾 『中大兄皇子伝』 講談社文庫 上下巻 2004

「浅田真央を浅田真央をトリノへ出してあげたいまとめサイト」に新しい社会運動の姿をかいま見た、
らぶナベ@とりあえず安藤美姫の目はこわいです(^^;

さて、『中大兄皇子伝』黒岩重吾著(講談社文庫)上下巻2004。

社会常識にこだわらずに既得権益と戦い、専制君主的なリーダーシップで改革を断行する、
そんな日本人らしくない歴史人物として織田信長はよく取り上げられるし、彼を主役にした小説やドラマは多い。
でも同じく革命的な人物なのに中大兄皇子(天智天皇)を主役にした物語は少ないと思っていたら、
たまたま見つけたので手に取ってみた歴史小説。

読んでみると上巻のほとんどをかけて、大化の改新にいたる経緯をえがいている。
中大兄皇子が蘇我入鹿を暗殺するのは、正確には大化の改新じゃなくてそのきっかけの乙巳の変だけど、
その過程には国際情勢の変化、中臣鎌子(藤原鎌足)の暗躍などが絡まってきていて
この時代ってやっぱり面白いんだなぁっと再確認することになった。

ちなみに中大兄皇子の女性関係をめぐっては弟から奪った額田王と、実妹の間人皇女が有名だけど、
この小説では間人皇女との関係の方をかなり詳細に書かれてあった。
確かに同父母の妹と関係を持ったことについては中大兄皇子を象徴する事例としてよく挙げられる。
たとえば僕が中学の時に読んだ中大兄皇子の娘、持統天皇を主役にした『天上の虹』(里中満智子)では、
彼が実の妹と肉体関係を持った理由を「自分しか愛せないから」としていた。
この小説では「禁忌をやぶることの快楽にとりつかれたから」と解釈していたのが興味深かった。
二十歳の時に当時は強大な権力を持っていた蘇我入鹿を自分の手で暗殺した時の衝撃が忘れられず、
禁忌をやぶることの欲求にとりつかれてしまったという視点にはちょっと説得力があった。

また、この小説では一人称「吾」で語られるスタイルなので中大兄皇子の視点を想像しながら進行している。
だから新羅の金春秋(武烈王)に対してはある種の尊敬の念を持っていたことや、
厩戸皇子(聖徳太子)は仏教に逃げたとしている評価がちょっとおもしろかった。

この本をamazonで見ちゃう

2005 12/19
歴史小説
まろまろヒット率3

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です