まろじぇくとX「ONとOFFをつなぐ旗」

エェーックス!

(田口トモロヲ風のナレーションで)
インターネット、それは新たなコミュニケーションメディアだった。
21世紀はじめ、オンライン上ではさまざまな話題が話され、
活気あふれるその風景は現実のコミュニティと見紛うばかりだった。

しかし、オンラインとオフラインには未だ大きな隔たりがあった。
オンラインで気軽に知り合えたとしても、
オフラインで気軽に会うということにはならなかった。
その大きな原因のひとつが「実際に会ったことがない」ということから来る、
会うまでの事前調整の煩雑さと心理的な躊躇だった。
お互いを認識できないために、オフ会を開催する際にも出欠確認を事前に取り、
待ち合わせ時刻、場所も厳密に決めておかなくてはいけなかった。
その上さらにその場で相手を探すのには時間的、心理的エネルギーが必要とされた。

そんな中、「これでは気軽に集まれない。
オンラインとオフラインはいつまでたっても交わらないじゃないか」、
そうつぶやくひとりのホームページ運営者がいた。
ホームページ開設一年にして、自身が運営するホームページを元手に
大学院に合格した男だった。
WEBサイト運営をキャリアにしたその男は、
誰よりもオフラインとオンラインとの間の距離を敏感に感じていた。
「オンラインとオフラインを無理に混合することはない。
でもオフラインとオンラインとの行き来がもっと気軽にできていいはずだ」
その声はむなしくオンラインとオフラインとの間に横たわる、
深く大きな谷に消えていくかに思えた。

そんなとき、いつも読む歴史小説を紐解いて気づいたことがった。
「かつては広い戦場でも集合しやすくするために旗印を利用していた」。
「そうだ、まろまろ旗印を作ろう!」
こうして、メンバーの事前確認もお店の事前予約も必要としない、
ただ旗印を目標に集合するという機動的オフ会運用が発案された。

これはオンラインとオフラインとの距離に挑戦した、
小さくも壮大な実験の記録である。
(西中島みふきが歌う『妄想の星』が流れる)

・・・っということでこのプロジェクトに参加しませんか?

集合日時:12月24日(あえてイヴ!)、7時半~8時までの30分間

集合場所:新宿東口アルタ前か向かいの広場
     24日間に合うように製作を依頼している、
     白地に黒文字の「まろまろ」フラッグを持っています。

持ち物:本のプレゼント交換をするので本を持ってきてください。
    本の置き場所に困っている人も多いので新品ではなく
    家にあるいらなくなった本を交換し合いましょう。
    (経済学でいう”パレート最適”プレイ)

お店をどこにするかは集まった人数とメンバーの趣味によって決めます。
(お友達を連れてきてもらってもOKです)
事前確認は要りませんがあえてイヴの日に実行するので、
仕事の関係などでこの時間に集合場所に来れないという人は、
事前に僕の方まで連絡ください。
事前に渋谷などの方が良いという人がいたら機動的に場所も変更します。
平日かつイヴということで人が思いっきり少ないかもしれないですが、
実験的要素が強いのでそのときはそのときでまろまろしましょう。

また、大阪生まれ大阪育ちネイティヴ・ナニワニアンな僕には
未だに東京の地理やお店が詳しくありませんので、
お店情報も教えいただけるとうれしいです。

エーックス!
雨は、降らなかった。
三日前の予報では降水確率60%、前日では50%だったにも関わらず、
東京に雨は降らなかった。
新宿に向かう地下鉄の構内で、車内で、すれ違う人々のすべてが、
らぶナベが掲げるまろまろフラッグに注目していた。
「商品の宣伝でもないし、サークルやクラブでもなさそう・・・」、
「名詞なのか、形容詞なのか・・・」。
ただ”まろまろ”と書かれた旗にはそう不思議に思う視線が注がれていた。
小さな子供が「まろまろー!」っと指差して声を出すこともあった。
「あえて正式名称じゃなく”まろまろ”だけでよかった」、
「宣伝効果としての面ならこの旗は成功だな」、
待ち合わせ会場への道すがら、らぶナベは自分のメディア戦略に得意気になっていた。
意気揚々と向かった新宿。
しかし、そこは薄っぺらな慢心を打ち砕く、寒く、厳しい戦場だった・・・

エーックス!
らぶナベは、一人でたたずんでいた。
新宿アルタ前、三段式ポールで2.7mに達するまろまろフラッグは
風に大きくなびきながらその威容を誇っていた。
しかし、人は、誰も来なかった。
地盤のない東京で、連休明けの平日、年末最終週の第一日、
そしてクリスマス・イヴ・・・この悪条件の中で
あえて事前確認を放棄する実験OFF会。
開催前に寄せられた参加できないことを残念がるメール、
条件の悪さを心配して止める友人たち。
そんな中で「状況が悪いほど気軽さの実験になるじゃないか」、
「どうせ実験するなら状況を作り出すことに挑戦したいし、
俺は一人でもOFF会をする」っと、意気込んで強行したOFF会。
不思議そうに目の前を通り過ぎていくカップルたちを見ながら、
後悔が頭をよぎり始めた。
宣伝になってもオンラインとオフラインとの間を取り持てなければ意味がない。
やはりオンラインとオフラインとの間の溝は深いのか、
その間に架け橋をかけるのにはもっと条件も準備も必要なのか・・・
「きっと誰も来な~い、一人きりのクリスマス・OFF♪」、
気がつけば山下達郎の『クリスマス・イヴ』の替え歌を口ずさんでいた。

そんなとき。
「ちょーカッコいいー!」、という声が耳に入った。
その方向を見ると一人の女性がこちらに歩いてきていた。
「ホントに一人でもやるんですね」、「nice!」
明るくハツラツとした雰囲気と口調に、時おり出てくる英単語の明瞭な発音。
それは彼女が海外生活が長いだろうことを、容易に想像できるものだった。
追い討ちをかけるように衝撃の一言が発せられた。
「Calforniaから来ました~」
「カリフォルニア(発音が日本語)から!?」
その女性はアメリカの大学院からまろまろ掲示板に遊びに来たことのある、
Shihoさんだった。(発言はここここなど)
たまたま数日前に帰国していて、家族でのXmasパーティを抜け出して来たという。
参加者一人だけということに申し訳なさを感じたものの、
彼女もそのつもりだと主張したので、二人だけでOFF会を開催。
(二人だけというところが実にまろまろ)
まろまろフラッグを喫茶店のテーブルにたてかけ、
本の話、英語の話、日本と米国との違いの話、
HPの見やすさについての話、さまざまな会話が繰り広げられた。

オフラインだけでは、滅多に出会えない、遠い人との出会い。
オンラインだけでは、なかなかは感じ取れない、
雰囲気からの感覚的なコミュニケーション。
それはまさにオンラインとオフラインとの有機的連動だった。
たった二人だけのOFF会、それはかけがえのない一歩になった。

帰りの電車の中で、らぶナベの手には本の交換会の時にそえられていた、
クリスマスカードとアメリカのキャンディが握られていた。

思いはとどく
たとえ海を越えてでも
(西中島みふきの曲がながれる)

・・・っというわけで今年も”まろじぇくとX”は無事終了しました。
いやー、痛いものコレクター的に一人だけのOFF会でもいいと思っていたんすけど、
参加者がいてくれて本当にうれしかった。
それも普段は絶対に知り合えないような人ですから余計でした(^o^)
ちなみに参加者からの感想はこちら

今朝になってから参加するつもりだったけど急用や
タイミング的に行けなかったという人たちからメールが寄せられました
事前確認とってないからゼロかもしれないし多数かもしれないんすよね。
でもしばらくはこのスタイルでやっていこうと思います。
オンラインでのキレと、オフラインでのコク、
この二つを機動的に行き来する実験はまだ続けます。
もし街のどこかでまろまろフラッグを持って歩いている僕を見つけたら、
気軽に声をかけてくださいな(^_^)

2002 12/24
出来事メモ、はしり書き、まろじぇくとX

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