内田義彦 『読書と社会科学』 岩波書店 1985

らぶナベ@「そこそこ」の本だけどこの時期に読むにはとても良い本をば(^^)

『読書と社会科学』内田義彦著(岩波新書)を読み終えました。
立命の古本市でタイトルがなかなか興味深かったのでシャレ半分で購入した本。
社会科学というテーマの元での読書や読書会というものへの
著者自身の考えを公演風に述べられている。
話し言葉で書かれているので読みやすいが、
逆にちょっとしたことを述べるのにも長々しい言い回しをしていたり、
くどかったりする感じを受けることもけっこう多かったように思える本。
しかしフォーラム論、ゼミ論、卒論など論文を書かなくてはいけない
この時期にはどう読書を社会科学の研究につなげていくのかという
テーマを持ったこの本の読書はとても知的好奇心を刺激されるものだった。
(チェックしまくりぃ)

この本で彼がもっとも言いたかったことは・・・
・「本をではなくて、本で『モノ』を読む」と、
・「本を読むことは大事ですが、自分を捨ててよりかかるべき
結論を求めて本を読んじゃいけない。
本を読むことで、認識の手段としての概念装置を獲得する。」
・・・と著者自身が述べているところに凝縮されているんだろう。
また、本流とはあんまり関係ないことだけど意外だったのは
経済学者のケネーはもともと外科医だったということ。
彼は60歳を過ぎてから経済研究をおこなったが
それまでの外科医としての概念装置が経済研究に活かされていたというのが
興味深い。明治維新の倒幕軍総司令官であり日本陸軍の基礎を造った
大村益次郎も内科医であるということを思い出した。
(ここらへんは司馬遼太郎著『花神』新潮文庫に詳しい)

以下、興味をおぼえた箇所の摘出・・・
・「本は読むべし読まれるべからず」

・「(読書)会運営の要は、他人の言をいかに聴くかにあり、
そして、その聴き上手には、本を大事に読むという仕事ー大事に取り扱って
『聴き取る』風習と技術ですねーを深めてゆくことにとってなれる、
もともと本とはほんらいそう読むべきもの」

・「5より4は小さいみたいな、誰が見ても同じ判断をひき出せる
ー判断力を要しないで判断できるーものだけが、
学問的に正確で頼りになるという考え方自体、
理性のあり方として問題とすべき」

・「正確な理解というと個性的な理解を排除し、何か根拠をもって
判断しなきゃならないというと、『主観性』をさけて、
4よりも5が大きいというような、誰がみても同じ判断が可能というか、
そもそも判断力の行使の必要のないところへもっていって
『判定』する風習がある」

・「概念装置という、ものを見るための装置を脳髄のなかに組み立てるために
読む仕事が含まれており、とくに社会科学の場合には、
これ(概念装置)を獲得するための読書が特徴的に大きくなっていて、
問題を複雑にしています。」

・「私は、少なくとも社会科学の領域では、
化学と思想は切り離せないと考えておりますので、文学上の古典にも通じ、
そこで特徴的に現れるような問題を含めての『古典として』の読みの習熟を、
概念装置の獲得のためにも不可欠と考えております。」

・「信じて疑え」

・「まともにぶつかってゆくことに危惧を感じる。
曖昧模糊としたままに置くことによって保たれねばならないような
『信頼』関係。それは信頼関係とはいえますまい。」

・「理路整然と他人に理解可能なかたちでの感想文を、みだりに、
早急に書くことは特別に要注意です。早急な理路整然化の危険と、
他人の同意を安直に求める危険の二つを含んでいますから。」

・「書け、而して書くな」

・「本当の批判力とは、俗眼には見えない宝をー未だ宝と見られていない
宝を、宝としてー発見する能力です。ポジティブにものを見る眼ですね。」

・「経験は最良の学校である。しかしその授業料はきわめて高い。」

・「要するに学問の研究(勉強)とは、何かでき上がった学問を
研究するのではなくて、学問によってこの眼の働きー一般に五感の
ー不十分さ、至らなさのほどを自覚し反省して、
その(この眼の)機能を高めながら、対象であるもの、
あるいは事象を研究する。それが学問のあり方、方法でもあり、
効用でもあります。」

・「社会科学の勉強では、そういうものとしての概念装置を脳中に
組み立てることがかなめになります。歴史的にみても、
人文学の流れのなかから経験科学としての社会諸科学が生まれ
さまざまに発展してきたのも、先学が、
ものを有効にみとどけるために苦労して概念装置をつくり上げる
努力をかさねたその営為の結果です。」

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1998 12/15
エッセイ、読書法、学問一般
まろまろヒット率4

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