王欣太・李学仁 『蒼天航路』 講談社 全36巻 2006

約10年間読み続けていた本が完結してちょっと感無量な、らぶナベです(T_T)

さて、その『蒼天航路』王欣太作(KING☆GONTA)、李學仁(イ・ハギン)原案(講談社)全36巻2006。

『週間モーニング』で1994年から2005年の11年間連載された全409話の三国志。
これまでの三国志物語では悪役を担うことが多かった曹操を主役にして、
独自の視点と演出で再構築したまさに「ネオ三国志」という表現がぴったりな新釈三国志。

たとえば一般的な羅貫中『三国志演義』、それをもとにした吉川英治『三国志』や横山光輝『三国志』では、
主役の劉備は儒教的な理想を反映した聖人君主的にえがかれることが多いけど、
この『蒼天航路』では、中身が無くて雰囲気だけで勝負する人物になっている。

この劉備の評価は正史に近いけど、だからといって別に劉備が貶められているわけでなく、
逆に『三国志演義』での聖人君主ぶった劉備が安っぽく見えるほど、
侠とハッタリで生きる『蒼天航路』の劉備はとても魅力的に表現されている。
(他の登場人物たちも演義より正史にもとづいて演出されることが多い)

そんな魅力的な登場人物たちも、引きこもり気味だった曹操が30歳の時に黄巾の乱をきっかけに初陣する第39話あたりから、続出してきて物語は盛り上がっていく。
曹操自体の見せ場も、第157話で「おまえたちには心の闇がない」と言い放つシーン、第184話で炎の向こうから手招くシーン、
第276話で「くどい」と片づけるシーンなどなど、まさに心がふるえるようなシーンが目白押し。

もちろん、漫画的なデフォルメをしすぎているとか、曹操を完璧にえがきすぎるなどいろいろな批判はあるけど、
これほど魅力的な人物たちを活き活きと踊らせる物語もめずらしい。
(それだけに生々しくてキャラが濃いので万人向けじゃないかもしれない(^^;)

ちなみに僕はこの本を1996年ごろから読始めたが、自分の20代は連載中だったこの物語にかなりの影響を受けてきた。
転機がある度に読み返したし、何かと引用することも多かった。
この10年は機会があるごとに『週間モーニング』の連載を確認したり、新巻が出るのを楽しみにしていた。
そんな『蒼天航路』の最終巻が出て物語が完結したと知り、一つの区切りを感じて御茶ノ水の漫画喫茶に入って未読分を読み切った。
読み終えた今も、この本はこれからも読み返す心のベスト本の一つになるだろうと感じた。

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2006 5/8
マンガ本、歴史
まろまろヒット率5

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