民話や都市伝説の裏読みをするのが好きな、らぶナベ@妄想銀行社会部です。
さて、『流言の社会学―形式社会学からの接近』早川洋行著(青弓社ライブラリー)2002年初版。
各分野で研究されてきた流言を横断的に検証して、そのメカニズムの解明を試みる本。
流言や噂は情報化社会で重要になるキーワードだと感じることが多く、
前々からまとまったものを読んでみたいと思っていたので手に取った一冊。
読んでみると先行研究の参照も丁寧で手堅い概要書と言った感じだけど、
所々に著者の見解やキャラが垣間見れて楽しかったりもする。
構成の面でも各章の最後にまとめを入れる点や、この本の「種明かし」として
自分の方法論(主にジンメル社会学)を述べている点なども読みやすさを助けてくれた。
内容でも構成でも良書といえる一冊。
以下はチェックした箇所(一部要約)・・・
○流言は人びとの生活世界の範囲を顕在化させる指標
☆流言の定義=コミュニケーションの連鎖のなかで短期間に発生した、ほぼ同一内容の言説
→噂との違いはその波及規模(噂の氾濫が流言)
☆解決流言=当為命題含む、解釈流言=当為命題含まず
・自我包絡性&信用性&顕在性&真偽の確認可能性→解決流言>解釈流言
・発生しやすさ→解決流言<解釈流言
○流言=情報の流れにかかわる、流行=影響の流れにかかわる
○信言&違言&偽言=科学知、戯言=物語知
→流通の点で違言は流言になりにくい
☆流言の聞き手は「状況の真理性」(伝達内容)、「態度の誠実性」(発話者)、
「権威の正当性」(発話者&内容上の発話者)から真実を検証
☆流言の流通理由=「ニュース性」、「検証」、「同意欲求」、
「自己解放」、「娯楽性」、「関係維持」、「作為」
→虚言は娯楽性&作為、正言or虚言は検証&自己解放&関係維持から生まれる
☆不安=対自的、飽き=即自的
→主体に緊張を強いるという点では同じ=流言の発生原因となる
☆「カタルシス原理」=民衆がみずから対自的に虚構の苦難を作り出すことでおこなう感情の浄化
→流言とは観客が同時に演者になることで感情浄化を果たす現象
☆流言の発生が、田舎<都市、大人<10代、に広まりやす理由
=「不安と飽きの心理」、「権威の弱体化」、「客観的世界の拡大」
→流言はさまよう心にとりつく
○他者否定型の解釈流言は話手と聞手の間でイン・グループを確認し相互の紐帯を強める
○情報化社会の流言は、収斂的に終息するより拡散的に終息する
2005 2/21
流言・うわさ研究、情報・メディア、社会学
まろまろヒット率4