竹内郁郎・児島和人・橋元良明 『メディア・コミュニケーション論』 北樹出版 2000(第3版)

TBS系列で再放送していた『愛なんていらねえよ、夏』にちょっと感動した、らぶナベです。

さて、『メディア・コミュニケーション論』竹内郁郎・児島和人・橋元良明編著
(北樹出版)2000年第3版。
コミュニケーション論の本を探していたらメディア論との関連で構成されている
この本を見つけたので読んでみることになった。

一章ごとに執筆者が違っていて全部で序章+15章とけっこうな分量だったけど、
内容は「薄いやん」っと思うような章もところどころあった。
おかげでメモを残した章がかなり偏っている(^^;
第7章の「マス・コミュニケーションと社会をめぐる理論の成果と展開」が
この本の一応の中心にはなるんだろう。

また、この本で扱うメディアは新聞、ラジオ、テレビなどの
既存のマスメディアが中心になっていて、ネットや携帯電話などの
新しいメディアへの記述が少なくてちょっと残念だった。

ただ、各章末にそれぞれ3冊ずつ、そのテーマに関係する参考図書を
執筆者のコメントつきで紹介してくれているのはテキストとして役立った。

以下はチェックした箇所(一部要約)・・・

☆メディア・コミュニケーション研究の対象=人間・メディア・社会の相関の磁場、
入れ子状の関係のもとでの社会的相互作用としてのコミュニケーション
<序章 メディア・コミュニケーション論の生成>

○メディア変容で注目する点→
1:メディアにおける身体の根源性と基本性
2:新たな個別メディアの登場とメディア総体の自己変容
3:道具・機械メディアの独自の系
<序章 メディア・コミュニケーション論の生成>

○第一次集団(家族や企業組織など)ほど個別間の結合が強固ではなく、
大衆ほどには離散的でもない中間的結合体系=「集合体」(collectivity)
<序章 メディア・コミュニケーション論の生成>

☆メディアはそのメディア内容を離れてメディアそれ自体の独自の次元でも
リアリティ形成の力を一定の社会的文脈の中で発揮する
→メディア独自のリアリティ形成力=「メディウム性」
<序章 メディア・コミュニケーション論の生成>

○社会的格差の中にあるリテラシーを動員した実践が、
コミュニケーションという相互作用によって他者と共有するリアリティを
構成することを通じて、新たな自己、新たな他者との関係形成の一歩を築く
<序章 メディア・コミュニケーション論の生成>

○群集の特徴(Tarde,J.G.)=情動や集団的感情の模倣を通じての集団的一体感(コミュニオン)
<第1章 メディアとしての身体からグーテンベルクへ>

○文字の特性(Platon)=
1:書かれたものは客観的なモノと化して人工物となる、
2:書くことは記憶能力を衰退させる、
3:書かれたものは読み手に応答することはなく自らを弁護することもない
<第1章 メディアとしての身体からグーテンベルクへ>

○従来のメディアと電子メディアの相違点=
1:遠隔地間の情報伝達を瞬時に行える
2:同時に広範囲の人々に対する情報伝達ができる
3:電気信号によって多様な情報を蓄積、伝達することが可能
<第3章 メディアの今日的生成と諸形態>

○通信機器の普及の特徴=相手も同じ機器を持つ必要があるので
普及が十分ではない時期にはなかなか広まらないが、
普及がある一定数(クリティカル・マス)を超えると
逆にその機器を持っていないことに対して社会的圧力がかかる(吉井,1997)
<第6章 パーソナル・メディアとコミュニケーション行動>

☆ある年齢層の行動・意識を調査・分析する際の注意点=
1:「年齢層効果」(特定の年齢層であることの影響)、
2:「時代効果」(調査した時代の影響)、
3:「コーホート効果」(同時代に生まれた集団=コーホートが持つ特性の影響)
<第6章 パーソナル・メディアとコミュニケーション行動>

○メディアの公共性の基準(McQuail,1994)
=自由、平等、多様性、情報の質(客観性、均衡など)、社会的秩序と連携、分化的秩序
<第7章 マス・コミュニケーションと社会をめぐる理論の成果と展開>

○マス・コミュニケーションの社会的機能(ラザーフェルド&マートン,1960)
=1:地位付与の機能、2:社会規範の強化、麻薬的逆機能(潜在的機能)
<第7章 マス・コミュニケーションと社会をめぐる理論の成果と展開>

☆マス・コミュニケーションの社会的機能(ラスウェル,1960)
=1:環境の監視、2:環境への反応にあたっての社会の諸部分の調整、3:社会的遺産の世代的伝達
(国家単位で当てはめれば1:外交官、2:ジャーナリスト、3:教育者)
→ライト(Wright,C.R.,1960)はこれに4:娯楽の提供を追加
<第7章 マス・コミュニケーションと社会をめぐる理論の成果と展開>

○カルチュラル・スタディーズは第一段階では記号論や精神分析のアプローチを導入、
第二段階では社会的な主体としてのオーディエンスに焦点を合わせることで
その構造的な規定性を脱構築するという二重のパースペクティヴを有する
→メディアの基本的契機であるテクスト、テクノロジー、オーディエンスを
 それぞれ独立した変数とみなして議論を進めることは無い
<第9章 カルチュラル・スタディーズのメディア・コミュニケーション研究>

☆カルチュラル・スタディーズにとって重要なのは、
自由なテクスト解釈の主体としてのオーディエンスではなく(略)
様々な差別の文化政治学が葛藤と矛盾、せめぎあいを含みながら作動していく
政治の現場としてのオーディエンスの社会的身体である
<第9章 カルチュラル・スタディーズのメディア・コミュニケーション研究>

○メディアと日常生活を分離させてそれぞれの分野の科学性を追及するのではなく、
日常生活や郊外や都市、グローバルな空間システムの作用についての分析と
コミュニケーションについての分析を統合させる
→家庭には、想像される家庭(home)、社会関係の場の家族(family)、
 モラル・エコノミーの場の世帯(household)の三つの次元がある(Silverstone,1994)
<第9章 カルチュラル・スタディーズのメディア・コミュニケーション研究>

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2003 9/20
メディア論、コミュニケーション論、社会学、社会心理学
まろまろヒット率3

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