EU拡大を目的とするニース条約批准を否定したアイルランドの首相の名前が
「アハーン」首相だと知って世界の広さを感じている、らぶナベっす。
さて、『司法戦争』中嶋博行著(講談社文庫)2001年初版。
弁護士をやりながら小説を書いている著者が『検察捜査』、
『違法弁護』に続いて出したリーガルサスペンス小説。
三つ合わせて司法三部作と呼ばれているらしい。
確かにこれで主役も女検察官、女弁護士、女裁判官と法曹三者がそろった。
内容は三部作の中で間違いなく一番面白い!
検察庁から出向している女性裁判官(最高裁民事調査室所属)が
沖縄でおこった最高裁判事の殺人事件を検察側の人間として
極秘に捜査することから物語はスタートする。
法曹三者による最高裁判事の熾烈なポスト争い、判事間の対立、
最高裁と内閣とのパワーバランス、警察と検察の相互不信、
アメリカでのビジネスロイヤー市場の活況、PL法、
次世代技術をめぐる日米間の熾烈な争い、行政改革、
果ては内閣情報調査室とCIAとの闘いまで、
スケールの大きな背景を殺人事件に直接的にからませて物語は展開する。
物語が進むにつれてなぜ「戦争」なのかの輪郭がはっきりしてくる。
突っ込める箇所はいくらでもあるけれど本質的なリアリティがあって
緊張感がある、著者のキャリアが活かされているのだろう。
(しかし商売敵だからってアメリカの弁護士に警戒心ありすぎ(^^;)
その分、三部作の中では一番分量が厚いけど、
物語の核心部分も二転三転するので読んでいて退屈しない。
ただ、この人の書く物語は出てくる人間や組織内部での関係が
精神的にどれも窮屈そうで線の細い視点ばかり目立つ。
そこらへんが読んでいてちょっとうんざりする面もある。
ちなみにこの人の小説は常に司法の構造的な問題点をプロットの根底において
書かれているけどどの作品もほとんどまったくと言って良いほど
法廷シーンが舞台にならない。
一度彼の書いた法廷ものを読んでみたいと思う梅雨の合間。
2001 6/20
小説、法学一般
まろまろヒット率4
法務 キャリア