渡邊義弘@1995年4月からウェブに触れて以来、約18年のお付き合いを続けています。
さて、大向一輝・池谷瑠絵 『ウェブらしさを考える本』 丸善出版 2012。
ウェブ(World Wide Web)の歴史や、ソーシャルメディア(ブログ・SNS)の現状をひもときながら特徴を考察する一冊。
本書の結論としては、”ウェブらしさ”を5つにまとめていて・・・
☆ウェブらしさ=
1:オープンさ (未知の情報・未知の他者とのコミュニケーション)
2:他者にゆだねる (評価は他人が決める)
3:時間にゆだねる (評価はあとで決まる)
4:つながりを重視 (情報のリンク・人々のネットワーク)
5:ベストエフォート (完璧でなくとも最大限の努力をする)
<第7章 ウェブらしさのデザイン>
・・・これらは科学の方法であり、それはウェブを開発したティム・バーナーズ=リーの科学者としての姿勢が反映していることを指摘している。
また、各ウェブサービスの特徴も・・・
☆ウェブサービスの特徴=
・ブログ=ある人の時間をかけてまとめられた思考の履歴
・SNS=日常的なコミュニケーションの履歴
・BBS=人ではく場に結びつけられた履歴
→これまでのウェブはストックには向いているものの、リアルタイム性の高いフローを扱うサービスが少なかった
<第5章 リアルタイムでつながる社会>
・・・と、まとめているのも興味深く感じられた。
さらに今後の展望についても・・・
☆SNSの仕組みそのものが、過剰なまでに透明性を要求し、社会との軋轢を生み出しながら、これまでとは異なる価値観を強力に推し進めているように思える
→これは人が手持ちの情報をウェブ上に出して共有するウェブの本質そのものであり、その対象が人々の日常的な行動にまで及ぶようになったから
<第5章 リアルタイムでつながる社会>
○オープンさとクローズさとのバランスをどう取るかが課題
→バランスに唯一絶対の答えはない
<終わりにーウェブらしさのゆくえー>
・・・と言及していることも印象に残った。
分かりやすさ重視してか、やや冗長な書き方は気になったけれど、「ウェブらしさとは何か?」について正面から整理して問いかける良書。
以下は、その他にチェックした箇所(一部要約含む)・・・
○手持ちの情報を出した人に対して、情報が集まっていくというコミュニケーション様式は、まさにウェブならでは
→何かを知りたいときには探しに行くのではなく、知っていることを全部公開すればよい、という逆転の流れ
<第2章 ウェブとどうつきあうか>
☆もとからコミュニケーションを始めるつもりがなかったが、後から振り返るとあたかも最初からコミュニケーションの意思があったかのように見えてしまう、というのがウェブのコミュニケーションの本質
<第2章 ウェブとどうつきあうか>
○ウェブサービスの棲み分けは、他人からの反応という本質的な気持ち良さがコミュニケーションをそういう方向に進めてしまうのが原因
→気持ち良さを重視すると、自分の言いたいことを言うという段階から、相手の反応をもらいやすいことを言うことへすり替わる
(どんどん大喜利のような状態になっていくのは避けられない)
→そこであるときに疲れてその場所を脱出する
<第2章 ウェブとどうつきあうか>
○非常に厳しい著作権が存在している現代にあって、ウェブのようなオープンなしくみが存在しているのは、単なる偶然の産物ではなく、ティム・バーナーズ=リーの強い意思があってこそ
→その意思は間違いなく研究者倫理に根ざしたもの
<第3章 ウェブはつくられたもの>
○無限ともいえる情報量を持つウェブのなかで、ほぼ唯一の希少資源と呼べるのが人間のアテンション(注目)
→この概念の前で人々が右往左往しているのが現在のウェブの姿
<第4章 情報の発見と発信>
○自分の多面性を表現したり、知人の意外な一面を理解出来るような環境でのコミュニケーションの面白さ・意外性が、SNSを拡大させてきた大きな要因
<第5章 リアルタイムでつながる社会>
○何かの合間に時々サイトに見に行くというのではなく、SNSからの情報が常にざわざわと聞こえてくる環境音のようなものになってきている
<第6章 リアルな共有体験>
○ウェブ上のコミュニケーションを見渡してみれば、未知なるものに言葉を投げかけて、言ったことの価値は後から決まるという流れ
<第7章 ウェブらしさのデザイン>
2013 8/30
ウェブ、情報メディア、ソーシャルメディア
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