綾屋紗月、熊谷晋一郎 『発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい』 医学書院 2008

発達障害についての当事者研究。
ASD (Autism Spectrum Disorder, 自閉スペクトラム症) 当事者と、脳性マヒ当事者による共著になっている。

読んでみると、障害の当事者による「主観の言語化」には、共感する点が多かった。

以下は、チェックした箇所(一部要約含む…)

◯自閉圏の人間は、「意味や行動のまとめあげがゆっくり」
<はじめに>

◯私には、人びとがこんなにたくさんあるはずの身体感覚を容易に絞り込み、ひとつにまとめあげていることのほうが不思議に思われる
<1章 体の内側の声を聞く>

◯まとまらない<したい性>や、危険な<せねば性>のかわりに、<します性>を用いている
<します性>=すりあわせをしなくても済むように行動を決めてしまう意志
→日常生活の大部分はこの<します性>で動くことになっている
<1章 体の内側の声を聞く>

◯<したい性>によって行動の選択をしていくのではなく、まず<します性>として意志をまとめあげ、それにしたがって行動することで、苦痛な身体感覚や心理感覚が緩和する
→やがて徐々に<したい性>が明確化することがある
→ただし、そのようにして導入された<したい性>は、煩雑で、融通の利かないものになりがちで、決して一筋縄で解決するものではない
<1章 体の内側の声を聞く>

☆自分が疲れているかどうかの判断を保留して、「普通」に合わせるために無理を重ねてしまう態度は、外側からは見えにくい (したがって自分からも見えにくい) 障害をもっている人たちに、共通してみられる傾向
<1章 体の内側の声を聞く>

☆感覚過敏と感覚鈍感のあいだには、それほど本質的な違いはない
→どちらも「身体内外から細かくて大量の情報を感受し、それを絞り込み、まとめあげることがゆっくりであるために生じている」
という一言で説明がつく
<2章 外界の声を聞く>

☆自閉=身体内外からの情報を絞り込み、意味や行動にまとめあげるのがゆっくりな状態
→また、一度できた意味や行動のまとめあげパターンも容易にほどけやすい
<2章 外界の声を聞く>

☆「みんなつながれて羨ましいな」「私はつながれなくて寂しいな」ーそんな二つのせつない気持ちをかかえながら、楽しそうな笑顔の群れを見て、つながっている気分のおすそわけをいただく
→私流のヒトの集団とのささやかなつながり方
<4章 揺れる他者像、ほどける自己像>

◯私にとっての発声は「人の何倍もの時間と労力を費やせば、人の何分の一かはできる」というきわめて燃費の悪い代物
<5章 声の代わりを求めて>

☆関係が続いている人びとに共通するのは、みずからが経験してきたディスコミュニケーションの寂しさや孤独感などのつらい感覚を忘れずに、なお、聞こえる者とのコミュニケーションを諦めない、理解しあおうとする態度
<5章 声の代わりを求めて>

☆多くの人々の場合、あなたと私の困難さは「質的に同じでも量的に異なる」のではないだろうか
→この視点は本書においてもっとも大事な点の一つ
<5章 声の代わりを求めて>

☆多くの人がうっかり取り込んでいる「意味・行動のまとめあげパターン」を、私たちのような少数派は、さまざまな理由で取り込めない
→そのかわり手探りで、独自のパターンを、ゆっくりていねいにまとめあげる
<7章 「おいてけぼり」同士でつながる>

☆多くの人は同じパターンを取り込むことで、互いにつながっている感覚を得ることができるが、少数派にはそれもかなわない
→そこかわり手探りで、互いに共有できる意味や行動のパターンを、ゆっくりていねいにまとめあげる
<7章 「おいてけぼり」同士でつながる>

☆「できるできない」という質的な二律背反ではなく、「できるけれどもどれくらいの負担がともなうか」という量的な問題で伝える必要がある
<おわりに>

☆健常者と障害者はスペクトラムであり、障害者のなかもまたスペクトラムになっている
→同じであることを強要するでもなく、差異をことさらにあげつらうでもなく、多様な人びとが多様なままつながりあえれば、と思う
<おわりに>

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2024 3/19
当事者研究、発達障害、発達神経症、精神障害、ASD
まろまろヒット率4

クリス・アンダーソン、関美和訳 『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』 NHK出版 2012


『ロングテール』で知られる著書による、ウェブでのイノベーションをリアルなモノ作りに持ち込む「メイカームーブメント」の解説書。
ファブラボ調査で手に取った一冊。
原題は、“Makers: The New Industrial Revolution” (2013) 。

以下は、チェックした箇所(一部要約含む…)

☆職人だった著者の祖父が特許収入が少なかったのは、祖父が発明家であって、起業家ではなかったから
→この違いこそが、本書の核
→起業と経済成長を加速させるウェブと同じモデルが数倍の規模を持つリアルなモノの経済に影響を与える
→「メイカームーブメント」が生み出す最大の力は、小規模でもグローバルになれる能力
<第1章 発明革命>

☆「メイカーズ・プレミアム」=自分が骨を折ったものにはより高い金額を払う
→モコディティ化に対する究極の対抗策
<第5章 モノのロングテール>

☆「模造者を味方につけるには」=コピー商品を作った人を知的財産侵害とするのではなく、オープンライセンスで許可されている「派生」としてコミュニティの一員として仲間にする
<第7章 オープンハードウェア>

☆オープンイノベーションは究極のマーケットソリューション=コミュニティが、隠れた供給 (その分野でいまだ雇われていない人材) と隠れた需要 (通常の手法で作るとコストがかかりすぎる製品) を結びつけている
<第8章 巨大産業を作り替える>

◯「人材のロングテール」=教育や経歴にかかわらず、能力を証明することができる
<第9章 オープンオーガニゼーション>

◯製品開発面では、メイカームーブメントは安い労働力よりもイノベーションを促す文化に有利に働く
→協創やコミュニティによる開発を大切にする社会が勝つだろう
<エピローグ 製造業の未来>

◯「ロングテール」の新しい時代=大ヒット作がなくなる時代ではなく、大ヒット作による独占が終わる時代
<エピローグ 製造業の未来>

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2023 10/13
メイカーズ、ファブラボ、スタートアップ
まろまろヒット率3

河村有希絵 『思考の質を高める 構造を読み解く力』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2023

職場でご一緒している方からオススメをいただいて、読んでみた構造読解の解説書。
「東大・MBA・コンサルで通用する思考技術は、小学生の国語で学んだ」と帯にあるように、小学校の国語の授業で使われることがある「構造学習論」を中心に、構造化をして読解し、思考する方法を解説している。

以下は、チェックした箇所(一部要約含む)…

◯国語の目的は、究極的には「ともに生きる力」を培うというところ
<第1章 「構造を読み解く力」とは何か?>

◯言葉を使いこなすことの究極目標は、思考すること
<第1章 「構造を読み解く力」とは何か?>

◯大人の武器は「メタ認知」
<第1章 「構造を読み解く力」とは何か?>

◯論理は言語を超えての究極の「共通言語」
<第1章 「構造を読み解く力」とは何か?>

◯単に情報や知識を得るのにとどまらず、なぜそうなのか、をとらえることが読解であり、それが書き手と読み手の対話
<第2章 論理を読み解く>

◯思考とは構造化すること
<第4章 思考を組み立てる>

☆多くの情報の中から、自分にとって、相手にとって、重要な情報を抽出し、その関係性を認識し、納得がいくように証拠を紐づけて提示する、この行為が構造化
<第4章 思考を組み立てる>

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2023 10/10
構造学習、構造読解、構造化、読解力
まろまろヒット率3

吉武信二 『成功する自己採点式ダイエット―健康科学の立場からリバウンドしないセーフティダイエ』 大学教育出版 2007

著者が提唱する「自己採点式ダイエット」をまとめた本。

「自己採点式ダイエット」とは、食事・運動などを項目化して、合計が80点になるようにすることで、適切に痩せることを目指したダイエット方式。

中でも、

図3 身体中のエネルギー代謝の仕組み (モデル)
<第2章 これだけは知っておきたい身体のエネルギー代謝 [理論編]>

、などの科学的な解説がなされているのが特徴。

ダイエット方式の解説に加えて、このダイエット方式を提唱することになった経緯が興味深い。

厳しい受験戦争に打ち勝って、高い学力を持つはずの大学生が、自分の身体のことに関しては意外と無知であることを知り、少々ショックを受けました
<はじめに>

、とあるように、科学的な根拠に基づいたダイエットがいかに重要かを述べているのが、印象的な1冊。

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2023 4/28
健康、ダイエット
まろまろヒット率3

東野圭吾 『マスカレード・ホテル』 集英社 2011

あるホテルが連続事件の次の犯行現場になると予想した警察は、事件を未然に防ぐためにホテル従業員(ホテルエ)として刑事を潜入させることになった。
プロ意識を持つ優秀なホテルエとコンビを組んだ刑事は、慣れないホテル業務と利用客の多様さに戸惑いながら事件の手がかりを探す…

ラグジュアリーホテルを舞台にした東野圭吾のミステリー小説。

読んでみると、実際のホテルから取材協力を得ているので、ホテル利用客の多様性が群像劇のようになっているのが面白かった。
結末はそれほど感銘を受けなかったけど、この作品の取材協力をしたロイヤルパークホテルはぜひ利用したいと思った一冊。

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2023 2/4
ミステリー小説、ホテルもの
まろまろヒット率3

歌野晶午 『葉桜の季節に君を想うということ』 文藝春秋 2007

「何でもやってやろう屋」を自称して様々な仕事を掛け持ちする主人公は、線路への飛び込み自殺を図った女性を助ける。
同時期に、元探偵である経験を買われて、家族の不審死と霊感商法との関連性を調査するよう友人から依頼される。

…「伏線回収もの」が読みたくて手に取った一冊。
読んでみると、確かに伏線回収は秀逸で、散りばめられたepisodeや現在と過去の事件が最後に一本化されていくのは、感銘を受けた。
特に、謎解きが終わってから表題の意味が分かる、いわゆる「タイトル回収」は、これまで読んだ中でも指折りだと感じた。
(「タイトル回収」ものが好き)

上品な表題の割には、出だしからキツめの描写に食傷気味になってしまうなど、この本のすべてが好みだった訳ではない。
ただ、下品な描写でも強調される「何でもやってやろう屋」な主人公の姿勢は、現在47歳の自分には刺さるものがあった。
自分を見つめる時に、これから先もきっとこの本のことを思い出すだろうと感じる。

そうした読後感から、まろまろヒット率5を付けるミステリー小説&恋愛小説。

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2022 12/11
ミステリー小説、恋愛小説
まろまろヒット率5

東野圭吾 『パラレルワールド・ラブストーリー』 講談社 1998

親友の恋人のことを好きな自分がいる世界がある。
一方で、その恋人と自分が一緒に暮らしている世界が同時にある。

この2つのパラレルワールド (平行世界) をつなげる記憶をたよりに、主人公は謎を解いていく…

伏線回収ものが読みたくなって友人からオススメされて読んでみた。
途中まどろっこしいところもあったけれど、最後の台詞が切ない読後感を覚えた一冊。

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2022 11/30
ミステリー小説
まろまろヒット率3

長江俊和 『出版禁止 いやしの村滞在記』 新潮社 2021

山奥にある「いやしの村」。
そこは人から裏切られて傷ついた人たちが癒やしを求めて集っている。
一方で、その村は人を呪い殺す呪術の村という噂がある。
ルポライターは、潜入取材を試みる…

「どんでん返し」ものが読みたくて手に取ったミステリー小説。
謎解き自体はそれほど感銘を受けることはなく、また読後感も印象には残らなかった一冊。 

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2022 11/13
ミステリー小説
まろまろヒット率2

殊能将之 『ハサミ男』 講談社 2002

連続殺人を繰り返す、通称「ハサミ男」は、次の犠牲者候補が自分と同じ手口で殺害されていた遺体を発見する。
あくまでも第一発見者として捜査からは疑われないようにしながら、「ハサミ男」は、この自分と手口を使った殺人犯を調査していく…

「どんでん返し」ものとしてオススメされていたので、手に取ったミステリー小説。
読んでみると、猟奇殺人犯を主役にするサイコミステリー (サイコスリラー) ものとしては、かなり面白い。
主役の心理描写がややまどろっこしいところもあるけれど、クライマックスは驚かされた。

また、静かな描写なのにゾッとする終わり方が印象的な一冊。

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2022 11/11
ミステリー小説、サイコスリラー
まろまろヒット率4

佐藤賢一 『カルチェ・ラタン』 集英社 2003

16世紀半ばのパリ。
宗教改革で揺れる学生街、カルチェ・ラタン (Quartier latin) を舞台に、夜警隊長ドニ・クルパンは、マギステル (Magister) と仰ぐ元家庭教師のミシェルと共に難事件に挑む…

ドニ・クルパンによる回想録という形式で書かれた歴史ミステリー小説。
これまでも、著者の作品は『王妃の離婚』、『カエサルを撃て』、『小説フランス革命』などを読んできた中で、西洋歴史小説かつミステリー小説が読みたくなって手に取った一冊。

読んでみると、形式から分かるように、シャーロック・ホームズ・シリーズのパロディになっているいることや、同時代の歴史人物を登場させているのが、歴史好きな自分には読んでいて楽しかった。
(ノートルダムのカジモドや、イナゴ・デ・ロヨラ、フランシスコ・ザビエル、ジャン・カルヴァン、レオナルド・ダ・ヴィンチなどが登場)

ただ、これまでの著者の作品と同じく、下品さを強調した表現がよい気持ちにならなかった上に、ミステリー (謎とき) としては、特に面白さを感じなかった。

とはいえ、16世紀のカルチェ・ラタンの様子が活き活きと描かれているところは読んでいて楽しかった。
また、神学を題材にしているので、「神とは何か」という問いを考えせられることや、回想録の筆者のクルパンの成長に共感する結末が印象的な作品。

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2022 11/6
歴史小説
まろまろヒット率4