内田貴 『民法3―債権総則・担保物権』 東京大学出版会 1996

内田貴の『民法』シリーズの最後の一冊、これですべて読破!
まだ『民法4』があるらしいがこれはまだ未刊だし家族法なので
民法のメインである財産法を取り上げたこの1~3巻で
民法を読み終えたと言っても良いだろう。
内容は民法の中でもっとも実務的な(だからこそややこしい)
担保物権を中心に記述している。
前に読んだ2冊と同じようにとりあえず長い、長い!
集中力が切れそうになる後半部分にややこしい抵当権や非典型担保
などの記述があるのは嫌がらせのか?(^^;
とりあえず学術書の中では最長の本として記録しておこう。

以下、チャック&まとめた箇所・・・
<第1章 序説>
○契約から発生する債権の注意事項・・・
・民法の債権は成立または効力発生の要件の視点から規定されているので
債権によっては契約の解釈でその内容を明確にする必要がある
・契約からは中心的債権・債務=「給付義務」とは別に様々な義務
=「付随義務」が発生するがその法的性質や理論的位置づけが
大きな論争点になっている

☆「担保」とは金銭債権の弁済を確保する手段

<第2章 債権入門>
○下級審裁判例を中心に付随義務として様々な新しい契約義務が
認められている(信義則を根拠にすることが多い)・・・
情報提供・助言義務、契約交渉継続義務、契約関係継続義務、
安全配慮義務、損害軽減義務、再交渉義務など
これらの義務をいかに契約法理論に取り込んでいくかが
契約法に課せられた大きな課題とされている

○これまでの契約上の義務発生は当事者の意思か法律の規定を
根拠としていたが新しい付随義務の根拠は必ずしも当事者の意思に
還元できないものになっていて債権法と契約法に対して
根本的な変革を迫る考えとされている
←現実の取引の多くは様々な規範意識を共有する取引共同体の中で
行われていて当事者の意思もこうした共同体に内在する規範に
拘束されているのに近代法的な契約観は取引現実を社会関係から
孤立して捉えているため弊害が生まれたのではないか
新たな契約法上の義務はこれらの内在的な規範の法の次元への反映と
見るべきではないか=「関係契約理論」

○債権の分類・・・
引渡債務(与える債務)・行為債務(為す債務)、
結果債務・手段債務、種類債権(不特定物債権)・特定物債権

○種類債権が特定される時点は持参債務、取立債務、送付債務によって違う

○引渡債務の目的物が特定すると債務者の保管義務が加重されて
特定物と同じく善管注意義務を負う(400条)
→特定後滅失について債務者に帰責事由が無ければ特定物と同じ
債権者主義(534条)が適用され一方債務者に帰責事由があれば
履行不能の債務不履行責任を負うことになる
また、特定の効果として特約が無い限り特定によって目的物の
所有権が移転するとされている(判例)

○種類債権には原則として特定まで履行不能がないが「制限種類債権」には
履行不能がある(条文にはないが契約の解釈で決まる)

☆債権の目的の一般的要件=適法性・社会的妥当性、可能性、確実性
→民法総則の法律行為とほぼ重なる

○客観的な経済価値のある目的物に限って保険がかけられるようにする
損害保険契約(商630条)はいかなる主観的価値も自由に
契約の目的物にできるとする民法399条の例外規定

○債権と請求権の違い・・・
実体法と訴訟法が未分化だったローマ法では権利とは訴訟可能性
=「訴権」でありその後実体法と訴訟法が分化していくにつれて
実体法上の権利と訴訟上の権利が明確に区別されるようになった
それにともなって両次元に分化した訴権を媒介する概念として
ヴィントシャイトが考え出したのが「請求権」
→訴訟上の請求がなされるにはまず実体法上の権利が存在しなければならい
(請求権は物権からも債権からも生じるのはこのため)

<第3章 弁済による債権の実現>
☆「弁済」=正常な経過による債権の実現
日常語と違って法律の弁済は金銭の支払いに限らず引渡や登記も含まれる
→債務の本旨に従った給付をなすことが弁済で履行と同じ意味になる

☆第三者による弁済が有効な場合は債務者の債務は消滅して
弁済者が債務者に対して求償する関係が残る=「代位弁済」

○差押と弁済が競合した時、第三債務者は差押債務者に弁済しても
差押債権者との関係では弁済の効力を主張できない(481条)

○「転付命令」=差押債権者に被差押債権を券面額(差押えられた債権の

名義価格)で移転して債権の弁済があったものと扱う制度(民事執行法159条)
転付債権が存在する限りその差押債権者が優先的に弁済を受けることができる
ただし第三債務者の無資力の危険は差押債権者が負う

○受領権限のない者への弁済も有効な弁済と扱う例外・・・
「債権の準占有者」(478条)、「受取証券の持参人」(480条)
→478条の善意・無過失の立証責任は弁済の有効を主張する側(弁済者)
にあるが480条では弁済の効力を否定する側(真の債権者)にある
真正な受取証書を持っていることにそれだけ強い推定力を認めている
(478条は銀行預金の払戻をめぐってよく問題になる)

○預金担保貸付における相殺では名義変更などで預金者と貸付の相手方が
異なる場合でも478条の類推適用によって銀行を保護した判例がある
(最判昭和48年3月27日)
→多くの場合478条は真の債権者から請求を受けた債務者の抗弁として
機能する=債務者の援用とともに効果が確定する

○インフレによる価格変動があっても金銭債務は券面額を支払えばよい
という「名目主義」がとられている(最判昭和36年6月20日)

○弁済受領者の義務・・・
受取証書を交付すること(486条)
債券証書がある時に全部弁済を受けた場合はこれを返還すること(487条)

○弁済による代位が認められる場面=法定代位&任意代位

○任意代位が認められるための要件・・・
・債権者の承諾→銀行取引約定書ひな型には「代位権不行使特約」がある
・誰が代位弁済したのかを原債権者から債務者に通知するか
債務者が代位弁済を承諾したのでなければ債務者との関係で
任意代位を対抗できない
→弁済による代位は債権譲渡に類似している
また、債務者以外の第三者に対抗するためにはこの通知・承諾が
「確定日付ある証書」をもってなされることが必要

○債権者の協力義務・・・
・全部弁済を受ければ「債券証書と担保物」を代位者に交付する
・「担保保全義務」を負う
→銀行取引ではこの担保保全義務の免除を保証人と銀行との特約で定めている
(疑問を呈する学説も多い)

○代位者が複数のとき=人的担保は頭数で物的担保は財産価格に応じて
負担部分を分配する(501条但書)

○弁済の提供は債権者に関しても信義則上の協力義務があるとされる

○受領遅滞(413条)の効果=債務不履行の責任が発生しない、
双務契約の場合は債権者の同時履行の抗弁権がなくなる、
特定物の引渡における注意義務の軽減、増加費用の負担、危険の移転、
受領遅滞は供託の原因となる
→受領遅滞の効果のほとんどは弁済の提供の効果と同じ

○債権者に契約上の債務として受領義務を認めるべき場合があり
受領義務を果たさなければ債権者に通常の契約上の義務違反として
損害賠償の問題が生じ場合によっては解除事由ともなることがあるとされる
(最判昭和46年12月16日)

○「弁済供託」の要件=債権者が弁済の受領を拒絶、債権者の受領不能、
債権者不確知(494条)

<第4章 債務不履行>
○債権の効力の展開→
裁判手続で実体法上の権利の存否を判定できる「訴求力」
→その確定判決を債務名義として執行手続で実現できる「執行力」
→執行力の中には債権の内容をそのまま強制的に実現する「貫徹力」、
債務者の一般財産に強制執行して債権の内容を実現する「掴取力」

○債権の効力は最も弱いものから「給付保持力」、「訴求力」、「執行力」
→自然債務は給付保持力しかない
(カフェー丸玉女給事件:大判昭和10年4月25日)

○行為債務
直接強制は憲法18条で禁止されている強制労働になるから許されない
それゆえ他人にやらせて費用を債務者から取立る「代替執行」(414条)と
罰金を課して債務者の履行を経済的に強制する「間接強制」
(民事執行法172条)がある
→通説では間接強制は債務者の人権に関わるのでこれを極力さけて
代替執行すべきだとされていたが疑問が呈されている

○救済方法(723条)として問題になる謝罪広告は判例では
一定限度で強制履行が可能とし代替執行を認めている
(最大判昭和31年7月4日)

○債務不履行の用語としての使い方は統一されないため
債務不履行の事実のみが要件の「強制履行」(帰責事由は必要ではない)と、
帰責事由が要件とされている「解除・損害賠償」、の二つに分けて考える

☆特に種類物債権の場合は債務不履行の被害者だからといって
損害の発生を座視していれば強制履行は認められず
また損害賠償も制限される=「損害軽減義務」
→日本ではまだ正面から肯定されていないが
国際動産売買ウィーン条約でも採用されている

☆損害賠償請求権が発生する要件(415条)・・・
債務不履行の事実、債務者の帰責事由、損害の発生・因果関係

○債務不履行では中心的な給付義務以外に広範な信義則上の義務が
発生することが認められているが
その一つが「安全配慮義務」(最判昭和50年2月25日)
→契約責任としての安全配慮義務は特定の当事者間の
特別な社会的接触関係を基礎として認められる義務なので
社会生活上発生する他人に対する一般的な安全配慮義務とは異なる
(最判昭和58年5月27日)

☆契約責任と構成するか不法行為責任と構成するかの違い・・・
・「時効」は契約構成が有利→10年vs3年(ただし加害行為20年)
・「立証責任」は契約構成がやや有利だが実質上はあまり変わらない
・「遅延損害金の起算日」は不法行為が有利
・「遺族固有の慰謝料請求権」は不法行為が有利(相続人には違いは小さい)
・「相殺」も不法行為が有利
・「弁護士費用の請求」は違いはない

○安全配慮義務をめぐる裁判例は
労働災害・公務災害関連と学校事故が多い

☆安全配慮義務は大数的には不可避的な事故について
そのコストをいかに分配すかという側面が強い
→労働場や学校のようにある程度の危険を伴う「場」を提供している
主体に対してそこで生じた事故被害についてのコストを負担させ
(労働者や学生一人一人に損失分散の負担を負わせるよりもはるかに効率的)
保険で分散させる役割を担わせて安全対策のための
インセンティヴを与える制度として捉えられる=「事故法」

☆帰責事由の立証責任は債務者側にある
→債務者側が免責のために帰責事由がないことを立証するためで
原告が立証すべき事実という意味での「要件」ではないので
不法行為における過失の立証責任とは逆

○「履行補助者の過失」=被用者的補助者(債務者自身が指揮・命令できる者)
と独立的補助者(独立して事業をおこなう者)がある

○損害賠償の範囲の確定=「損害賠償の範囲」と「損害の金銭評価」

○契約違反に対する損害賠償を契約締結時に当事者が予見しえた範囲に
限定すべきとした「ハドリー事件」(英法)が416条の源流

☆「通常損害」に加わる「特別損害」で問題となる予見可能性の解釈
・予見する主体は「債務者」(判例)
・予見可能性を判断する時期は「履行期もしくは不履行時」
(契約締結説ではなく不履行時説:大判大正7年8月27日)

○419条が定めた金銭債務についての特則
=債務不履行の事実(履行遅滞)を立証すれば損害の立証は不要
(帰責事由だけでなく不可抗力さえ免責事由にはならない)
→金銭債務では損害の立証のなしに賠償がとれる

○賠償額の予定があるからといって「当然に」
解除や履行の請求ができなくなるわけではない(420条2項)

<第5章 第三者による債権侵害>
○引き抜きによる不法行為を認めるかどうかは転職の自由を考慮して
相当悪質な場合にのみ不法行為の成立を認める判例がある
(ラクソン事件:東京地判平成3年2月25日)

<第6章 金銭債権の履行確保に関する諸制度>
○金銭債権の履行確保(金融取引法)は法律と現実との最も生々しい接点
魑魅魍魎が徘徊する世界を法律がいかに規制しているかを見ることは
民法の典型的な機能を見る機会になる

○本来の給付(金銭)の代わりに別の給付(土地など)をもって行う
「代物弁済」(482条)は抜け駆け的弁済に用いられることが多い

☆正攻法による執行を維持するため抜け駆け的債権回収を抑制する機能・・・
・責任財産を保全する制度
→「仮差押・仮処分」(民事保全手続)、「債権者代位権」(423条)
・抜け駆け的債権回収が行われた場合の事後処理的制度
→「債権者取消権(詐欺行為取消権)」(424条)

<第8章 債権譲渡>
○債権回収の手段としての債権譲渡を正攻法の手続に則って行うのが
「転付命令」(民事執行法159条)

○所有する複数の債権を一括して譲渡しこれを担保に融資を受けるのが
「譲渡担保」←包括的な担保権の設定が可能かについては議論がある

○転付命令(強制執行)と譲渡禁止特約が競合した時に(466条2項但書)
譲渡禁止特約に対抗できるのは相手が悪意か重過失に限る
(最判昭和48年7月19日)

☆対第三者対抗要件は確定日付ある証書による譲渡人から債務者への通知、
または確定日付ある証書による債務者の承諾(467条2項)
→債権の譲渡では不動産と違い債務者を情報センターにして債務者が
登記所の役目を担うので債務者への通知または債務者の承諾が対抗要件になる

○確定日付ある証書は公正証書と内容証明郵便がよく使われる
また確定日付と到達時が分離した場合判例は到達時説を採用している

○物の譲渡とは違う債権譲渡特有の論点=
債務者に対する対抗要件問題と「異議を留めない承諾」にかかわる問題

○債権者の変動=「債権譲渡」、債務者の変動=「債務引受」

☆債務引受の三種・・・
・「免責的債務引受」(債務が同一性を保ちつつ新債務者に移転する)
→債権者が害される可能性が大きいので債権者の同意なしには認められない
・「併存的(重畳的)債務引受」(新債務者がもとの債務者と並んで
債務者になる→実質は人的担保)
→債権者に有利なのでもとの債務者と引受人の合意で可能
・「履行の引受」(債務者はもとのままだが引受債務者が
もとの債務者に代わって弁済する義務を負う)
→債権者には関係ないので債務者と引受人間だけで契約できる

○不動産賃貸借契約の賃貸人の地位移転は賃借人の同意なしで移転できる
(最判昭和46年4月23日)
→新賃貸人が賃借人に賃料請求するための対抗要件は
目的物に対する登記の移転

<第9章 相殺>
☆相殺は簡便な決済手段だけでなく債権担保としての機能を果たし
優先的な債権回収を可能にする手段となる

☆相殺する側の債権=「自動債権」、相殺される債務=「受動債権」
(反対債権)

☆相殺の効果は相殺を為すに適した状態=「相殺適状」まで遡及する

○受動債権とすることができない債権=不法行為による損害賠償債権、
差押の禁止された債権、差押を受けた債権

○相殺の担保的効力をめぐってはかつての制限説から511条の文言通り
両債務の弁済期を問題とすることなく相殺の効力を認める
「無制限説」に判例が移行(最大判昭和45年6月24日)

○転付命令との関係で相殺の担保的機能をどこまで保護するかが
争点になった判例は相殺が衝突する事例(相殺vs逆相殺)だったが
相殺適状の後先ではなく相殺の意思表示の後先で決する旨の判示
(最判昭和54年7月10日)

<第10章 責任財産の保全>
☆強制執行の引当になる債務者の財産が「責任財産」
→差押がなされない限り債務者の財産は債務者の支配下にあるのが
民法の原則だがその例外として一定の範囲で強制執行の準備のために
債権者が債務者の財産管理権に介入することを認めた
=「債権者代位」と「債権者取消権」=債務者の責任財産を保全する制度

☆債権者代位のメリット・・・
・債権者代位は債務者の「意思を無視して」行使できる
(代替的な手段として代理受領と債権の譲渡があるが
どちらも債務者の同意が必要となる)
・判例は金銭債権を代位行使する場合は代位債権者が結果的に
「優先弁済」を受けることを認めている←責任財産の保全目的を超えるもの
・消滅時効が迫っていても「債務名義が不要」
・催告、取消権、解除権、買戻権などの「執行の目的とならない
債務者の権利」でも代位行使できる
・本来想定されていないようなケースでも「債権者代位権の転用」として
債権者代位が可能←責任財産の保全目的を超えるもの

☆債権者代位の要件(423条)
・被保全債権=金銭債権、履行期の到来
・債務者=無資力、権利未行使
・行使される権利=一身尊属でないこと

☆債権者代位権の転用=「登記請求権」(最判昭和40年9月21日)
「賃借権に基づく妨害排除」(最判昭和4年12月16日)

○履行期の到来の例外(423条2項)=「裁判上の代位」、「保存行為」

○債権者代位権の理論的位置付け=責任財産保全制度説
vs簡便な債権回収手段説vs包括担保権説

○債権者代位権の効果は直接債務者に帰属するので(通説)
代位者はあくまで受領した物を債務者に返還しなければならない
→ただし金銭債権の場合は相殺によって事実上の優先弁済が可能

○代位権行使による既判力は「法定訴訟担当」に
該当するので債務者にも及ぶとするのが判例・通説

○債権者取消権の要件・・・
・債権者側=被保全債権→必ずしも金銭債権に限らない
            債権取得時期(詐害行為前)
・債務者側=客観的要件→詐害行為、
      主観的要件→悪意
・受益者、転得者側→悪意

○債権者代位権とは違い債権者取消権は裁判所に請求しなければならない
(424条1項本文)

☆債権者取消権の効果を決定づける判例(大連判明治44年3月24日)は
取消訴訟は「形成訴訟」で財産の回復を求めるかどうかは債権者の自由で
効果は相対的にのみ生じる=「取消の相対的効力」ので
債務者を被告とする必要はないとしている(債務者に当事者適格はない)

○債権者が取り消しうる範囲・・・
物が不可分な場合には取消債権者の債権額を超える場合でも原則として
現物返還が認められる(最判昭和30年10月11日)
ただし抵当権登記の末梢によって現物返還が不当になる場合には
価格賠償のみが認められる

<第11章 保証>
○資力や信用の劣る企業者に信用を与え金融機関からの融資を
用意にするための保証=「債務保証」(信用保証協会が担う)

☆保証の従たる債務・・・
・「附従性」(保証債務は主たる債務に附従する)
「成立における附従性」(主たる債務がなければ成立しない)
「内容における附従性」(主たる債務より重くなることはないなど)
「消滅における附従性」(主たる債務が消滅すれば消滅する)
・「随伴性」(債権譲渡の際に保証債務は主たる債務とともに移っていく)
・「補充性」(主たる債務者が履行しないときに始めて履行が可能)
←補充性には保証人に抗弁権が与えられている「催告の抗弁権」(452条)
、「検索の抗弁権」(453条)
(合意で予め補充性を排除するなら「連帯保証」になる)

☆主たる債務とは独立に債権者に生じた損害を填補することを目的とした
契約を「損害担保契約」→449条は附従性の例外としてこれを認めたもの

○保証債務の内容は主たる債務と同一でなくてもよく
保証契約の解釈によって導かれるので不代替的な債務の保証も可能
→ただし保証債務の重さは主たる債務より大きくなることはない

○債務契約が債務不履行により解除された場合には(法定解除)、
請負人の前払返還債務(原状回復義務)にも保証が及ぶ
(最大判昭和40年6月30日)

○補充性の抗弁権とは債権額100万円のうち80万円は取れたはずなのに
債権者が放置したために後で執行した時は50万円しか得られなかったという
場合には保証人は50万円を支払う必要はなく抗弁権行使直後に執行すれば
負担したであろう20万円の限度で弁済すればよいとするもの
→補充性における「債権者の協力義務・配慮義務」

○保証人が主たる債務者に代わって弁済した場合は当然に
主たる債務者に対して弁済額全部を求償できる

☆求償の違い・・・
・委託を受けて保証人になったとき
→保証人に損害が生じないよう完全に求償できる(459条1項)
・委託を受けないで保証人になったとき
→自ら進んで保証人になったのだから弁済した当時に主たる債務者が
利益を受けた限度で求償できる(462条1項)
・主たる債務者の意志に反して保証人になったとき
→保証人の権利は最も薄弱で主たる債務者が求償の時点で
利益を受けている限度でのみ求償できる(462条2項)

☆委託を受けた保証人特有の権利・・・
「求償権の事前行使」(460条)と求償しうる範囲は459条2項が準用されて
法定利益だけでなく避けられなかった費用その他の損害賠償も得られる
→委託を受けない保証人の求償権には利息、費用、損害賠償は含まれない

☆保証人が二人以上いる場合=「共同保証」は保証人の数に応じて
債務額を分割されるのが原則=「分別の利益」(456条)
特約で全額について債務を負担する共同保証をすることも可能=「保証連帯」
→実際には分別の利益のない共同保証が圧倒的に多い

○共同保証人が弁済すれば主たる債務者に対して求償権を有するのは
当然だが共同保証人間でも求償することが認められている

○継続的保証=「根保証」の種類→信用保証、身元保証、
不動産賃貸借から生じる賃借人の債務保証

○身元保証は身元保証法で規制されている
→身元保証法の特色・・・
・身元保証の存続期間の上限を5年に制限
・使用者には被用者が業務上不適任又は不誠実であったり任務又は任地変更で
保証人に危険が及ぶ場合には遅滞なく身元保証人に通知する義務がある
・上記のような事実がある場合に身元保証人に解約告知権あり
・保証責任の限度を定めるにつき裁判所に広い裁量権あり

<第12章 多数当事者の債権債務関係>
☆ひとつの債権・債務に相続などで複数の当事者が生じた場合は
分割可能である限り債権も債務も頭割りするのが民法の原則
=「分割債権・分割債務」(427条)
→ただし不可分性や別段の意思表示があるときや法律の規定があるとき、
特別の慣習があるときは427条の適用は排除される

○組合でも権利能力なき社団でもない団体が融資を受けるのが
合意によって連帯債務が生じる典型的な場合
→連帯債務が成立すると団体構成員はそれぞれ独立に債務を負う
債権者は誰にどれだけ請求しようと自由

☆連帯債務者の一人に生じた事由は他の債務者に影響しないのが原則
=「相対的効力」(440条)だが例外は「絶対的効力事由」(434条~439条)
→保証の場合主たる債務者に生じた事由は原則全ての保証債務に影響するが
(附従性)、保証人に生じた事由は原則主たる債務に影響しない。
この一方通行が保証の特色だが連帯債務は双方で影響し合う
絶対的効力事由が多い

○法律が連帯債務である場合でも債権の効力を強めるべきとするときには
絶対的効力事由を制限する解釈をすべきだとされている
このような連帯債務は本来民法が規定する連帯債務そのものではないので
「不真正連帯債務」(全部義務)と呼ばれる
(不真正連帯債務にも求償関係はある)

○連帯債務における無資力のリスク負担部分は債権者との関係では
原則として平等であり債権者が実際の負担部分に対して悪意
または重過失の場合にのみ主張できるとされる

<第13章 抵当権>
☆典型担保物権→約定担保物権=質権、抵当権
       →法定担保物権=留置権、先取特権
・非典型担保物権→仮登記担保(代物弁済予約)、譲渡担保、所有権留保
(非典型担保→代理受領など)

☆担保物権の代表格の抵当権は目的物の占有を設定者のもとに
とどめたままの担保=「非占有担保物権」
→登記・登録による公示の可能な物に限って抵当権の設定が可能

○登記がなされていればたとえ設定者がその建物を第三者に譲渡しても
抵当権は建物にくっついて移転する=「追及力(効)」

○抵当権設定者は債務者自身である必要はなく債務の責任のみを負う
設定者を「物上保証人」

☆抵当権は目的物を売却した代金から優先弁済を受けることができる
=「優先弁済的効力」→留置権以外の担保物権全てが持っている効力
(留置権には「留置的効力」)

○抵当権の及ぶ範囲は370条が規定・・・
・土地が目的物の場合には抵当権の範囲から建物が除外される
・「付加一体物」
→抵当権設定時に存在した従物に関しては付加一体物に含まれる
借地上のガソリンスタンド店舗建物に対する抵当権が設定当時から
存在している地下タンク、ノンスペース型計量器、洗車機などの
設備にも及ぶことを認めた判例がある(最判平成2年4月19日)

○抵当権は借地権に及ばないので抵当物権の買受者を立法的に保護するために
借20条により地主の承諾に代わる許可を裁判所に求めることが可能

○たとえ物上代位権が認められても必ず抵当権者が優先できるとは
限らないので(304条)実際には抵当権者は抵当権設定の際に
火災保険金債権(停止条件付債権)に質権を設定していくことが多い=債権質

☆抵当権は非占有担保物権だが先取特権と性質の同一性を認めて
賃料への物上代位が肯定されている(最判平成元年10月27日)

☆日本は土地と建物が別個の不動産とされているので抵当権の目的物に
関しても特別な手当が必要となる=「法定地上権」、「一括競売」

○民法は自己借地権を認めてないので競売による買受人や建物所有者を
保護するために法律上当然に地上権が発生することを認めた
=「法定地上権」(388条)

○土地と建物は別個の不動産なので更地に抵当権が設定された後で
建物が建った場合にはその所有者が土地所有者自身であろうと
第三者であろうと建物を収去する前提で抵当権を
実行するのが原則だが、抵当権設定後に設定者が建てた建物を
土地とともに競売する=「一括競売」(389条)が認められている
→ただし優先弁済は土地の価格についてのみ行える

☆抵当権に劣後する賃借権は抵当権の実行とともに覆るが
抵当権の設定された不動産を借りてしまった賃借人の保護のため
短期に限って設定者の賃貸権限を保証した「短期賃貸借制度」(395条)がある
しかしこの制度は民法典の中でもっとも弊害の多い制度の一つとされている
濫用=「詐害的短期賃借権」

○短期賃貸借の要件・・・
・登記→賃貸借が登記されることはまずないので判例は特別法上の
対抗要件でもよいとした(借地権は建物登記、借家は占有)
・602条の期間を超えないこと→ただし抵当権者に損害を与える賃貸借に
ついては抵当権者は裁判所にその解除判決を求めることができる(395条)
(一種の債権者取消権)

○詐害的短期賃借権に対する対抗手段として抵当権者自らが
短期賃借権の設定を受ける「併用賃借権」があるが
これは判例により法的な意味は失われたので(最判平成元年6月5日)
実務では占有がなかったり形だけの占有しかない短期賃借権には
競売手続の中で「引渡命令」(民事執行法83条)という扱いが一般的

○抵当権は通常の物権と同じく侵害に対して物権的請求権が認められている
(最判昭和6年10月21日)
また第三者に対しても即時取得されていない限りでの返還請求権を認めている
→ただし抵当建物に不法占拠者がいても普通に使用収益する限り
妨害排除はできない

☆抵当不動産の所有権を取得した者=「第三取得者」はいつ抵当権が実行され
所有権を失うかわからない不安定な地位におかれるため
抵当権者の主導で第三取得者のために抵当権を消滅させる「代価弁済」と
(利用されることは少ない)
第三取得者の主導で抵当権を消滅させる「滌除」がある
→抵当権を買い取る制度でこれに応じなければ債権者は一ヶ月以内に
「増加競売」の請求をしなければならない

☆抵当権の処分=転抵当、抵当権の譲渡・放棄、
抵当権の順位の譲渡・放棄、抵当権の順位の変更
(順位の変更以外は被担保債権と切り離して抵当権によって把握された
担保価値だけを融通し合うもので存続における附従性の例外)

○転抵当(375条)は設定者の承諾がある場合=「承諾転抵当」だけでなく
承諾が無くても可能=「責任転抵当」

☆転抵当の対抗要件は原抵当権の登記につける「付記登記」(375条2項)だが
債務者や保証人、物上保証人、抵当不動産の第三取得者に対しては
原抵当権者から債務者への「通知または債務者の承諾」が要件(376条1項)

○ひとつの債権を担保するために複数の不動産に抵当権を設定している
「共同抵当」をひとつずつ競売するのを「異時配当」、
同時に競売するのを「同時配当」

<第14章 質権>
○質権には留置的効力と優先弁済権を有しているが占有担保物権としての
限界がありここに譲渡担保が生み出される素地がある

○質権者が質物をさらに質入れすることを「転質」

<第15章 法定担保物権>
☆先取特権の類型・・・
・一般先取特権→総財産へ(306条)
・動産先取特権→特定動産へ(311条)
・不動産先取特権→特定不動産へ(325条)

○先取特権の中心的効力は抵当権と同じく目的物を強制的に換価することが
可能な優先弁済権を有すること

○先取特権は公示のない担保物権であり一般担保物権は目的物の特定すらない
という点で担保物権としては取引の安全に対する配慮に欠けるとされている
しかし特定の債権に政策的な理由から優先弁済権を与えるべきだとする
要請から特別法によって認められた先取特権は多くまた増加している
(この点に関してドイツ法は制限しているが日本の民法はフランス法を継受)

<第16章 非典型担保>
☆非典型担保の類型・・・
・予め所有権を移転→消費賃借上の債権が存続=「譲渡担保」(主に動産)
       →消費賃借上の債権が存続せず=「売渡担保」(主に不動産)
・弁済のない場合に所有権移転→「仮登記担保」(不動産)
・所有権を売主に留保→「所有権留保」(主に動産)

☆譲渡担保の特色=所有権移転の形式をとる、単純な売買ではなく
消費賃借契約が併存していて債務を弁済すれば所有権が戻る
→経済的目的と法律上の形式にギャップのある譲渡担保をどのように
法律構成するかをめぐっては争いがある

☆仮登記担保=「代物弁済の予約」や「停止条件付代物弁済契約」
(債務不履行が停止条件)を予め結び債務の弁済を怠ると債務者の
土地建物の所有権を債権者に移転する形態の担保
(将来の所有権移転請求を保全するために仮登記をする)
→仮登記担保法が制定されて抵当権に対して持っていた
うま味がなくなってしまったので利用は減少したと言われる

☆所有権留保=電気製品や車などの割賦販売で使われる売主が代金債権を
担保する方法として目的物の引渡後も所有権を売主のところに
留保しておくものだが割賦販売法が規制している←代表的な消費者保護立法

この本をamazonで見ちゃう

2000 6/12
法学、民法
まろまろヒット率3

内田貴 『民法2―債権各論』 東京大学出版会 1997

痛いものコレクターとして「テツandトモ」がちょっと気に入っているけど
最近小ブレイクしているのでちょっとダメかなと思っている、らぶナベっす。

さて、『民法2~債権各論~』内田貴著(東京大学出版会)1997年初版。
民法の根幹である契約法と不法行為法を中心に記述している内田貴の第二段。
この部分には民法に限らず法学全体の基礎となる概念や規範が
満ちているとされていて現に法的推論の典型パターンが多いとされている。
アメリカのロースクールではまず最初にこの契約法と不法行為法を
徹底的にたたき込むことから始めるほどな部分重要とされている。
そして何よりもこの部分は読んでいてめちゃくちゃ面白い!!
一般原則の総則を中心とした『民法1』なんかよりずっと興味深い。
特に不法行為法でケースとして多数紹介されている医療過誤事件のところは
現実の問題と法律の視点が交差する接点はどこか鮮明になって
読んでいて思わず「ををっ!」とうなってしまうくらいぞくぞくした、最高!
(かなり法学フェチになっているかな?)
ただ唯一とも言える難点はやはり異様に長いことだ。
分厚いと感じた『民法1』よりもさらに分量が多い!(*o*)
途中で挫折しなかった自分に乾杯(笑)

以下は、チェック&要約する必要を感じた箇所・・・
<第1章 序説>
☆契約とは「債権の発生を目的とする合意」

○不法行為から発生する債権(被害者の損害賠償請求権)は
法律上当然に発生するもので合意に基づく契約とは全く違う

○債権発生原因=契約、事務管理、不当利得、不法行為
(四つ合わせて「債権各論」)

<第2章 契約法の構造>
○典型契約の分類(ただしこの分類に縛られないことも大切)・・・
・移動型(贈与・売買・交換)、
・利用型(消費貸借・使用貸借・賃貸借)
・役務型(雇用・請負・委任・寄託)
・その他の特殊な契約(組合・終身定期金・和解)

<第3章 契約とは何か>
○道徳の力だけでは取引秩序を維持していくのが
難しいので契約という法制度がある

○契約の拘束力に関する意思主義=人間は自らの意志に基づいてのみ
拘束されるという思想は非常に近代的なもので歴史的にいえば
それ以前には単なる合意だけでは法的な拘束力が無く
必ず一定の形式的要件が必要とされた
→ただし法律の世界での意思とは内心の意思ではなく
外部に表明された「意思表示」のこと

○日本では無償の契約でも合意だけで直ちに契約として
拘束力を獲得することができるのが原則
=「諾成主義」だが比較法的には珍しい

○電車や電気の利用などの社会類型的行為があれば個別の意思を問題と
することなく契約が成立するというのが「事実的契約関係理論」
→伝統的な意味での契約とは違う特殊な現代的契約

○相手方の作成した契約条件を飲むかどうかだけの契約
=「符合契約」に使う予め作成された契約条項
=「約款」又は「普通契約条款」
→約款規制法は各国で制定されているが日本には無く
消費者保護の観点から立法の必要性が指摘されている

○契約の種類・・・
典型契約ー無名契約(非典型契約)、双務契約ー片務契約、
有償契約ー無償契約、要物契約ー諾成契約、
単発的契約ー継続的契約ー継続的供給契約(電気、新聞など)

<第4章 契約プロセスと契約法>
☆契約法での重要な2点・・・
・現実の契約は一連のプロセス
 →契約法学の課題は全体として整合性を保ちつつ現実の契約実務の中の
  規範意識から乖離することないように解釈を加えること
・民法の契約法条文は契約の成立から始まるが現実の契約プロセスは
契約の成立とともに始まるわけではないし履行の完了、
存続期間の終了後も存続する
 →全体を視野に入れなければならない

☆契約交渉過程であっても相手に強い信頼を与え相手が費用の支出などを
おこなった場合にはその信頼を裏切った当事者は相手方が被った実損害
=「信頼利益」を賠償する義務を負うとされる
=「契約締結上の過失」(イェーリング)
(岩波映画事件:東京地判昭和53年5月29日)

○契約当事者間の情報や専門知識に大きな差がある契約の場合には
締結過程中に一方当事者から信義則上「情報提供義務」があるとされる
(フランチャイズ契約:京都地判平成3年10月1日)

○バイト募集や通販のカタログ配布はそれ自体契約の申込ではなく
「申込の誘因」であるとされる

○競争者がお互いに競争相手の条件を知りうるのが「競売」、
知りえないものが「入札」

○双務契約における「牽連性」・・・
・成立上の牽連性→原始的不能
・履行上の牽連性→同時履行の抗弁権
・存続上の牽連性→危険負担

○同時履行の抗弁権と留置権が重なった場合は
どちらを行使しても良いのが通説&判例

☆同時履行の抗弁権の要件(533条)・・・
・一個の双務契約から生じた相対立する債務があること
・相手方の債務が履行期にあること
・相手方が自己の債務の履行もしくは提供をしないで履行を請求すること

○履行期の例外としてある「不安の抗弁権」は海外では立法例が多く
日本でも下級審では認める判決も多い
→継続的な取引関係で相手方の買主に信用不安が生じた場合に
個別契約上の債務である出荷を停止するなど(東京地判平成2年12月20日)

○相手が任意に債務を履行しない場合には債権者が取りうる手段は三つ・・
・登記の移転などを基にした「現実的履行の強制」
・「契約の解除」
・以上のいずれを選択した場合でも損害があれば「損害賠償請求」

○現実的履行の強制を認める際に同時履行の抗弁権があれば
判決はまず原告に代金支払いを要求する「引換給付判決」になる
(大判明治44年12月11日)
→訴訟の上では相手方がひとたび履行の提供をしたからといって
当事者が同時履行の抗弁権の効果を全く受けられない訳ではない

○相手方の同時履行の抗弁権を消滅させることが解除の要件
→債権者が予め債務の受領を拒んでいる場合には「口答の提供」だけで
同時履行の抗弁権を消滅させることができる(493条但書前段)

○同時履行の抗弁権は取消権のように行使しなければ発生しない権利ではなく
要件が充たされている限り当然に認められるとされる=「存在効果説」

○存続上の牽連性の問題=「危険負担」・・・
・不能となった債務の債権者がリスクを負担するのが「債権者主義」
 →目的物が消滅しても支払い債務は残る
・不能となった債務の債務者がリスクを負担するのが「債務者主義」
 →目的物が消滅すれば支払い債務も消滅する
 
○債務者の責に帰すべき事由により債務の履行が不能になれば
その債務はもとの債務の目的物と等価値の金銭支払義務である損害賠償債務
=「填補賠償」に姿を変える(415条後段)
→危険負担の問題は生じない

○当事者無責の場合の危険負担・・・
・特定物に関する双務契約→牽連性なし(534条1項)=債権者主義
・それ以外の双務契約→牽連性あり(536条1項)=債務者主義

○危険負担における債権者主義は「危険は買主にあり(買主は危険を買う)」
というローマ法に拠っているが今日では合理的な説明がつけにくいため
二つの手段で不都合を回避・・・
・534条は任意規定なので債務者主義の特約をつける
・534条はいつから負担するかの期限は定めていないので移転登記
又は引渡がなされたとき(支配可能性の移転時)に危険が移転すると解釈する
→ただし債権者主義の不都合に対する判例の立場は明確ではない

○国際取引では危険負担の問題を含めて当事者が特約を置くのが慣行だが
その際に国際商業会議所が作成した「インコタームズ」と呼ばれる
定型取引条件をつけることが多い→FOB(free on board)や
CIF(cost insurance freight)などの記号で表される

○債務者主義が適用される場合に保険などで債務者が履行不能を原因とした
金銭や債務を獲得した時には債権者は引渡請求ができると考えられている
=「代償請求権」

○後発的不能が債権者の責に帰すべき事由によって生じた場合は
534条1項を適用して債権者主義として牽連性は否定される

☆709条で不法行為責任を追求する場合には相手の故意・過失を
原告が立証しなければならない(立証は難しい)
しかし債務不履行を理由に債務者に損害賠償を請求する場合には
過失に相当する帰責事由の立証責任は債務者側にある(抗弁事由)ので有利

○更新拒絶や解約申し入れ、解除に対しては「やむを得ない事由」を
要求する裁判例が多数出てきている→「契約関係継続義務」(継続性原理)
(資生堂東京販売事件控訴審判決:東京高判平成6年9月14日)

☆解除の要件・・・
1:債務不履行(履行遅滞・履行不能・不完全履行)があること
2:不履行が債務者の責に帰すべき事由によること
3:解除が541条の手続に従ってなされたこと
→1と3は債権者の立証責任

○当事者が複数いる場合の解除は全員に対してのみ可能(544条)
→「解除の不可分性」

○解除によって未履行の債務は消滅するが既履行の債務については
返還請求権が生じる(545条)→「原状回復義務」

☆「取消」は一応有効とはいえもともと瑕疵のある契約なので
意思表示をした本人を保護すべき要請が強い
一方「解除」は契約は始めから完全に有効なので
取引をした第三者を保護すべき要請が強い
→解除による対抗要件545条1項但書が詐欺に関する96条3項と違って
第三者に「善意」を要求していないのはこのため

<第5章 売買>
○売買は合意のみで成立する「諾成契約」(555条)

○「譲渡」という言葉は一般には売買と同義で用いられていることが多い

○解約手付(債務不履行が無くても任意の解除ができる旨の合意)・・・
・買主は手付金を放棄して契約を解除できる=「手付損」
・売主は手付金の倍額を払って契約を解除できる=「手付倍戻し」
→たとえ解約手付であっても履行の着手があったとされれば
解除権の行使は阻止されるとされている

○570条は契約法における最も重要な規定のひとつ
→瑕疵担保責任には法的性質をめぐって長い論争があり
民法学上最大の難問のひとつとされている

☆債務不履行責任は過失責任だが瑕疵担保責任は無過失責任とされている
→債務不履行の時効は一般の債権と同じ10年、
瑕疵担保の時効は除斥期間として1年

<賃貸借>
○民法における賃貸借は「対抗力」、「存続期間」、「譲渡・転貸」を中心に
借地借家法によって修正されている

○「一時使用のための借地権」には借25条の借地人保護規定が適用されない
→借地借家法は賃借人重視に傾いているが例外的に賃貸人の保護をしている
「借地人不在中の期限付建物賃貸借」(借38条)、
「取壊し予定建物の期限付賃貸借」(借39条1項)も同じ趣旨

☆敷金は担保の役割を果たすが契約存続中は賃料不払いがあっても
当然には充当されないのでたとえ十分な敷金が差し入れられていても
賃料不払いを理由とする契約解除が可能という判例がある
→賃貸借関係では賃借人の債務不履行があっても信頼関係を
破壊しない程度では解除できないが厳密には賃貸借契約上の
債務不履行といえなくても信頼関係が破壊されれば解除可能とする
=「信頼関係破壊理論(信頼関係の法理)」(最判昭和39年7月28日)

○賃借人が敷金返還を要求できるのは返還すべき額が確定する明渡時だけ
(判例)

○賃貸人が交代した場合には賃借人が支払った敷金は当然に
新賃貸人に引き継がれる(最判昭和44年7月17日)
→ただし賃貸借契約の終了後に家屋が譲渡された場合には
敷金は当然には新所有者に承継されない(最判昭和48年2月2日)

○賃借権が譲渡されて賃借人が交代した場合には特段の事情がない限り
敷金に関する権利義務関係は承継されないとされている
→敷金は敷金交付者の債務不履行を担保するために支払われるものだから
(最判昭和53年12月22日)

○賃貸人の中心的義務は賃借人に使用収益させることなので第三者が
賃借人の使用収益を妨害していればこれを排除する義務がある(601条)

○借地契約における増改築禁止特約が問題となることがあるが
借地上の建物は借地人の所有物で本来増改築は自由なので特約違反があっても
賃貸人がこの特約に基づいて解除権を行使するのは信義則上許されないとする
判例がある(最判昭和41年4月21日)
→借地人は地主と協議が進まない時には裁判所に条件の変更や
増改築の許可を求めることができる(借17上1項、2項)
また、この裁判は民訴の訴訟手続によらず非訟手続で行われる(借41条)

☆賃借人の中心義務は賃料支払義務(601条)なので税金の増減・地価の変動
などの経済変動、近傍の相場との比較から地代・家賃が不相当となると
当事者は地代・家賃の「増減額請求権」を取得して賃貸人・賃借人間で
合意が成立しなくても裁判所に地代の確定を求めることができる(借11条)
→調停前置主義で争われるこの権利は形成権なので遡及効がある
(値上げ時期を遅らせるための紛争引き延ばしを防ぐため)

○賃貸人の承諾なしに賃借権の譲渡も転貸もできず無断で行うと
解除原因となる(612条)が賃借人が特段の事情を立証できれば
解除の効力は認めないとする判例がある(最判昭和28年9月25日)

○不動産賃借権は登記がなければ第三者に対抗力がないが(605条)
登記申請は共同申請の原則なので(登記請求権がなければならない)
その不都合を修正するために借10条1項は借地権は登記がなくても
土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは
第三者に対する対抗力があると規定している

○本来は物権のみに認められているものだが特別法によって
賃借権が物権的効力を持つようになったことを理由にして(賃借権の物権化)
「賃借権に基づく妨害排除請求権を認める説」があり
不動産賃借権についてはこれを認めているとみられる判例がある
(最判昭和28年12月18日)

<第9章 役務型の契約>
☆受任者の中心的義務は契約で定められた委任事務を処理することだが
委任の本旨に従った善良な管理者の注意を持って
委任事務を処理する義務を負う=「善管注意義務」(644条)
また、付随的義務として「報告義務」(645条)、「受取物・果実の引渡義務」
(646条1項)、「取得権利の移転義務」(646条2項)がある

○委任契約の典型が医師や病院との医療契約であり
医師や病院が当然に善管注意義務を負う
→この義務違反が「医療過誤」
(ただし現在の医療過誤訴訟では不法行為構成で争われることも多い)

☆645条(委任終了時の顛末報告義務)がカルテや審査結果に関する
書類の閲覧・謄写を求める請求権の根拠となる

<第10章 その他の契約類型>
☆和解には和解された結果と反対の証拠が後に出てきてもその効力は覆らない
「和解の確定効」がある(696条)

○前提として争わなかった事実についての錯誤があった場合や
和解の結果給付することになったものに瑕疵があった場合には
和解の確定効は及ばないとされる

☆交通事故では被害者がそれ以上一切の請求権を放棄する旨の条項が
入っている和解契約があっても予想不可能性を理由にして
後遺症傷害の損害賠償請求ができる場合があることを認めた判決がある
(最判昭和43年3月15日)

<第11章 不法行為序説>
☆不法行為の機能は制裁もしくは報復の原理=目には目を・損害には賠償を
=に見えるが実際の機能としては被害者救済と将来の不法行為の抑止にある
→解釈でもこの二つの側面を考慮する場面が多い
(誰が損害を負担するのかという視点)

○損害保険では損害が保険によって填補されるとその限度で被害者の取得した
不法行為に基づく損害賠償請求権は保険会社に移る=「保険代位」(商622)

☆アメリカでは不法行為による損害を経済的コストと見なして
不法行為制度の抑止効果を経済学の市場モデルを使って説明する
「法と経済学」の分野が法学のすべての領域に及んでいる
→経済的価値によって不法行為の賠償額を求める「コースの定理」や
最も安く損害を回避できる者に賠償責任を負担すべきとする
カラブレイジの「最安値損害回避者理論」が有名
(ただしどちらも経済的価値に換算できない価値への対処や交渉費を
ゼロとしている点などの不法行為法制度の特徴的に重大な欠点がある)

○不法行為規定は709条~724条の16ヶ条だけで広い領域を規律するので
解釈の果たす役割が特に重要とされている

○賠償と填補の違い・・・
・「損害賠償」=違法行為(債務不履行や不法行為)によって
他人に損害を与えた者がそれを負担すること
・「損害填補」=適法な公権力の行使によって
損害が生じた場合に公平の見地から全体でその損害を負担すること
→ただし用法的には厳格ではなく二つの接近もある

<第12章 一般不法行為の要件>
☆不法行為での「過失」とは主観的過失概念ではなく「予見可能性」が
あったにも関わらず「結果回避義務」を怠ったこととされる
(大阪アルカリ事件:大正5年12月22日)

☆「ハンドの定式」
回避コスト(B)<損害発生の蓋然性(P)×被害者利益の重大さ(L)=過失あり
→ただし過失の一般的な判断基準はまだ確立されておらず
その試みの一つとしてこの定式を捉える必要がある
(1人の人間の費用と便益を比較する場合はこの費用便益分析が有効)

☆判例では医療事故での過失立証の困難さを補うために
極めて高度な予見義務・回避義務を課している
「東大梅毒輸血事件」(最判昭和36年2月16日)、
「スモン事件」(東京地判昭和53年8月3日)が有名
→結果回避義務の水準がその職業に従事する通常人を基準とするといっても
現にその職業に就いている人の平均という意味ではなく
たとえ現在行われていない水準でも規範的判断として
必要と判断されればそれが過失の判断基準となる

☆さらに「過失の推定」という手法によって原告の立証責任が
軽減される場合がある=「インフルエンザ予防接種事件」
(最判昭和51年9月30日)
→事実の証明とは違い「過失の証明」とは法的価値判断であるから
過失判断の対象となる事実の存否については経験則による推定が可能でも
過失判断そのものは現れた事実を前提とする裁判官の評価であって
経験則によって推定するものではないとされる
=公平の見地から過失判断の前提事実の一部について
立証責任を転換することが過失の推定

○過失責任に対する例外として様々な特別法があるが
709条は失火の場合には適用しないという一条だけの失火責任法がある

○不法行為による機会損失のことを「間接損害」と呼ぶ
(一般に債権者が企業であることが多いので「企業損害」とも呼ばれる)
→間接損害は故意の場合に限って不法行為が成立すべきだというのが通説

☆本来は適法で社会的に有益な権利行使であっても不法行為となりうる場合を
認めたとして有名なのが「信玄公旗掛松事件」(大判大正8年3月3日)
→適法行為による生活妨害型不法行為に対する特有の判断基準としては
「受忍限度論」を適用→これを基準にして積極的生活妨害だけでなく
消極的生活妨害(日照り遮断など)についても保護が広げられている

☆名誉毀損が不法行為になるためには「客観的な社会的評価」が
被侵害利益とならないといけないので主観的名誉感情の侵害は含まれない
(ただし709条の要件を充たせば別の不法行為として成立する)

○プライヴァシー侵害と名誉毀損の違い・・・
プライヴァシー侵害は社会的評価の低下を要件としない、
さらに公表された事実の真実性は不法行為成立を阻却しない

○理由無く(悪意または重過失)相手を訴えれば「不当訴訟」として
不法行為が成立する(不当な保全処分の場合も不法行為成立)

○損害とは所有権侵害という事実そのものではなく現実に生じた金銭的な
被害を意味しているとしているのが伝統的な損害概念=「差額説」
→ただし人身損害に関しては「損害事実説」が適当

○損害賠償の対象となるのは「財産的損害」と「精神的損害」
→人格的利益が侵害されてもそのことによって
経済的不利益が生じれば財産的損害になる

○財産的損害=「積極的損害」(直接のマイナス)と「消極的損害」(逸失利益)

○416条を相当因果関係と呼び代える必要はなくこの規定を不法行為に
類推適用することは妥当ではないため通説の「相当因果関係」
を「事実的因果関係」(あれなければこれなし)と損害賠償の範囲
(どこまで賠償させるべきか)に分けて考えるべき

☆因果関係の推定を認めた判例として・・・
「新潟水俣病事件」(新潟地判昭和46年9月29日)、
「ルンバール事件」(最判昭和50年10月24日)が有名
→因果関係の立証責任は被害者である原告にあるが立証は経済的、情報的に
困難なので因果関係を被害者の人体から企業の門前までたどれば
因果関係が推定されあとは企業の方で因果関係がないことを
証明する必要がある=「門前理論」
(事実的因果関係といっても自然科学的因果関係の証明ではなく
あくまで法的評価を経た因果関係ということ)

○「事実上の推定」(一応の推定)の学説では「蓋然性説」VS「確率的心証説」

○「責任能力」と「不法行為責任阻却事由」は被告が責任を
免れるために立証責任をおっている抗弁事由

☆責任無能力者が不法行為を行っても監督者がその義務を怠っていなければ
免責される→「中間責任」=監督者の責任は過失責任だが
過失の立証責任が転換されている(過失責任と無過失責任の中間)

○不法行為責任阻却事由(違法性阻却事由)
=正当防衛、緊急避難、被害者の承諾、正当(業務)行為、自力救済

<第13章 不法行為の効果>
☆損害賠償の目的はアリストテレスが挙げた正義の基本理念のひとつである
「矯正的正義」(平均的正義)なので損害賠償の内容をどう定めるかについては
一つの理論に従って論理的に導かれるよりも政策的な問題となる

☆不法行為にも416条が適用され賠償額算定の基準時の問題も
416条の論理を用いた判例として有名なのが
「富喜丸事件判決」(大連判大正15年5月22日)
→今日ではこの判決には批判が多い=不法行為制度の目的のひとつが
不法行為がなければあっただろう状態を回復することなので
基準時の原則は判例の不法行為時ではなく賠償を得る時とすべき

☆傷害の金銭的評価に関する裁判実務では・・・
・被害者が現実に費やした積極的損害
・逸失利益としての消極的損害
・慰謝料としての精神的損害
・・・を列挙する「個別損害項目積み上げ方式」を採用

☆死亡による逸失利益ではその人の生涯収入から生活費を控除したものを
算定するがこの逸失利益計算方法は人間を利益を生み出す
機械のように捉えることから批判も多い
→同じ事故で死亡した被害者も生前の収入、大人・子供、男女、
若者・老人の間で大きな格差が生まれる
→このため被害者の多数いる公害訴訟では「包括・一律請求方式」が
原告の団結を維持するために採用されることが多い

☆判例変更を含んでいると大法廷で審理される

☆財産的損害と非財産的損害との違いは算定基準があるかどうかだけの差

☆判例は過失相殺を行う際に考慮する被害者の過失相殺能力について
「事理弁済能力」があればよいとした(最大判昭和39年6月24日)
(11、12歳に基準をおく責任能力よりも低いく5、6歳でよいとされる)

☆たとえ被害者に事理弁済能力がなくても被害者側という一群のグループの
誰かに過失があれば過失相殺できるというのが「被害者側の過失の法理」
(最判昭和34年11月26日)
→最高裁が過失相殺の要件から責任能力を外した時点で判例は
被害者の過失ではなく行為態様を賠償額の判断において
斟酌するという方向に転換されたとみるべき

○過失相殺は弁論主義が適用されない上にその割合については
裁判官の裁量で決めいちいちその根拠を示す必要もない
(最判昭和34年11月26日)
→しかしその判断が合理性を欠いた場合は違法となる場合もある
(最判平成2年3月6日)

○過失割合が半々の交通事故で同乗していた当事者の妻への損害賠償について
夫の過失相殺を認めた判例(最判昭和51年3月25日)では
夫婦という特殊な関係ゆえに加害者が負うべき全額の連帯責任を
分割責任にしたという趣旨←「被害者側の過失」の隠れた機能

○損害の発生・拡大に寄与する被害者の肉体的・精神的要因
=「被害者の素因」には病的素因、加齢的素因、心因的素因がある

☆事前に「好意関係」のあった不法行為に対して過失相殺を認めた
「隣人訴訟」(津地判昭和58年2月25日)などは加害者はその帰責性の度合に
応じて賠償責任を負うという「帰責性の原理」規定が民法には無いので
過失相殺の法理が援用されていると考えられる

○「生命保険金」は損害賠償額の算定の際に「損益相殺」にならない
(払い込んだ保険料の対価的性質があり不法行為の原因とは関係ないため)

○「損害保険金」には商662条1項が定めている「保険代位」が適用
(被害者の重複填補を避けるための制度)

○「社会保障給付」・・・
・第三者行為災害の場合は労災保険法12条の4第1項が保険給付をした国に
保険代位と同じ趣旨の求償権を与えている
・使用者行為災害の場合は規定がないが判例では保険給付の限度額によって
使用者は民法による損害賠償責任を免れるとされている
(最判昭和52年10月25日)
→保険料を負担する使用者にとって労災保険が責任保険的な意味を
持っていることが重要な判断基準になっている

○労災保険給付と過失相殺が重なった場合どちらを先にするかでは
まず保険給付を控除してから過失相殺をする「控除後過失相殺説」を採用
(最判平成元年4月11日)→労災保険給付の社会保障的性格を強調

○不法行為によって直接の被害者以外の第三者に損害が発生すると
「広義の間接被害者」として彼らにも独立した損害賠償請求権が発生する

○一般原則よりも損害賠償が制限される間接被害者=「狭義の間接被害者」
の代表は企業損害を受けた企業やタレントなど

○民法が規定している不法行為の救済手段は損害賠償だけだが
判例は「差止請求」を認めている
→差止を命じなければ事後的な金銭賠償では回復できないほどの
損害が生じるか否かが「受忍限度」の中で判断される

○差止請求は物権的請求権としての構成には適用範囲に限界があり
人格権概念は明確性に欠けるとの批判があるので
これらの根拠を援用することが困難な事例では
不法行為に基づく差止を肯定すべきとされている

☆差止に故意・過失の「有責性は要件とならない」とされる

<第14章 特殊の不法行為>
○一般不法行為と特殊不法行為との差は「中間責任」の導入
(過失の立証責任を転換する形で過失責任原則を修正したもの)
→中間責任の特別法として自動車損害賠償保障法(自賠法)が有名

☆使用者責任(715条)の要件・・・
・使用関係の存在
・事業の執行に「付き」
・被用者の不法行為
・免責事由の不存在←立証責任転換
(戦後は判例上免責が認められたことはないので事実上の無過失責任)

○使用者責任における「取引行為的不法行為」(事業の執行に付き)で
重要になる「外形理論」の要件・・・
・加害行為が被用者の本来の職務と相当の関連性を有すること
・被用者が権限外の加害行為を行うことが
客観的に容易な状態に置かれていること

☆表見代理(110条)と使用者責任(715条)が重複する場合は一般的に
110条の方が715条より要件が厳しいものの効果が大きいが
両者の要件は近づけて解釈すべきだとされている
→ただし株券発行が無権限で行われたケースなど効果との関係で
110条の適用を認めるべきではない場合がある
(44条と54条との関係と同じ)

☆715条が問題となるケースで多いのは暴行と自動車事故であり
自動車事故の場合は「使用者の支配領域内の危険」に由来するかどうか
暴行の場合は「事業の執行行為との密接な関連性」があるかどうか
・・・が判断基準となる

☆使用者責任での判断基準・・・
・取引的不法行為→「外形理論」
・事実的不法行為→(危険物型)→「支配領域内の危険」
        →(暴行型)→「事業の執行行為との密接関連性」

○使用者責任の場合、使用者は一般不法行為の加害者とともに
「不真正連帯責任」を負う(いずれかが賠償金を支払えばその限りで免責)

☆自賠法は加害者側の責任を強化し無過失責任に近づけるとともに、
責任保険を強制して賠償のコストを保険によって分散させることで
被害者の実質的な救済を図ろうとしている
→このような手段は不可避的に損害をもたらす現代の危険な
活動についてしばしば用いられるスキーム
(このような立法では責任主体の特定をどうするかが導入する際に問題になる)

○無過失責任法での加害行為の無過失責任化は被害者救済の要請から
保険もしくはそれと同種の制度的手当が付随していて
結果的に加害者の負担の軽減となっていることが多い
→無過失責任とは不法行為責任から道徳的非難の要素を排除して
政策的に誰が保険をかけて損失分散を図るかを法定する意味合いを持っている
(自賠法はその典型)

○自賠法3条に定められた「運行共有者」とは危険責任の観点から
「運行支配があればよい」とされ広く責任が認められている
→判例では運行支配の有無が決定的な判断要素となる

○工作物責任(717条)で問題となる瑕疵の概念は570条でも出てくるが
570条では「品質・性能」が劣っていることに重点が置かれているのに対して
717条では「本来の安全性」を欠くことに重点が置かれている
(瑕疵の認定は比較的柔軟にされている)

○工作物占有者の責任は立証責任の転換された中間責任、
占有者が免責された場合に所有者が2次的責任を負う(この場合は無過失責任)

○PL法が定める欠陥の概念
=「製造上の欠陥」、「設計上の欠陥」、「警告上の欠陥」

○PL法の免責事由としてその時点における科学・技術の最高水準の知見でも
欠陥を認識できない場合は製造者に「開発危険の抗弁」がある
→親会社から指定された部品を担当した下請けメーカーなども
PL法は免責される場合がある

○複数の加害者がいてそのどちらかを確定できない場合は709条だけでは
損害賠償請求ができないため共同不法行為として719法が存在する
(不真正連帯責任)
→共同不法行為制度の意義は事実的因果関係の要件を緩和すること

<第15章 事務管理>
○「緊急事務管理」は悪意または重過失がない限り生じた損害について
賠償責任は負わない(698条)

○事務管理は他人のために事務を管理する意思が必要だが
「準事務管理」は自分自身のために他人の事務を管理する場合のこと

<第16章 不当利得法>
☆不当利得法は財産法の原則が機能不全を起こした場合の後始末を
する役割を担っているので「財産法のごみ処理場」、「実定法の裏街道」、
「法秩序の裏庭」などと言われたりする

○不当利得の代表=「給付利得」、「侵害利得」

○売買などのように財産の移転を正当化する法律関係に基づいて
財産移転が行われたが実はそのような法律関係が存在しなかった場合
=「表見的法律関係」が給付利得の典型
→この場合は危険負担や同時履行の抗弁権などについても
もとの契約や民法の規定の趣旨を反映させるのが当事者の公平に合致する

○不当利得(703条)の要件=受益、受益と損失の因果関係、損失、
法律上の原因がないこと(これがもっとも重要)

○侵害利得の類型の不当利得は「物権的請求権を補完する役割を果たす」
・物権的請求権=現物を返せという請求を基礎づける
・不当利得返還請求権=返還が不能となった時に
物の価値の返還請求を基礎づける

○受益と損失の因果関係は「社会観念上の因果関係があればよい」とされる
→あとの問題は法律上の原因で考えればよい

○給付利得については表見的法律関係が存在するが
侵害利得の場合は何ら具体的法律関係が存在しないのに権限のない人に
財貨が移転したということ自体が法律上原因がないとみなされる

○契約上の給付が相手方だけでなく第三者の利益になった場合に
給付を請求する権利=「転用物訴権」に関しては判例が統一されていないが
そもそも認めるべきではないという意見がある
(ブルドーザー事件:最判昭和45年7月16日)、(最判平成7年9月19日)

☆不当利得の要件を充たすと・・・
・善意の場合には「現存利益」の限度で(703条)
・悪意の場合は「利息を付して」返還することを義務づけている(704条)

○給付利得類型の典型は契約の無効・取消等だが表見的にせよ
法律関係が存在していた以上、不当利得法は誤って履行された
表見的法律関係の清算制度としての機能を果たす

☆自らの支配領域でリスクを負担するのが危険負担の本来の思想

○債務の存在しないことを知りながら債務の弁済として給付をした場合には
給付した物の返済を請求することはできない=「非債弁済」(705条)
=不当利得であっても返さなくてもよい特則
→ただし経済的・社会的圧力からやむを得ず弁済がなされた場合は
たとえ債務が存在しないことを知っていても本条は適用されない

○”clean hands”の原則を規定している708条が定める
不法の原因の典型は90条の公序良俗違反

○708条の適用をめぐって当事者双方が不法だった場合には
不法性を比較考量する→給付者の不法性が強い場合には708条本文によって
返還請求を否定するが受益者の不法性が強い場合には
708条但書を拡張解釈して返還請求を認めるべきとされている
(最判昭和29年8月31日)、(最判昭和44年9月26日)

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2000 6/1
法学、民法
まろまろヒット率5

内田貴 『民法1―総則・物権総論』 東京大学出版会 1999(第2版)

 5月26日(金)は僕の誕生日。
思えば去年の誕生日は夜遅く帰宅すると家族が既にバースディケーキを
ほとんど食べていて丁度僕が帰ってきた時にはその残骸をホームズ(雑種猫)が
食べているところだった、らぶナベ@あれは哀しいものを目撃した(^^;

さて、『民法1[第2版]~総則・物権総論~』内田貴著(東京大学出版会)。
いま出版されている民法の本の中では最高峰のものとして有名で
法学を始めた当初からいずれは読むことになるだろうと思っていた一冊。
読んでみると噂に聞いていた通り民法の基本から歴史的経緯、
そして社会と民法との関係がいま現在がどのようになっているかを
やわらかい表現を通して書いている。がちがちの法律書ではなく、
社会情勢の変化なども取り込んで広い視野で民法というものを紹介している。
論争に対する結論への論理的構成にも思わず納得してしまう説得力がある。
議論というものは突きつめてゆけば抽象論になっていってしまうものだが
そうした議論に対してそもそもの問題は何かに立ち戻って現実的な判断を下す
論理への姿勢には人間的な深みにも通じてとても感銘を受けた。
・・・こう書くとベタ誉めしているみたいだが一冊の分量がとにかく厚い!
さらにまだシリーズとして続編が続く!!(@@)
僕が読んだことのある分量が多いことで有名な『経営行動』(組織論)、
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(社会学)、
『競争の戦略』(戦略論)、『薔薇の名前』(哲学)などの各分野の名著よりも
ずっと厚い。学術書としては最長の読書本になるんじゃないだろうか?

とりあえずは以下、チェック&興味をもったところ・・・
<序章 民法への道案内>
○法解釈とは・・・
法律の解釈はちょうど何人もの人々が順番に小説を連作していくようなもの。
これまでに形成された法規範の体系と整合的でありつつ、しかも、
政治的・社会的な価値の点で優れた創造的解釈を目指さなくてはならない
→それは決して解釈者の自由な価値判断ではなく
価値によって拘束された創造だといえる

○すぐれた法解釈とは・・・
・第一に法の解釈には一貫性が要求される
 (一貫性とはすでに蓄積されている確立した法原理との整合性)
 →法の解釈は斬新的な改革の道具ではありえても革命の手段とはなりえない
・第二にある事例で提示された解釈論は同様な事例で
 先例として機能することが予定されている
 →解釈論はその射程に含まれる類似の事例においても
 妥当性を主張しうるものでなければならない
・第三に優れた解釈論はその背後に説得的な思想を持ち、
 正義・衡平の観点から支持を得られるものでなければならない
 →常識に合致した結論でなければならない

<第1章 民法総則>
○英米には大陸法的な民法という観念はない→比較法的には「コモンロー」

☆民法の大原則=「私的自治の原則」
=人は自らの約束に基づいてのみ拘束される
=市民社会においては人が事務を負うのは自らの意志でそれを望んだ時だけだ

☆民法とは市民社会における社会現象をことごとく権利・義務という
法的概念に還元して捉えようとする壮大な試みなのである
→そのため法的関係をモデルとして単純化したもの

○日本の民法はドイツ流の民法典だと考えられていたが
少なくとも半分はフランス法の影響を受けている

○現在通用している民法は明治民法の財産法の部分と
戦後改正された家族法の部分である

<第2章 契約の成立>
○契約の構成・・・
・「申込」=それをそのまま受け入れるという相手の意思表示(承諾)があれば
 契約を成立させるという意思表示のこと
・「承諾」=申込の内容をそのまま受け入れること
 →条件を付けたり変更を加えたりすると新たな申込となる

○電話を含む対話者間の契約以外の場合を「隔地者間の契約」
→民法は隔地者に対する意思表示については到達主義をとった
(申込そのものは何らの法律関係の変動も生じないからあえて発信主義をとって
申込者をわざわざ苦しめる実益が何もない=誰も得しないため)。
ただし承諾については526条1項で発信主義をとっているが
これは国際的な流れからも疑問視されている

○到達主義をとると意思表示をした当事者は到達の事実を証明しなくては
ならない不利があるので立証は意思表示の書面が受領権限のある者の
「勢力範囲内におかれること」で足りるとした

○契約をめぐる学説・・・
・意思主義=契約がなされるには表示に対応する意思がなければならない
・表示主義=たとえ意思がなくても表示と認められるものがあれば
 意思表示となる
→民法は両者の折衷的な立場をとっている

○「心理留保」(93条)は真意のない意思表示の相手方を保護する規定
ただし自然債務に関しては履行義務無し→「カフェー丸玉女給事件」
(大判昭和10年4月25日)

○「虚偽表示」(94条)での「第三者」とは当事者、一般承継人以外で
虚偽表示の結果権利者らしい外観を呈している者と利害関係を持つに至った者

☆94条2項の趣旨・・・
真の権利者が自分以外の者が権利者であるかのような外観を作り出した時は
それを信頼した第三者は保護されるべきであり自らその外観を作った権利者は
権利を失ってもしかたない=「権利外観法理」(表見法理)
権利外観法理そのものを一般的に定めた条文は存在しないので
94条2項を類推適用することによって原則の適応がなされている

○94条2項が適応される第三者には判例は善意のみを要件としている
→学説では善意かつ無過失を要件とするものが有力

○第三者の範囲について対立している相対的構成vs絶対的構成は
94条2項の趣旨との整合性から絶対的構成が妥当
(善意の第三者が現れれば所有権は絶対的に移転する)

○「対抗問題」=対抗要件で優先劣後を決める問題(二重譲渡など)

☆94条2項の類推適用はあくまで権利者本人に虚偽の外観を作出したに
等しい落ち度が必要で偽りの登記を単に消極的に放置していたなどでは
不十分で積極的に承認した程度の関与を必要とする

○動産には即時取得があるので94条2項は適応されない

☆動産の取引では占有に公信力があるのに不動産の取引では
登記に公信力がないのは動的安全重視か静的安全重視かの違いのため

○心理留保と虚偽表示は実際上区別が微妙な事案が多いが第三者との関係で
同じ結論を導けるならばそのどちらかを追求する必要は余りない

○「錯誤」(95条)・・・
心理留保や虚偽表示は表意者がその違いを知りながらも意思表示をしている
のに対して錯誤は表意者がその食い違いに気づいていないので
その分表意者保護をする必要性が大きい

○錯誤で意思表示が無効となる要件・・・
1:法律行為の要素に錯誤があること
2:表意者に重大な過失のないこと
→錯誤には意思の決缺という議論をめぐって学説が対立してたが
個々の事例で判断してゆくべき
(情報不足や不注意などから不本意な意思表示をすることが錯誤)

○95条の目的が表意者の保護にあるため原則として表意者のみが
無効を主張できる=「取消的無効」
ただし・・・
1:債権保全の必要性
2:表意者が意思表示の瑕疵を認めているという要件
・・・があれば第三者からの無効主張も認められる

○当事者双方とも錯誤に陥っている「共通錯誤」には95条但書の適応はない

○「詐欺」(96条)の注意点・・・
1:欺罔行為が取引上要求される信義に反するものであることが必要
2:詐欺となる欺罔行為は積極的な作為に限らず沈黙も詐欺となる

○第三者の詐欺(欺罔行為による保証契約など)は相手方が
詐欺の事実を知っていることを要件に取消を認められている(96条2項)
→ただし善意の第三者には対抗できない(96条3項)

☆詐欺による第三者は取消前は96条3項で保護され、
取消後は94条2項の類推適応で保護される

○先例として拘束力が認められる判断=「レイシオ・デシデンダイ」

○「強迫」(96条)の要件は畏怖させる目的や手段が正当でないこと

<第3章 契約の主体>
○「権利能力」=司法上の権利義務の主体となる資格

☆改正された「成年後見人制度」に対しての意見・・・
民法がかかわるのはあくまで自己の財産を有する者の取引行為であるから
介護を要する無産の高齢者や障害者に対しては何らかかわりない
・・・これは改正案の限界ではなく民法の限界であり高齢者や知的障害者の
福祉政策に関して民法に過大な幻想を持つべきでない

○行為無能力による取消には第三者保護の規定がないが権利外観法理から
取消後の第三者との関係は94条2項の類推適用による保護が可能

☆人について民法が置いている規定は権利能力・行為能力のみ

☆民法の想定している「人」=「平等な権利能力を持ち、自らの意志に
基づいて、自由かつ合理的に行動できる、財産のある人」
→近代の法思想における典型的な人間像だったが様々な特別法で
想定されているのは「独自の人格を持った、弱く、必ずしも合理的ではない、
生身の人」であり伝統的な民法の人間像は再検討を迫られている

<第4章 代理>
○代理の種類・・・
「法定代理」=私的自治の補充を目的とする代理
「任意代理」=私的自治の範囲の拡張としての代理

○代理権の範囲が定められていない代理人がなしうる行為
=「管理行為」(103条)

○債務の履行に付いては自己契約と双方代理が許される108条の目的は
形式的な禁止ではなく実質的な「利益相反行為」を禁じている

○「代理権の濫用」=代理権の範囲内でしかも108条にも接触せずに
代理人が代理行為を行ったが実は自己あるいは第三者の私腹をこやすための
行為で本人がそれによって被害を被る場合→直接の規定はないが解釈的適用

☆妥当と思われる解決を提案するだけなら誰でもできるが民法の規範体系と
整合的な法律構成を与えることができてはじめて、当初の直観的判断は
法的判断としての正当性を主張できる。
そしてそこに法解釈者の専門能力が発揮される

☆「無権代理人の責任追及」(117条)の要件は無権代理人の側で
立証することによって責任を免れることができるという要件(消極的要件)
→相手方としては無権代理であったことだけを主張すればそれでよい

○無権代理人が本人を相続した場合さらに共同相続人がいる場合は
判例は資格併存説→信義則説→追認不可分説に立った(最判平成5年1月21日)

○本人が無権代理人を相続した場合は117条による無権代理人の債務も
相続されることを認めた判例がある(最判昭和48年7月3日)
→ただしこの事案は本来の債務が金銭の支払いであったことに注意
(履行請求と損害賠償請求は実質的に同じ)
不動産の場合は無権代理人の債務拒否は認められるとされている
(相続という偶然の事情によって本人が不当に不利に
扱われるべきではないから)

○表見代理の主張は無権代理人と取引をした相手方のとりうる最強の手段で
権利外観法理を根拠とする

☆109条は代理権など全くないのにあるかのような外観があった場合の規定
110条は一応代理権はあるがそれを超えたことをした場合の規定
どちらも目指すところは同じ権利外観法理だが本人が責任を負う根拠が違う
109条は自ら外観を作りだした者はその責任を負うべし(エストッペル)
110条はそんな信用できない者を代理人に選んだ本人がリスクを負担せよ

○権利外観法理を適応するには第三者の信頼のほかに
真の権利者側の帰責の要素が必要

<第5章 法人>
○財団を設立する行為を「寄附行為」

○公益法人の登記は民法上は対抗要件(45条)、
商法上は「成立要件」(商法57条)

○法人か否かの差は団体名義で不動産の登記ができるかどうかが
事実上唯一の違い

○法人制度の重要な意義は法人の財産を構成員の財産と区別して
構成員の債権者が追求できない独立の財産を作ることにある
(法人と取引する相手への取引安全のため)

○日本の民法の規定の多くはフランス法とドイツ法に由来しているが
起草者の関係からいくつかの重要な規定が飛び飛びに
イギリス法に由来している→43条と416条が有名
・43条の基になったイギリス法の制度は判例法によって生み出された原則で
越権行為(ultra vires)の理論と呼ばれているが解釈上も矛盾する
この条文の位置は問題があるといわれている

☆44条1項(法人の不法行為責任)と715条(使用者責任)の根拠は同じ
「報償責任」=使用者を通じて利益を得ているのだから
その過程で生じた不法行為については責任を負うべき

○44条と110条の民訴上での大きな違いは「過失相殺」があるかどうか
→裁判所が110条を認定するのに慎重な理由の一つだろうとされている

<第6章 契約の有効性>
○契約の有効性に関しては・・・
・一般的要件が何か
・要件が充たされなかった場合の効果は何か
・・・という二つの視点から見る必要がある
→一般的有効要件は確実性、実現可能性、適法性、社会的妥当性からなる

○代理権のない行為の効果が本人に帰属しないことは単なる無効とは違うので
有効要件と区別して「効果帰属要件」と呼ぶことがある

○不能の違い・・・
「原始的不能」=契約成立の時点で給付が不可能
「後発的不能」=契約成立後に給付が不可能→契約は無効とはならない

○「片面的強行規定」=一方当事者に不利な特約を禁ずる強行規定
→借地借家法9条など

○取締規定の分類・・・
・事実行為を取り締まるもの(道路交通法など)
・法律行為を取り締まるもの(道路運送法、食品衛生法など)

○私法上の契約の効力を無効にする取締規定を「効力規定」

○「脱法行為」=強行規定に直接には接触せずに他の手段を使って
その禁じている内容を実質的に達成しようとすること

☆「信義則」(1条2項)、「権利濫用」(1条3項)、「公序良俗」(90条)のように
解釈の余地の大きい漠然とした要件を持った規定のことを「一般条項」
→個別的な法規制がなされるまでの橋渡し的な役割を担うことが多い
(現在、民法に規定されていない新たな規範が
信義則を通して次々に生み出されている)

○公序良俗に関しては契約内容ではなく「動機の違法」が問題となる

☆無効には期間制限がない←取消的無効と取消との決定的な違い

<第7章 契約の効力発生時期>
○「停止条件付」の契約は条件成就の時から効力を生じる(127条1項)
「解除条件付」の契約は条件成就の時から効力を失う(127条2項)

○日週月を単位とする時は「初日不算入の原則」(140条)

<第10章 物権法序説>
○物権は当事者が合意しても創設することはできない=「物権法定主義」

<第13章 所有権の効力>
○「物権的請求権」
=返還請求権(rei vindicatio)、妨害排除請求権、妨害予防請求権

○物権的請求権には「行為請求権」的な要素と「忍容請求権」的な要素がある

○所有権に基づく返還請求と債権に基づく返還請求が同時に存在する時に
この二つがどういう関係にあるかは請求権競合説vs法条競合説が長く論争。
しかし法律上の地位として二つあるだけでどの権利かではなくそもそも
返還請求できる地位があるかどうかを問題にすべきという第三の立場が有力

○占有権の効力・・・
自分に「本権」があると誤信した(善意)占有者はその果実を
得ることができる(189条1項)が善意の占有者でも本権の訴えに敗訴した時は
起訴の時点から悪意とされる(189条2項)
また、たとえ善意であっても強暴か隠秘による占有は悪意とされる

○所有の意思のない占有を「他主占有」、意思のあるものを「自主占有」

<第14章 所有権の取得>
○取得時効の要件を立証するのは難しいが無過失以外の要件は
全て推定されていてその推定を覆そうとする相手方に立証責任がある
(186条1項)→占有取得の権原と他主占有事情が覆すべき事実

○日本の附合法の最大の特徴は建物が土地に附合しない点
→ヨーロッパではローマ法から地上物は土地に従うのが原則

<第15章 共同所有関係>
○物権法上の共有の最大の特徴「分割請求の自由」(256条)と
「持分権の自由譲渡」(明文上の規定なし)

<第16章 占有権>
○占有訴権と物権的請求権の関係は民事訴訟法にまたがる難問だが
最初の侵奪から1年以内の自力救済を認める判例:小丸船事件がある
(大判大正13年5月22日)

<第17章 物権変動>
○所有権はいつ移動するかについては所有権という概念を一つの物として
実体化するのではなく様々な機能の束を所有権と呼んでいるにすぎないと
考えて所有権の移転時期も個々の権能ごとに考える説がある
→所有権という魔術的な概念に振り回されない視点を獲得することが重要

○登記には公信力が無いという原則を貫くには不都合が多いので
実体的権利関係に合致した場合や実体的権利関係との齟齬が小さい時には
対抗力を認めることが多い

○仮登記は対抗要件にはならないが「順位保全の効力」がある

○相続による不動産の持分の取得は177条の適用される物権変動ではない
とする判例がある(最判昭和38年2月22日)

○両立しえない物権相互間で優劣を争う関係(食うか食われるか)=
「第三者」の範囲については制限説が通説で特に登記無しで対抗できる相手
(第三者でない者)に関しては「背信的悪意者排除の法理」が重要
(最判昭和43年8月2日)
→ただし背信的悪意者からの譲渡人は再び第三者となり対抗関係に立つ

☆動産の物権変動の対抗要件は原則として「引渡」だが(178条)
占有物が盗品・遺失物の場合は即時取得の成立が盗難・遺失の時から
2年間猶予される(193条)→ただし占有者が善意で購入した場合は
占有者が支払った代金を弁償しなければ取り返せない特則がある(194条)

☆不動産には登記に公信力がない点を94条2項の類推適用によって
取引安全を補うが、真の権利者に帰責事由が無い場合は第三者保護に関する
特別な規定がない限り外観除去が不可能な本人の犠牲で
第三者を保護することはできない
→公信力を正面から認めることと94条2項の類推適用との決定的な差
(真の権利者の帰責の程度の差)

<第18章 物権・債権・私権総括>
○物権・債権の区別は分類に囚われずに法律関係に適合した
処理を考えてゆくべき→「賃借権の物権化」など

○物権と債権の違い・・・
物権=誰にも主張できる「絶対性」、一物一権主義の「排他性」
債権=人によって主張できるかどうかが決まる「相対性」
→同じ物の上に立つときは物権がが優先する=「物権の優先的効力」

○権利濫用が適用された有名な判例宇奈月温泉事件(大判昭和10年10月5日)

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2000 5/18
法学、民法
まろまろヒット率5

竹原建 『行政書士最短最速合格法』 日本実業出版社 1999

最初は灼熱の熱帯雨林(マレーシア)、今回は極寒の草原(内モンゴル)と
ふと思い返せば世間一般で言うところの海外旅行というものを
いまだに体験したことが無いことに気がついた、
らぶナベ@それもすべて公務なのでまるで小須田部長のようだ・・・
「がんばれ~!まけんなー!ちからのかぎりいきてやれ~!!、エミリー!」

さて、『行政書士最短最速合格法』竹原建著(日本実業出版社)1999年初版。
学生のうちに一つくらいは公的な資格を取っておこうかなと思い立ち、
どうせ取るなら進路に近い行政書士の資格が良いだろうと購入した一冊。
試験がどのような感じなのかを知るには実際に試験問題に当たるのが
一番手っ取り早いので全科目の問題が載っているこの本を選んでみたが
今年度から試験の半分を占める記述問題が完全に変わることが購入してから
発表されたのでその点に関しては半分が無駄になってしまった。
(実際に細かいところは試験日まで不明のままらしい)
ただ、変更も作文的なものから実務に照らした法律問題の記述に
なるみたいなので僕としてはそれほど気にすることは無い上に、
この本自体参考書としてはコンパクトなのにちゃんと問題も載っていて
なおかつそれぞれの科目の参考書&予備校紹介まで書いてあるという
なかなかにかゆいところに手が届く一冊なので良しとしよう。
また、著者が「勉強は3カ月あれば大丈夫」と試験の簡単さを
強調していたのを国家資格の割にはずいぶん準備期間が短いなと思ったが
そういえば以前、他の人から2週間で良いと聞いたことがあるを思い出した。
週間モーニングで連載している『カバチタレ!』の資格が
それくらいの準備で得られるんなら挑戦しても良いかな?
興味ある人は連絡下さい、まったり勉強会開きましょう。
そして資格を取ったあかつきには言ってみよう・・・
「法律家ちゅうのはな、御上公認のヤクザなんや!」と(^_^)

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2000 3/9
法学一般、資格関係
まろまろヒット率3

藤沢周平 『漆の実のみのる国』 文藝春秋 上下巻 2000

何だか妙に静かな時期に静かな本を読んだ、らぶナベっす。

『漆の実のみのる国』藤沢周平著(文春文庫)上下巻2000年初版。
いまさら書くまでもなく藤沢周平の遺作で彼の故郷、
米沢を代表する人物である上杉鷹山と取り上げた小説。
ハード版が出版された時からずっと読みたいと思っていたが
ようやく文庫版が出たのでさっそく買って読んでみた。

上杉鷹山と言えばかつてジョン・F・ケネディが「最も尊敬する日本人は?」
と聞かれたときに躊躇無く彼の名前をあげたというくらい国内よりも
海外での評価が高いという点や「なせばなる。なさねばならぬ何事も・・・」
という彼の訓示などが注目されている人物。
(もっともこれは彼のオリジナルじゃないんだけど
武田信玄の「風林火山」と同じようにパクリの方が有名になった代表例)
彼に関しては小大名からの養子という不安定な立場、
保守的な反発を示す藩上層部、無気力感がただよう農民、
返済不能とされた財政赤字、奥さんは身体障害者という
絵に描いたような絶望的状況下で粘り強く藩政改革をおこなって
最終的に成功させたというその華々しい経歴が注目されることが多い。
4年ほど前に僕が読んだ堂門冬二の『小説 上杉鷹山』(学陽書房)は
困難に立ち向かった偉大な改革者としての上杉鷹山を英雄的に描いていた。
当時は確かにちょっと持ち上げすぎだなという感想を持ったものだ。

この『漆の実のみのる国』はそういう意味では逆に読んでいてもどかしい。
改革が軌道に乗ったと思えば頓挫し成果らしい成果はほとんどあがらない。
そのあまりにも長い道のりに疲れて去ってゆく人々や
気持ちがゆれる鷹山の姿を中心にえがいている。
消えそうでそれでも燃えそうな遠くにある光明をつかもうとする
長い長い月日を小説にしているという感じだ。

この本のタイトルになったように上杉鷹山の改革の代表としては
今でも米沢の名産になっている漆塗りが有名だがその漆の木の殖産でさえ
当初は「15万石を実質30万石にする起死回生の政策」という情熱で
施行したものの実際は大した成果があがらず
藩財政の足を引っ張ることになったものとして書かれている。

この小説の最後の下りでは上杉鷹山が若い頃漆の実は大きくて
実がみのる時期には風に揺られてカラカラと音がなるものだろうと思ってが
現物を見てみると実際には米粒ほどの大きさしかなくて驚いたことを
思い出して微笑する場面で終わっている。
本当は文芸春秋の連載ではあと二回分残っていたらしいんだが
藤沢周平が「これで良い」と言ったのでこの小説はここで終わっている。

何かに追いかけられる感覚を受けて走り出したい気分の中、
静かにゆっくりと歩いた人々の物語というべきだろうか。

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2000 2/28
小説、歴史
まろまろヒット率4

三井誠・酒巻匡 『入門刑事手続法』 有斐閣 1998(改訂)

この本で六法+法学総論は全てにそれぞれ3冊づつ読み終えた(総数21冊)、
らぶナベ@ほぼゼロの状態で11月から始めた法学の勉強も3カ月半で
「どんな状況でもどんな本でもとりあえず3冊読めばその分野は理解できる」
という僕の勝手な読書理論(書籍三段撃ち)を完成させることができたので
法学も僕にとっての「武器」と言える域まで達成したというところか。
伝説によると同じようなコンセプトで鉄砲の「三段撃ち」を使って
長篠の戦いに臨んだとされる信長に妙なしんぱしぃを感じてしまう(^_^)

さて、武器としての法学の正式なスタートを切ることになった
その記念すべき1冊の感想をば・・・
『入門刑事手続法[改訂版]』三井誠・酒巻匡著(有斐閣)1998年改訂初版。
前に読んだ『伊藤真の刑事訴訟法入門』伊藤真著(日本評論社)1998年初版で
著者が薦めていたので刑事訴訟法の3冊目としては最適かなと思って購入。
内容の方は刑事訴訟法の手続法としての面に特化していて
全体の流れを追うことを重視して書かれているので読みやすい。
理論だけでなく統計なども使って現実の刑事裁判の実体を紹介してくれたり
最終章では実際に使われる書類を通して刑事手続の流れを
紹介してくれているというなかなかに良い本。

以下、チェック&まとめ・・・
○実際の刑事訴訟法の出だしは189条から始まる

○刑事訴訟法が実現しようとする実体法の類型・・・
「刑法」、「特別刑法」(覚せい剤取締法など)、「行政刑法」(道交法など)

<起訴前手続>
[捜査とは]
○捜査を規律する法律・・・
「刑事訴訟法」、「警察法」(組織法)、「警察官職務執行法」(権限法)

○「捜査機関」=司法警察職員、検察官、検察事務官の3種の総称

○刑事訴訟法上の司法警察職員とは原則として巡査部長以上を指す
(司法巡査は巡査が当たる)

○警察において発生を認知した「刑法犯」は窃盗犯(刑235条)と
業務上過失致死傷事犯(刑211条)が全体の約9割を占めている

○「検挙」=警察で事件を検察官に送致・送付するか
もしくは微罪処分に付することを指す

○刑事訴訟法が定める捜査のきっかけは6つ・・・
・「現行犯」(212条以下)
・「変死体の検視」(229条1項)
・「告訴」(230条以下)と「告発」(239条以下)
 →意思を表示する主体によって違う
・「親告罪」(告訴がなければ無効)
 →告訴権者が犯人が誰か知った日から6カ月を経過すると無効
・「請求」→「外国国章損壊罪」(刑92)など
・「自首」(245条)→実体法の刑法では42条1項

○検察官が指定した一定の軽微な事件は不送致→「微罪処分」(246条但書)

○検察官は管轄区域の司法警察職員に対して
捜査に対して必要な「一般的指示」(193条1項)、
「一般的指揮」(193条2項)することが可能
また、検察官が第一次的な捜査機関として捜査をおこなう時には
特定の司法警察職員を「具体的指揮」(193条3項)することが可能

[捜査の方法・実行]
○197条1項の「本文は任意捜査」、「但書は強制捜査」に関する規定

○事実に誤りがない時でも被疑者は「供述調書」の署名押印を拒否できる
(198条5項)

○事情聴取はマスコミ用語で正式には「参考人取調べ」(223条1項)

[被疑者の逮捕]
○被疑者の既済人員のうち実際に逮捕されているのは約2割
→8割は不逮捕・在宅事件として身柄拘束なしで捜査が続けられる

○逮捕状を請求できるのは検察官だけでなく警部以上の司法警察職員
=「特定司法警察職員」(199条2項)でも可能

○「逮捕状請求」(規139条)=「請求書」&「疎明資料」の提出

○「逮捕状の緊急執行」(201条)と「緊急逮捕」(210条)との違いは
逮捕する時に令状が発布されているかどうかの差

○「現行犯逮捕」(212条1項)も「準現行犯逮捕」(212条2項)も
その判断は微妙で憲33条(令状主義)との対立が争点になる場合も多い

○逮捕後の被疑者の弁解は「弁解録取書」に既済されるが
取調べとは別とされ「供述拒否権の告知」(198条2項)は
実務上は不要だと考えられている
→「身柄送致」(203条)された被疑者の取調べには告知が必要

☆逮捕に関する特別の不服申立ての規定が無いなど
逮捕された被疑者の地位が問題となっている

[勾留]
○被疑者勾留の要件=60条1項で限定列挙

○検察官による「勾留請求書」(147条)→裁判官による「勾留質問」(61条)
→「勾留状」(207条) の発布へ

○「代用監獄」が原則化している勾留場所について議論がある

○勾留期間は勾留の請求をした日から起算する(208条1項)

○裁判官は適当と判断した時は職権によって
勾留の執行を停止することができる(95条)
→ただし検察官の請求によって「勾留の執行停止の取消」(96条1項)も可能

○起訴前勾留=「被疑者勾留」、起訴後勾留=「被告人勾留」

[捜索・差押え・検証]
○証拠に必要な血液や胃液などの採取には本人の同意が得られなければ
「鑑定処分許可状」をもって強制的に採取可能

○令状の執行には時刻の制限がある(222条4項)ので
特別の旨の記載がなければ日没後から日出前は捜査できない

○公務員や国会議員等の職務上の秘密、医師や弁護士等の業務上の秘密には
一定の範囲と条件のもとで押収を拒絶する権利が認められている
(103条~105条)

○逮捕にともなう逮捕現場の捜索・差押え・検証は令状無しで可能(220条)
→現行犯逮捕と共に「令状主義」(憲35条)の例外
 ただし緊急逮捕に対応するような緊急捜索や緊急差押えの制度は無い

[その他の強制処分]
○捜査機関が特別の学識経験を持つ第三者に
報告を求める「鑑定嘱託」(223条以下)には・・・
「鑑定留置」(224条)と「鑑定の必要な処分の許可」(225条)がある
→対象者が拒んでも強制的に鑑定としての身体検査ができるかは争いがある

[被疑者の防御]
○被疑者の弁護人選定権は被疑者だけでなく法定代理人、保佐人、
配偶者、直系の親族および兄弟姉妹にもある(30条2項)
→ただし実務上は逮捕についての通知義務はないとされる

○選任できる弁護人の数は各被疑者に対して3人以内に限られる(35条)
→ただし実務上は請求があれば許可される

☆接見交通権を制限する接見制限(39条3項)に不服があれば
裁判所に対して「接見指定処分に対する準抗告」ができる(430条)

○裁判官は接見・授受の禁止に加えて書類などの検閲や差押えができる(81条)

☆被疑者と弁護人でも押収、捜索、検証、証人の尋問や鑑定の処分などの
強制処分を裁判官に対して請求することができる=「証拠保全手続」(179条)

○捜索や検証に対しては法文上、準抗告の規定はない

<公訴提起>
[公訴提起の手続]
○検察官による事件処理・・・
・「終局処分」→起訴処分、不起訴処分
・「中間処分」→中止処分、移送処分

○検察官による不起訴処分の種類・・・
・起訴すべき条件が欠けているとき
・法律上、犯罪が成立しないとき
・証拠上、犯罪事実を認定できないとき
・刑の免除にあたるとき
・起訴を猶予すべきとき(起訴便宜主義)

☆不起訴処分は裁判所の判決とは違って「確定力はない」ので
不起訴処分を取り消して捜査を再開することが可能=「再起」

○強制力を持たないため検察審査会による不起訴不当の議決後に
検察官が実際に起訴の手続をしたのは6%しかない

○検察官に対する「付審判手続」(262条)は起訴便宜主義の例外

○管轄=「事物管轄」、「土地管轄」

○移送・送致・送付の違い・・・
・「移送」→事件などを同種類の機関相互間で送る(19条)
・「送致」→事件などを異種類の機関相互間で送る(206条)
・「送付」→書類や証拠物のみを送る(242条)

[公訴提起の方法]
○起訴状の訴因が不明確な時は裁判官は検察官に対して「釈明」を求め、
これに応じない時に初めて手続を打ち切るとされる(208条1項)

☆起訴後は原則として公訴提起された裁判所が
被告人の身柄処置についての責任を持つ(規164条)

○「起訴状一本主義」(憲37条1項、256条6項)により
起訴状に書く「余事記載」には被告人の経歴や性格、
前科などは構成要件要素と不可分な場合にしか記載不可

○刑事訴訟法での時効(=「公訴時効」)期間は法定刑を基準にする(252条)
→犯罪行為(生じた結果も含む)が終わった時から起算する(253条)

○裁判官がその事件の審理に適切でない時・・・
「除斥」(20条)、「忌避」(21条~25条)、「回避」(規13条)
→除斥か忌避理由のある裁判官が判決に関与すれば判決破棄の事由に(377条)

<公判手続>
[公判のための準備活動]
○第一回公判期日前の準備=「事前準備」、第二回以後=「期日間準備」

☆「証拠開示」に関しては裁判官の「訴訟指揮権」(294条)を根拠に
検察官の所有する証拠を弁護人に閲覧させるように命じることが可能
(最決昭和44・4・25)

○被告人が召喚に応じないときは裁判所は強制的に「勾引」ができる(58条)

○請求があれば原則的に保釈できるのが建前=「権利保釈」(89条)だが
実際上は裁判所の裁量に任されている=「裁量保釈」(90条)

[公判期日における手続]
○重大事件の場合は弁護人の出頭が開廷の要件=「必要的弁護事件」(289条)

○「黙秘権」(憲38条1項)の範囲が被告人を特定する
事項(氏名や住所)まで及ぶのかどうかには争いがある

○検察官の冒頭陳述は義務(296条)だが被告人または弁護人の冒頭陳述は任意
→事件が複雑で争点が多岐にわたるような場合には行うことが多い

○証拠をめぐる攻防の流れは「甲号証」(構成要件など)から
「乙号証」(前科や身上など)へ争点が移行していく

○「証人尋問」の流れは検察側が提出した参考人の供述調書を
被告人が証拠とすることに同意しなかった(=「不同意書面」)場合に
目撃者などの第三者を証人として取調べ請求するという経緯をたどる(326条)

☆不当なものでない限り「誘導尋問」は許される(規199の3条3項)

○憲38条1項の理念を刑事訴訟法上で実現させたのが「被告人質問」(311条)
→ただし被告人が質問に答えて任意に話せば有利不利を問わず証拠になる

☆「証拠調べに対する異議申立て」は法令に反している時だけでなく
その行為が相当でないという理由でも可能(規205条但書)

○裁判長の処分に対しても意義申立てが可能(309条1項)

☆証拠調べが終わると検察官による「論告求刑」(293条1項)→
弁護人による「最終弁論」→被告人による「最終陳述」(規211条)を行って
判決を待つ=最後の発言権は被告人にある

○「判決の宣告」(342条)は判決書の草稿にもとずいておこなわれる
→判決書の原本で判決が言い渡される民事訴訟法とは違う(民訴252条)

☆「訴因の変更」(312条)の関して判例は・・・
「具体的事実同一性説」と「択一関係説」を採用
→新旧の両訴因が事実として併存できない関係にある場合と
 併存できても両訴因が罪数論上一罪(科刑上一罪含む)を構成する場合に
 広義の公訴事実の同一性が認められて訴因が変更できる

○「訴因変更の必要性」では具体的事実に注目する「事実記載説」が通説
→被告人が防御する上で実質的な不利益をもたらすおそれのあるような
 事実のずれであるかどうかが判断基準になる

○訴因変更は裁判所による「訴因変更命令」(312条2項)でも可能
→裁判所が訴因変更を促すなどの措置を行わないで判決を下すと
 審理を尽くさなかった違法があるとされる

☆公判期日の訴訟手続は裁判所書記官が作成する
「公判調書」に記録される(48条)
→上訴審の判断資料は原審の公判調書に限定されていて
 他の資料では覆すことができないため重要(52条)

○裁判の「公開主義」(憲82条1項、憲37条1項)の範囲は
傍聴人がメモをとることまで認められる(判例:レペタ訴訟)

☆「釈明」=訴訟関係人が裁判官の発問に応じて
法律上・事実上の点を明確にすること

○「アレインメント(arraignment)制度」・・・
罪状認否手続(arraignment)で被告人が有罪の答弁をおこなえば
証拠調べ手続を飛ばして公判をする英米法上の制度
→当事者間の司法取引(plea bargainning)が可能になるが日本では
採用されていないため有罪を認めていても事実が公判審理に付される

<証拠法>
○情況証拠はマスコミ用語で正式には「間接証拠」

☆「無罪の推定」原則は構成要件事実だけでなく
違法性阻却事由や責任阻却事由についても適用される
→真偽不明の場合は無罪の結論

☆心証のレベル・・・
「疎明」=一応確からしい程度
   ↓
「証拠の優越」=肯定証拠が否定証拠を上回る程度
   ↓
「厳格な証明」=合理的な疑いを生じる余地がない程度
→証拠裁判主義(317条)で求められるレベル

[伝聞法則]
○「伝聞法則」(320条)=「供述書」(供述者自ら作成したもの)や
「供述録取書」(第三者の供述を録取したもの)は原則的に証拠にはならない

☆伝聞法則を考える際には常にその証拠によって立証しようとする事実
=「要証事実」は何かを中心に考える

☆伝聞法則の例外(321条以下)・・・
・被告人以外が関係した供述調書や供述録取書でも署名押印があるものは
 「再現不能」や「供述の自己矛盾」などを理由にして証拠能力が認められる
・検察官の目前での供述を録取した書面=「検察官面前調書」(検面調書)
 =「二号書面」でも321条1項の2の条件下で証拠能力が認められる
→これに関する証拠能力の有無が公判廷での争点となることも多い
(「調書裁判」化しているとの批判あり)

○「信用性の情況的保障」(特信性)=外部的状況から見て供述が行われた
信用性が担保されているだけでその供述の内容自体の信用性とは別

○証拠とすることができる書面や供述であっても任意性の
調査をした後でなければ証拠とすることができない(325条)

○伝聞法則で排除される書面や供述でも両当事者が
同意すれば証拠とすることが可能=「同意書面」(326条)
→同意は伝聞法則の例外のトップバッター、同意の実質は反対尋問権の放棄

○「承認」=自分に不利な事実を認める供述
 「自白」=犯罪事実の主要部分を認める供述
 →違いは補強証拠を必要とするかどうかの差(319条2項)

[自白]
☆「自白法則」は伝聞法則と違って任意性の無い自白調書に同意したとしても
証拠として使えない上に自由な証明の証拠とすることもできない
(憲38条2項、319条)
→その根拠は「虚偽排除説」VS「人権擁護説」VS「違法排除説」が対立

○自白法則が争われた事例・・・
両手錠をかけられたままの取調べは任意の供述ではない(最判昭和38・9・13)
や起訴猶予を期待した自白には任意性に疑いがある(最判昭和41・7・1)、
切り違え尋問による自白は任意性が無い(最大判昭和45・11・25)
・・・などの判例が有名

☆自白以外に証拠がなくその自白以外の証拠=「補強証拠」も無ければ
有罪にできない「補強法則」(憲38条3項、319条2項)は
共犯者の自白を唯一の証拠として被告人を有罪にする場合には
当てはまらないとする判例がある(最大判昭和33・5・28)

[違法に収拾された証拠の排除]
○適正手続の保障(憲31条以下)のためには「違法収拾証拠を排除」するのが
適切と考えられるがこれを直接定めた規定は無い
→これが争われた判例(最判昭和53・9・7など)では
 捜査の違法性を認めながらも証拠能力は肯定するというものがある

<公判の裁判>
[裁判とは]
☆不服申立ての種類・・・
・判決←「控訴」(372条)、「上告」(405条)
・決定←「抗告」(420条)
・命令←「準抗告」(429条)

○判決書は判決そのものではなく判決の内容を証明するための文書なので
裁判官が宣告の際に判決を言い間違えた場合はそれがそのまま判決になる
→実際にもたまにあるらしい

○民事訴訟法では訴訟関係人への判決書送達は義務(民訴255条)だが
 刑事訴訟法では訴訟関係人への判決書送達は任意(46条)

[実体裁判]
○有罪率がきわめて高いことが日本の刑事裁判の大きな特徴

○判決宣告後「14日以内」に控訴申立てがなければ判決は確定される(373条)
(宣告当日は算入されないので実質15日)
→確定すれば「一事不再理効」(憲39条)のため公訴提起はできない

[形式裁判]
○民事訴訟法では管轄違いによる移送を認めている(民訴16条)が
刑事訴訟法では原則として認められていない(329条)

○形式裁判である管轄違いの裁判と公訴棄却の裁判は
確定しても実体判決のような一事不再理効は生まれない
→免訴も形式裁判だがこれには一事不再理の効力があると考えられている

<上訴>
[控訴]
○控訴期間ぎりぎりまで勾留中の被告人が控訴申立てを迷ったとしても
第一審判決宣告日から控訴申立ての前日までの未決勾留日数は
全部刑に法定通算される→「不利益変更禁止の原則」(402条)の応用

○控訴の範囲が争われた判例=「新島ミサイル事件」(最大判46・3・24)

☆控訴審の構造・・・
民事訴訟法では第一審口頭弁論終結直前の状態まで戻す「続審制度」を取るが
刑事訴訟法では第一審判決当時の証拠のみに基づいて
原判決の当否を判断する「事後審制度」を取っている
→しかし例外である「382条の2」と「393条2項」が実際の控訴審事件の
 70%以上を占めていて原則と例外が逆転している

○控訴審の争点の設定は「控訴趣意書」を提出する当事者の義務(376条)

☆控訴理由・・・
訴訟手続の違反を理由にする「絶対的控訴理由」(378条)が原則だが
例外的に事実誤認や法令の解釈適用の誤りに対しても
その誤りが判決に影響した場合に限っては控訴理由とすることができる
=「相対的控訴理由」(380条以下)がある
→実際の控訴審での審判対象はこの「量刑不当」と「事実誤認」がほとんど

○控訴審で被告人の実質的利益を害することはないと考えられる場合には
検察官による「訴因の追加・変更」請求が認められるとされている
(最判昭和30・12・26)

○原判決の破棄は2種類・・・
・控訴理由に該当する事由があればそのまま原判決の破棄理由となる
 (397条1項)=「1項破棄」
・原判決後の情状を調査して原判決を破棄しなければ
 明らかに正義に反すると認められるとき(397条2項)=「2項破棄」

○実務上では破棄した場合には控訴審自らが新たに判決=「自決」するため
破棄差戻しや移送がなされることはほとんど無い(400条但書)
→たとえ差戻されても控訴審の判断は下級審の判断を拘束する
 「破棄判決の拘束力」がある

[上告]
☆「上告」=控訴審判決に憲法違反か法令違反があることを理由に
最高裁判所に対してその取消し・変更を申し立てること(405条)で原則的に
法令の解釈統一が目的なので事実誤認や量刑不当は上告理由に当たらない
→しかしそうした理由でも判決確定前に最高裁判所の裁量的判断で
 受理することができる「事件受理の申立て制度」がある(406条)
 (実際にも量刑不当を主張するものがほとんど)

[抗告]
○抗告の種類・・・
・「通常抗告」(419条)
 →実際には保釈の許可・却下に対するものが多い
・「即時抗告」(422条)
 →実際には執行猶予取消決定や再審請求棄却決定に対するものが多い
・「特別抗告」(433条)
 →刑事訴訟法では不服申立てができないとされる決定や命令に対して
  憲法違反・判例違反を理由に最高裁判所に不服申立てをする制度

○「再度の考案」(423条)=原裁判所が申立書を抗告裁判所に送付する前に
自ら抗告の理由があると認めるときは決定を更正しなくてはいけない

[準抗告]
☆「準抗告」=
・裁判官による命令に対する不服申立て(上訴に近い)
・捜査機関の処分に対する不服申立て(行政訴訟に近い)
・・・のまったく性質の違う二つがある(430条)

<確定後救済手続>
[再審]
☆「再審事由」の中では特に「6号事由」(435条)が重要
→明白性の要件を緩和した判例(最決昭和50・5・20)以降は
 「免田事件」、「財田川事件」、「松山事件」、「島田事件」など
 再審の著名なものはこの6号を事由に申し立てられたものがほとんど

[非常上告]
○「非常上告」=被告人救済の側面は無くほとんど利用されていない(454条)

<特別手続>
[略式手続]
○「略式手続」(461条)=書面審理だけで
50万円以下の罰金or科料を科する裁判をする

○略式手続に不満があって正式裁判を申し立てることは上訴ではないので
不利益変更禁止の原則は適用されない→科刑が重たくなることもある

[少年事件の特別手続]
☆少年の刑事事件はまず家庭裁判所に送致され調査の結果、
刑事処分が相当であると判断した場合に検察官に事件を送致する
=「逆送決定」=「20条決定」(少20条)

○少年事件では家庭裁判所が刑事処分にするかどうかの決定権を持つ
=検察官起訴専権主義、起訴便宜主義の例外→「起訴強制主義」(少45条)

[付随手続]
○未決勾留日数を本刑に算入する事については刑法21が「裁定算入」を
認めているが刑事訴訟法は必ず本刑に算入する「法定通算」(495条)を規定

○「仮納付」(494条)の裁判は直ちに執行できる上に
追徴の裁判が確定すると本刑の執行を終えたことになるので
道路交通法違反による略式命令の90%以上を占めている

○罰金or科料の刑を言い渡す際には被告人が法人or少年の場合を除いて
必ず労役場留置の言い渡しをしなくてはいけない
=「換刑処分」(刑18条、505条)

☆「追徴」=裁判時に被告人から没収物を没収できない場合に
没収に代えてその物に相当する価額を徴収する裁判(刑19条の2)

○「被害者還付制度」=判決の際に裁判所が押収している
財産犯罪によって得られた物件(贓物)は被害者に還付する(347条)

○有罪判決の場合でも被告人が貧困のため負担能力がない場合は裁判所の
裁量によって訴訟費用の負担を免除することができる(181条1項但書)
→たとえ負担させられる判決が下っても被告人は
 訴訟費用負担の執行免除申立てが可能(500条)

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2000 2/16
法学、刑事訴訟法
まろまろヒット率3

日笠完治 『憲法がわかった』 法学書院 1999

今年は義理チョコ断絶宣言を出したけどメリルリンチに行った帰りに
チョコをもらってしまい(イメージキャラの牛さんチョコだったので思わず)
あっさり方針を撤回した、らぶナベ@というわけで義理チョコでも受付中っす

さてさて、『憲法がわかった』日笠完治著(法学書院)1999年初版。
憲法関連で3冊目に読んだ本。
当初は憲法学のバイブルと言われる芦部信喜の本を読もうと思っていたが
彼の本は人権に偏りすぎていて統治の記述が無いと聞いたので
まずは全体を把握することを第一の目的とする本を読もうと思って
本屋で探して選んできたのがこの本。
読んでみると「文章書くの下手だなぁ」と思うことが多々。
分かりやすく図解などを使って書こうとしているのは理解できるが
修飾語が多すぎて結論が見えにくい記述も多かったように思える。
どうもメリハリの感じられない構成&文章が目立ったが
よくよく見てみたら著者はドイツ公法の専門家だった。
確かに意味無いほどの時代変遷の列挙や抽象論的議論をしているのは
ドイツ観念論の傾向が強いからか?(ヘーゲルの影響)
どうも大陸法、特にドイツ関連の素養を持った日本人研究者っていうのは
日本語の文章がうまく無いように感じられる。
観念論的過ぎるためか?とりあえず結論を明確に書く
英米法の素養を持った研究者の方が読んでいてわかりやすさを感じる。

以下は、チェックした箇所・・・
○憲法前文は具体的事件に適応されるべき裁判規範ではなく、
個別条文の「解釈指針」でしかないとするのが通説

○憲法学の構成・・・
「憲法総論」、「基本的人権」、「統治機構論」、「憲法保障論」

○新旧憲法の違い・・・
・大日本帝国憲法→ドイツ憲法の影響→外見的立憲主義
 (法実証主義的、合理主義、演繹的傾向)
・日本国憲法→アメリカ憲法の影響→実質的立憲主義
 (判例中心主義的、機能主義、帰納論的傾向)

○グラウンド・・・
・憲法学の5段階構造
 「憲法理念」→「憲法原理」→「憲法典」→「憲法制度」→「憲法現実」
・法学のグラウンド
 「法理念」→「法律」→「現実」

☆憲法理念の価値序列・・・
「個人主義」→「自由主義」→「平等主義」→「福祉主義」→「平和主義」

○誰を指すのか曖昧な「国民」という言葉は錦の御旗的な機能を果たし
実際の政治的権力を行使している者の隠れ蓑となる可能性がある
→「国民主権の現実隠蔽的機能」

○「法律上の争訟」であっても「統治行為」の理論によって裁判所が
判断を回避した判例:「砂川事件」(昭和34)での安保条約の合憲性

○基本的人権を記載した条文の関係・・・
11条=「基本的人権の享有」(人権の大原則)
12条=「自由・権利の保持責任と濫用の禁止」(国民の債務)
13条=「個人の尊重・幸福追求権の保障」(国家・社会の債務)

○人権の限界=「公共の福祉論」に関する解釈では
「一元的内在制約説」が通説

○「二重の基準理論」が確率されたのはニューディール時代に
経済的自由が制約を受ける社会国家的政策が展開されたため

○13条=「個人の尊重」=「生命・自由及び幸福追求権」
=「幸福追求権」=「包括的基本権」
→裁判上で新しい人権を直接生み出すことが可能

○38条1項=「自己負罪拒否の特権」
(privilege against self-incrimination)」

○「国家の宗教活動の禁止」(20条3項)は
国家が「習俗的行為」を行うことまでは禁止していない
→判例:「津地鎮祭事件」(昭和52)

○「政教分離原則」(20条、89条)の違憲審査基準に関しては
「目的・効果基準」よりも「endorsement test」が有効とされる

☆「アクセス権」に憲法上の保障を与えようとする動きがあるが
国民とマス・メディアとの関係はあくまで私人間関係なので
憲法上の権利としてアクセス権を国民に認めることは難しい
→アクセス権の中核に位置するのが「反論権」だが
 判例:「サンケイ新聞反論権事件」(昭和62)ではこの権利を否定

○守秘義務がある人間には「証言拒絶権」があるが
(民事訴訟法197条、刑事訴訟法149条)
新聞記者を含めた報道関係者には守秘義務が無いとされる
→判例:「石井記者事件」(昭和27)

○行動を伴う表現(speech plus)の制約についての違憲判断基準
=「オブライエン・テスト」

○「二重の基準理論」の根拠=「代議的自治論」
経済的自由への制約は正常な民主主義的手続が保障されていれば
民意にもとづいて修正されるが精神的自由(特に表現の自由)への制約は
民主主義=代議的自治によっては是正されないとされているため
→政治部門と司法部門の役割分担

○厳格な審査基準の「事前抑制禁止の理論」
=相手側に情報ないし表現が伝達される前に
立法その他の公権力がその伝達を阻止することへの禁止
→検閲の禁止(21条2項)

○厳格な審査基準の「明確性の理論」
=「漠然性ゆえに無効」、「過度の広汎性ゆえに無効」

○厳格な審査基準の「より制限的でない他の選びうる手段」(LRA)
=立法目的を達成するための規制手段として規制の程度のより少ない
規制手段が存在するか否かを具体的・実質的に審査して
そのような手段がありうると解される時は当該規制立法を違憲とする審査基準

☆経済的自由権に対する消極的制約に対して
「厳格な合理性の審査」をしてさらに「LRA」の審査で違憲判決をした
判例:「薬局開設距離制限違憲判決」(昭和50)
→職業選択の自由(22条)への制限立法に対する合憲性審査をした

☆経済的自由権に対する積極的制約に対して
「明白性の原則」の審査で合憲判決をした
判例:「小売市場開設距離制限事件」(昭和47)
→職業選択の自由(22条)への制限立法に対する合憲性審査をした

○「国務請求権」=「受益権」
→「請願権」(16条)、「国家賠償請求権」(17条)、
「裁判を受ける権利」(32条)、「刑事補償請求権」(40条)

○「両議院独立活動の原則」・・・
「議員の資格争訟の裁判」(55条)、「定足数・表決数」(56条)、
「会議録」(57条2項)、「役員の選任・議院規則・懲罰」(58条)、
「国政調査権」(62条)などの条文にある「両議院は、各々・・・」に根拠

☆両議員独立活動の原則の例外(両院協議会)・・・
「法律案の議決」(59条)、「予算案の議決」(60条2項)、
「条約の承認」(61条)、「内閣総理大臣の使命」(67条2項)

☆衆議院だけにある機能=「内閣に対する信任・不信任の決議権」(69条)
「参議院の緊急集会における緊急措置に対する同意」(54条3項)

☆「国政調査権」(62条)の機能・・・
「情報提供機能」、「争点明確化機能」、「世論形成機能」
判例:「浦和充子事件」(昭和24)

☆地方公共団体による条例制定「自主立法」(94条)は
地方公共団体の事務に関する事項に限定されるが
国家法とは原則的に無関係の独自の法定立ができる
判例:「徳島市公安条例事件」(昭和50)

○司法消極主義による憲法判断の形式
「憲法判断回避の準則」
(憲法上の利益が保障されるなら憲法判断を回避)
    ↓
「違憲判断回避の準則」
(当該法令の解釈が多用にある場合には憲法に合致するような
限定解釈をおこなって当該法令の違憲判決をしない)
    ↓
「適法違憲」
(当該法令をその事件に適応する限りで違憲判断)
    ↓
「法令違憲」
(法令そのものが憲法に合致していないと判断)

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2000 2/11
法学、憲法
まろまろヒット率3

松山正一 『この一冊で「刑法」がわかる!』 三笠書房 1996

刑法関連で読み終えた3冊目の本。
さらに今まで理論書で把握した骨格に肉付けする目的で
判例が豊富な三笠書房の『この一冊でわかる』シリーズを
読んできたがこれでこのシリーズをすべて読み終えたことにもなる。
内容の方は他の法律版と同じように刑法でもその例にもれず
実によく様々な具体例を紹介してくれている。(その数ざっと79例)
特に刑法は事例である各論を中心に考えるとわかりやすいので
なかなかに読んでいて楽しかった。
この本を読んで初めて知ったことだが『死刑囚』や『泥棒日記』で有名な
フランスの作家ジャン・ジュネは本人も常習窃盗犯で
終身刑まで言い渡されたことがあるらしい。
その時はサルトルやコクトーの奔走で特赦を得たらしいが
「彼の作品って単なるマニアの結晶やん(^^;」と突っ込んでしまった。
僕の痛いものコレクションに新たなコレクションが加わった。

以下、チェック&まとめたところ・・・

○刑罰の分け方=「生命刑」、「自由刑」、「財産刑」、「名誉刑」

○日本の刑罰は重い方から死刑→懲役→禁固→罰金→拘留→科料→没収
・死刑~科料までが「主刑」で没収は「付加刑」

☆一つの行為が複数の犯罪にあたる場合は刑罰の量刑の枠を
それぞれ刑罰の重い方を選んでその範囲内で処罰する(54条1項)
=「観念的競合」

○懲役刑(13条)と禁固刑(16条)は共に無期と有期があり、
有期の上限は15年だが最長「20年」まで延長することが可能

○「拘留」は刑法上の刑罰だが同じ発音をする
「勾留」は刑事訴訟法上の強制処分で刑罰ではない

○裁判を下される全犯罪の90%以上が罰金刑
(罰金は原則1万円以上、科料は千円以上1万円未満)

○刑罰の「科料」と同じ発音の交通違反などで支払う
「過料」は行政上のもので刑罰ではない
→「科料」を「とがりょう」、「過料」を「あやまちりょう」と呼ぶことも

○刑期は暦による年や月の単位で計算する(22条)
→2月と3月とでは3日も違う

○執行猶予を加えることができるのは3年以下の懲役か禁固、
または50万円以下の罰金の時のみ(25条)

○執行猶予中の犯罪でももう一度だけは執行猶予を受けることができる

○仮釈放で出所した人間の数が満期釈放で出た人間の数を上回っている(56%)

○例外的だが教師に「暴行罪」(208条)を適応した判例がある

○他人の封筒などの信書を開けると「信書開封罪」(133条)
→内容を見なくても読める状態であれば該当

○「あの肉はミミズの肉だ」などの嘘の情報などで業務活動を妨げれば
実害の有無に関わらず「信用毀損及び業務妨害罪」(233条)

○憲法20条「信教の自由」を刑法上で実現させたのが
「宗教的感情に関する罪」(188条~192条)

○民訴では証人や身内にとって重大な利害関係のある事柄については
裁判での宣誓を拒否できる(民事訴訟法196条)
刑訴でも証人自身や身内などが処罰を受ける可能性のある
事柄については宣誓を拒否できる(刑事訴訟法146条)

○警官が無理矢理職務質問をすれば「公務員職権乱用罪」(193条)、
また条件が整っていない逮捕や要件が整っていない勾留をおこなえば
「特別公務員職権乱用罪」(194条)

○職務上知った他人の秘密を漏らすと「秘密漏示罪」(134条)

○「傷害罪」(204条)と「暴行罪」(208条)との線引きは問題となるが
被害者が精神衰弱症になるまでイタ電をし続けた犯人には
物理的攻撃をしていなくても傷害罪が適用された判例がある

○ペットが他人を怪我させれば買い主は「過失傷害罪」(209条)
→ただし親告罪

☆「過失」=「注意義務違反」=
「予見可能性」+「回避可能性」があったにも関わらず
「結果予見義務」or「結果回避義務」を欠いたこと
○全くの第三者でも喧嘩をはやし立てると「傷害現場助勢罪」(206条)
☆単純な理論上では殺意無しで殴って相手が死んでしまえば
「傷害罪」(204条)+「過失致死罪」(210条)で懲役最大10年だが
結果的に死を招いた傷害に対しては「あれ無ければこれ無し」の
条件関係を重視して「傷害致死罪」(205条)を適応し懲役最大15年
→故意犯よりも過失犯が重く処罰されることを「結果的加重犯」
過失致死罪」(210条)よりも「業務上過失致死罪」(211条)の方が重い

○13歳未満の女の子との性交は同意を得ていても「強姦罪」(177条)
また、強姦罪は原則的に親告罪だが輪姦の場合は告訴無しでも成立する

○要求を受けたのに人の住居などから立ち去らなければ「不退去罪」(130条)

☆線引きが難しい「強盗罪」(236条)と「恐喝罪」(249条)との違いは
主観的な判断でなく客観的な性質に注目
→被害者が現実に反抗を抑圧されたかどうかは問わない

○借金の返済であっても強要すると「恐喝罪」(249条)

☆借金の借用証でも破ると「私用文書毀棄罪」(259条)
→「毀棄」とは文書としての役割を果たさなくすることなので
隠匿行為も毀棄のうちに含まれる

○「公用文書毀棄罪」(258条)は親告罪ではないが
「私用文書毀棄罪」(259条)は親告罪

☆預かった封書全体をネコババすると「横領罪」(252条)、
中身だけ抜き取ると「窃盗罪」(235条)でこちらの方が重たい
→占有を侵害している方が罪が重い

○ローン返済完了前に商品を売っても「横領罪」(252条)に該当
→支払が終わるまでその商品の所有権は売り主にあるため

○「盗品などに関する罪」(256条)は懲役刑と罰金刑の
両方が科される刑法上では唯一の罪

○役員が焦げ付くとわかっていた融資すれば「背任罪」(247条)

☆犯人自身とその家族が証拠を消しても「証拠隠滅罪」(104条)にはならない

☆被害者やその家族、目撃証人を脅したり面会を強要しただけで
「証人威迫罪」(105条の2)

○最近の判例による違法ではない安楽死の要件・・・
1:耐え難い肉体的苦痛があること
2:患者の死が避けられず、かつ死期が迫っていること
3:肉体的苦痛を除去・緩和する方法を尽くし、他に手段がないこと
4:生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること←これが一番重要

☆「建造物損壊罪」(260条)と「器物破損罪」(261条)は
物理的に使用できなくする場合だけでなく
心理的に使えなくした場合でも該当する

☆「併合罪」の量刑の枠はもっとも重い刑の1.5倍を上限とする(47条)

☆原則的には悪事を重ねる再犯の刑期は2倍になり
情状酌量された犯人の刑期は2分の1になる

○親告罪で告訴権のある被害者に犯人が自分の罪を告げて処分を委ねると
自首と同じ扱いを受ける=「首服」(42条)

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2000 2/6
法学、刑法
まろまろヒット率3

渋谷昌三 『人はなぜウソをつくのか』 河出書房新社 1996

らぶナベ@苦手なものランキングトップクラスのカラオケを克服中、
練習していると「紙ヒコーキ飛ばし過ぎ」と突っ込まれるっす(^^;

さて、『人はなぜウソをつくのか』渋谷昌三著(河出書房新社)1996初版。
去年は個人的にも何かとウソに苦労させられたし、
僕が選んだ進路も嘘と接していくことになるものなので
嘘についてちゃんと取り上げた本を一度は読んでみようと思い、
医科大学で教鞭を取る心理学者が書いたこの本を買って読んでみた。
実際に嘘は身近なものだが「ウソはいけない」と教義的に捉えるあまりに
意識して正面から嘘と向き合う事は少ないように思える。
この本の中でもっとも印象に残り有意義だと思えるのは・・・
「嘘はその人の置かれた立場を明確にする。
・・・相手を思いやるきっかけに」と著者が述べている点だ。
この本では発達心理学的側面から「なぜ人は嘘をおぼえていくのか」
という事も取り上げられているが、当人が嘘を憶えた事情や
うそをつく状況を冷静に受けとめれば一様に責めるのは良くないなと感じた。
また、この本は嘘にまつわる実験やアンケート結果を紹介しているのだが
その中に今までについた嘘とその結果についてのアンケート答案例・・・
「(女性)3歳くらいの時に死んだふりをした→そのまま放っておかれた」
・・・というのには不覚にも笑ってしまった(^^)
子供の嘘に対しては「許せるものに対しては大いに笑ってやり、
許せないものに対しては大いに怒るなどの柔軟な対応が必要」
・・・という風な事を書いていたがこれは大人にも当てはまるだろう。
そしてこの本では普段は経験的に分かっていることでも
心理学的にはどう説明していてどのような学説があるかの記述があり、
それがなかなかに興味深かった。
日常生活を捉える際の新しいフレームワークを得た感じがする。
薄っぺらい新書のわりにはなかなかに読む価値があった一冊(^_^)

以下、その他チェックした項目・・・
○嘘の定義・・・
「騙すことによってある目的を達成しようとする意識的な虚偽の発言」
(シュテルン)←つまり無意識についた嘘は嘘とは簡単には言い切れない

○ウソの分析は「嘘の意図」と「嘘の結果」を使って
立体的に分析する(ピーターソン)

○ヒステリーや意志薄弱性の人間にみられる虚言症は
事実に反しているにも関わらず事実であるように思いこんでいる
→ヒステリーの人間の自己顕示欲求=「喝采願望」

○「halo効果」=ある人の際立った特徴があると
その他の特徴がすべてその特徴に従属して評価されること

○生後10ヶ月でも寝たふりや聞こえないふりなどの嘘をつく
→自分以外の存在がわかると子供は嘘をつき始める(ごまかしをおぼえる)

○小さな子供ほど現実の出来事と空想との産物がつきにくい
→悪意とは言い切れないので頭ごなしに怒ってはいけない

○子供が意識して嘘をつくようになる時にモデルとなるのは
「嘘はいけない」と言っている親自身(エクマン)
→ごまかした態度を子供に見せたり「言うな」と嘘を強制したり
「人を育てる」として適応のための嘘をつく人間を育てている

○子供が親に初めて嘘をうまくついた時に
子供は絶対的だった親の束縛から自由になれる(ホイト)

○契約社会の西欧では嘘に代わりユーモアが発達し、
曖昧な日本においては嘘ではないとされる外交辞令が盛んになった

○女性には「ふりをする」などの対人摩擦から身を守ろうとする嘘が多い

○嘘の自白と同じく役割が期待される嘘を社会として紡ぎだしている
=「権力を背景に持つ一種の役割期待」(浜田)

○男性は相手とうまくやっていこうとしながら
常に相手より優位に立とうとするために嘘をつく
女性はとにかく相手との摩擦をさけようとする嘘をつく(実験結果より)

☆自己防衛のために嘘を守り通すのでやがてそれが身についてしまい
その人のパーソナリティを形成する→嘘が人格を形成する側面もある

☆「防衛規制」(フロイト)=人は強い不安を体験すると
パニックになるので自分に都合の良い解釈をして自己防衛する
→相手がどんなに怒ろうとも本人には問題意識が希薄なので
どうして相手が怒っているのかわからない
(つまりどんなに怒っても意味無いわけね(;_;))

○「甘いレモンの理論」=イソップ物語にある「すっぱい葡萄」を
応用させたもの、自分のやったことを過大評価させる合理化

☆不安から一時的に逃れる「逃避」には・・・
「空想への逃避」と「現実への逃避」がある
→現実への逃避には無益なこと(テレビを見まくる)、
有益なこと(仕事に打ち込む)の二つともあるが
どうせ逃避するならば「有益な現実への逃避」を心がけたいものだ

○被害者意識の強い人間は事実を曲げて他人のせいにする
「投射」という防衛機能を持っていることがある

○自分の気持ちと正反対の態度を示す=「反動形成」
→本音を隠すための嘘

○失敗した時のための口実をあらかじめ用意しておくこと
=”self handicaping”
→自己評価の低い人間ほどこの傾向が強い

○最初の判断が間違いだったことを認めると
自分の判断能力に問題があることになりプライドが傷つくので
当人の努力不足や運の悪さなど自分勝手な嘘の理由を築き上げる
→教師や指導者に多い

○人の記憶は残りやすいが場所の記憶は残りにくい
→名刺の余白に日時や場所、要件などのメモを入れたりすると有効

○計画的に過去の記憶を強調する質問をすると
その記憶が様々に加工されてよみがえることがあるので
記憶の内容が変わってしまうことがある→意識しない嘘

○強い不安にされされている人は他人と一緒にいたいと思う
=「親和欲求」(シャクター)
→長子、一人っ子に強い

○嘘を公開して自分をその状況に追い込む=”public commitment”
→本田宗一郎が成功した秘訣

○話すよりも書くことで嘘がつけなくなる傾向がある
→「わかった」という人に対して
「具体的に計画書を書いてきてくれ」と求めることによって
嘘や寝返りの防止につながる
(“public commitment”はプライドに訴えるもの)

○人がよく考えた上で判断できるのは
そうしようとする強い欲求と能力がある時だけに限られる
→機長症候群の温床

○誰もが了承できる事から頼んで本題を切り出す
“fit in the technique”(段階的説得法)の要点は
自分の行動に矛盾が生じてしまうことへの警戒を突く点

○絶対OKしそうもないことから要請出して譲歩案を切り出す
“shut the door in the face technique”(門前払い法)の要点は
譲歩のお返しという相手の義務感と印象を良くしたいという気持ち、
そして最初の案を拒絶した事への罪を補う気持ちを突く点

○嘘でも最高の条件を出してその承諾後に修正を求める
“low ball technique”(釣り球説得法)の要点は
一旦応じてしまうと深い関係ができてしまい
それを維持しようとする気持ちを突く点

○普段使うキーワードが入ればそれに反応してしまう
簡便法=「ヒューリステック」
→どんな要請でも「~ので」が入ると了承しやすくなるなど

○自動車ディーラーや不動産屋などがメインを値引きをして
オプションでその値引き分を取り返そうとするのは
「コントラストの原理」を利用している

○人は常に相手の期待に対してもっとも敏感に反応する(ローゼンソール)

○相手への感情が同時に相手から自分への感情と共鳴する=「好意の返報性」

○集団の中の真の権力者は地位が最も高い人間ではなく、
もっともよくまねをされる人間(デッカー)

○会議などで発言しなくても相手の動作をまねることで
相手と同じ意見であることを伝える=「同調ダンス」(シェフレン)は
似たものを愛する「類似性の原理」がその根幹
→自分と違うタイプの他人に接すると「自己不確定感の脅威」を受けるため

○不自然なまばたきが多いと嘘だったり自信が無かったりする可能性が高い
→弱点を知られないように自分のまなざしを隠そうとしている

○まばたきは情報処理中は抑えられ終了すると多くなる

☆自分の気持ちを発信する能力は「顔→手→足の順」だが
嘘やごまかしの手がかりは逆に「足→手→顔の順」に出る!
→顔には漏れにくいが首からしたには漏れやすい

○会話などでの嘘の徴候・・・
沈黙に敏捷に反応する、短く話そうとする、話に柔軟性が無くなる、
手を動かしたり隠そうとする、相手との距離(個人空間)を取ろうとする

○会話に集中する電話より直接会う方が騙しやすいことが判明している
→相手の手足に注目し後日電話で確認すると見抜きやすい

○聞き間違いも言い間違いも共に「錯誤行為」(フロイト)
→ど忘れは忘れたことにしたいという願望がある時が多い

○英語に見る嘘の種類・・・
lie,deception,cheat,fraud,fake,sham,swindle,charlatan,fib,trick

○女性は嘘を漏らすこと(符号化)が多いが
男性は嘘を見つけること(解読化能力)が低いので見破れない
→よくできたものだ

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2000 2/4
心理学、教育学
まろまろヒット率5

司馬遼太郎 『箱根の坂』 講談社 上中下巻 1987

もういい年なのでいい加減そろそろ自立しようと思い立ち
妄想銀行大阪支店長の地位を捨てて「妄想証券取引所」(NABEDAQ)を
開設した、らぶナベ@ただいまさまざまな銘柄が上場中!
(現在、佐伯日菜子株が高値圏にあり)

さて、『箱根の坂』上・中・下巻 司馬遼太郎著(講談社文庫)1987年初版。
時々、なぜか無性に司馬遼太郎の本を読みたくなる事があるのだが
現在そういう時に読み返すはずの『龍馬がゆく』や『燃えよ剣』、
さらには心のベスト本『坂の上の雲』までもがことごとく人に貸していて
手元に無かったためこの機会に新しいのでも読んでみようと思い、
どうせ読むならスケールの大きなやつのが良いだろうと買って来た一冊。

内容の方は戦国大名の代表格とされる北条早雲を主役にした歴史小説。
以前、司馬遼太郎の『空海の風景』上・下巻(中央公論新社)1994年改版初版
というタイトルの本を読んだがこの作者の書く本はすべて
その登場人物が生きた「風景」をえがいているような気がする。
社会状況だけでなく地理的環境、風土までその人間たちの見た
「風景」をえがくのがこの作者の真骨頂だろうが
特にこの小説では北条早雲の生きた「風景」が強く感じられた。
そういう意味でとても司馬作品らしい小説。

北条早雲といえばギラギラした成り上がり者のイメージが強いが
その生涯を見てみると・・・
中央官僚を務める伊勢家の傍系のさらに傍系という厄介者の立場に生まれ
その状況に甘んじて次期将軍候補者に仕えるも政治に絶望し
応仁の乱の中でも鞍職人として人生の前半生を波風立てないよう生きるが
駿河の今川家に嫁いだ妹分の要請から主体的な役割を演じていき
10年以上かけてじっくりと今川家の内紛をおさめてゆき
50代になって始めて一城の主として自分なりの政治をおこない
60代になって戦国時代の幕を切る小田原攻めを指揮し、
70代になって10年以上防戦一方だった浦上氏を攻めてあげて
さらに80代になってからその浦上氏を滅ぼして
戦国大名北条氏の基礎を造りあげるという「お前はおじゃる丸か!」と
思うくらいに成り上がり者というイメージの割に鷹揚というか
時間を計るメモリが人より長い感じを受けてしまう。
応仁の乱で台頭してきた足軽や土豪、鉄製農具の普及で力を付けた
農民とその加工品を扱う商人たち(旧時代では数段下の人間たち)の
台頭と守護や将軍家の実質的な没落という時代を見つめる視点に
自信があったからこそこういう時間の使い方ができたのだろう。
単に混乱する状況を嘆く旧時代の既得権益者に過ぎなければ
(もし彼が伊勢家の本家の長男であれば)また違った人生を歩んだのだろう。
既得権益、既成権威が揺らぐことへの恐れは人を動揺させるが
その動揺をどう捉えるのかでその人の価値は決まってくるということだろう。

北条早雲の人から見れば別人のような人生の状況変化、
理解しにくいほどの極端な能力の使い方、
人生の前半生にみられた勘の鋭さを扱いかねるところなどには
何か親近感というか相通じるものを感じてしまう(^^)
ま、僕も焦らず地殻変動の進む現在をいきてゆこう。

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2000 1/25
小説、歴史
まろまろヒット率5