実業之日本社は、1897年に創立された歴史ある出版社です。
創業者である光岡威一郎は東京専門学校(現・早稲田大学)の出身。
彼は帝国実業の発達振興を図るべく大日本実業学会を立ち上げ、
雑誌「実業之日本」を創刊します。創刊当初の雑誌のコンセプトは、
当時台頭しつつあったプチブルな実業家向けの経済情報誌、
という感じでしょうか。
しかし間もなく光岡は健康を害し、同社の経営権と出版権を同窓の増田義一
に譲ることになります。増田は1900年実業之日本社を設立。
「実業之日本」は経済雑誌として成長していくことになります。
また、1906年には雑誌「婦人世界」を創刊、これまでの出版流通にはなかった
委託出版制を導入し、あっという間に日本一の部数を誇る雑誌へと成長します。
この雑誌を刷るために、印刷会社の秀英舎は日本初の活版輪転機を購入した、
なんてエピソードもあります。ちなみに、秀英舎は現在の大日本印刷です。
その後、1909年にはあの新渡戸稲造を編集顧問に迎えたりもしています。
その間に「実業之日本」も雑誌の性格を徐々に変えていき、立身出世を
果たした実業家のサクセスストーリーやそのノウハウなどがその誌面の中心
になってきます。より実利的な、ハウツー雑誌に転換した、ということですね。
そういう雑誌は今でこそ青春出版社の「BIG TOMORROW」くらいになってしま
いましたが、昔の経済誌はそういう性格のものが多かったのも事実です。
その「実業之日本」ですが、2002年に惜しまれつつ休刊してしまいました。
末期には「実業の日本JN」なんて名前になったりもしていましたね。
とにもかくにも出版社の名前を冠した雑誌の休刊は寂しいものです。
それ以降、何となくあまり元気が無い印象もある同社です(失礼・・・)が、
今後も良書を出し続けて頑張って欲しいですね。
㈱実業之日本社
〒104-8233 東京都中央区銀座1-3-9
TEL 03-3562-1021 FAX 03-3562-4313
地図
※なお、この項は大東文化大学・中村宗悦教授のサイト内の日記
「大教室のMONOLOGUE」(2002年1月23日付)を参考文献として使用させて頂いております。