自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder, ASD) を社員として雇用する上での注意点や、その特性を会社として活かす方法を、上司や経営者向けに解説した本。
原題は、“An employer’s guide to managing professionals on the autism spectrum” (2017) 。
ASDに限らず、発達障害関係の本は、保護者や当事者向けのものが多いため、「問題点をどのように補うか」というの負の面を補う内容のものが多い。
そのような本でも、「独自の個性を伸ばして…」などの個性を活かすことの重要性は書かれているものの、その具体的には乏しいものがほとんどだった。
(あくまでこれまで私が読んだ本の中での感想)
この本は、実際にASDを会社の社員として雇用する上で上での注意点と合理的配慮に加えて、その個性をいかに会社の中で発揮させるかについて書かれているところが最大の特徴。
ASDの特性の積極的な活用という本書の趣旨は、就労継続支援A型事業の経営者としても強い興味を感じた。
以下は、チェックした箇所(一部要約含む)…
☆ASD社員雇用者の所見=
・「私達が発見した未使用の採用の貯水湖」 (K.R Lewis, 2014)
・「会社が多様化すれば、製品や問題解決により多くの視点を取り入れることができる」 (Florentine, 2015)
・「これまで明らかにされたことがない視点を利用でき、全く新しい、より豊かで、より深く、より広い世界観を開くことができる」 (Florentine, 2015)
<第3章 自閉症ということの開示と自閉症社員のタイプ>
◯多くのASDは他者との関わりを持ちたいと思っており、一般的に意図して侮辱的、批判的、不適切な態度を取っていない
→職場での適切な話題や対処法を上司が教えることは効果的
→もしASD社員が同じ間違いを繰り返すようなら、上司が「安全な」話題のリストを更新して、練習させる
<第5章 会話>
☆一般的に、定型発達者は反復的な考えに対処するために、自分の考えを別のものに移そうとするが、ASDにとって自分でそれを行うのは非常に難しい
→しかし、解決策や改善策など、より建設的なことに集中するように上司が提案することで、否定的な考えから転換する手助けができる
→ex. 「あなたの一番の心配事を1ページにまとめて、私が参照できるようにして」と指示するなど
<第5章 会話>
☆「共感」=他人の視点を理解する「認知的共感」+前者を基に相手の気持ちを気遣う「感情的共感」
→ASDは、「認知的共感」は低いが、「感情的共感」は高い
(Hadjikhani et al., 2014) (Markram, Rinaldi, and Markram, 2007)
<第6章 人とのかかわり>
◯ASDの生まれつきの正直さは、仕事の場ではメリットになる
→上司が意見を聞けば、ほとんどの場合、正直で直接的な答えが返ってくる
→ただし、ASDは自分が正直であるから、他人もそうだと思い込みがちなので、社会的不利な立場になることも多い
<第6章 人とのかかわり>
☆ASDは、細かいことを記憶し、処理し、パターン化が得意であり、その能力は複雑な問題に対する創造的な解決策をもたらすことがある
→興味あるテーマを調査してカタログ化する情熱を持っているので、それを積極的に共有することで、同僚の間で貴重な情報源となることがある
<第8章 組織化>
◯ASDが優先順位をつけるための確認事項
・依存:ある仕事は他の仕事の完成に依存していないか?
・時間:ある仕事の期限が他の仕事よりも早かったり、誰かにすぐやって欲しいと頼まれたりしていないか?
・人:誰がその仕事を要求しているか?
<第8章 組織化>
☆ASDは、「ボトムアップ」で物事を考える傾向があり、事実や詳細な事柄からパターンを見つけ関連性を見出す能力に優れているため、それがやがて、何に取り組んでいるとしても「俯瞰する」ことにつながる
→ASDにとっては、すべての細部が全体に不可欠であり、複数の分野にまたがる事実やアイデアを関連付ける能力が創造的で意味のある洞察をもたらす
(Grandin, 2009)
<第8章 組織化>
☆ASDの認知世界は、相互に関連した事実と詳細で構成されている
→ASDの頭の中には多くの偶発性があり、詳細を省略することは解決策の一部を無視することに等しいので、簡単な説明をすることは困難
→しかし、ASDは一般的に非常に粘り強く、目標、一連の手順、必要なリソースが明確であれば、仕事をやり遂げる
<第8章 組織化>
☆ASDは文脈に頼らないので、職場の慣習や政治的関わり状況に影響されず、問題解決や分析する際に新鮮な視点を持つことができる
→時に、ASDは思いがけない結果を生み出したり、型破りな方法で仕事を進めていくことがあり、それがユニークで創造的な解決策につながる
(Best et al., 2015)
<第10章 仕事の質>
☆ASDなどの社会的な状況を理解することが難しい人たちには、職場環境をすべての人にとっても、より良くより生産的な環境にすることができる可能性がある
(Myles, 2012)
<おわりにー自閉スペクトラム症候群>
2024 9/12
ASD、発達障害、発達神経症、精神障害、就労支援、経営
まろまろヒット率4
“マーシャ・シャイナー & ジョーン・ボグデン、梅永雄二訳 『自閉スペクトラム症(ASD)社員だからうまくいく――才能をいかすためのマネージメントガイド』 明石書店 2022” への1件の返信