基礎研究者が書いた自閉症スペクトラム (Autism Spectrum Disorder, ASD) の解説書。
ASDの基礎研究の過程と成果の解説に加えて、それらを通して、「その他大勢」 (定型発達者) がどのように他者や社会を認識して関わっているのかについてを考察している。
読んでみると、当事者でも、治療者でもない、基礎研究者としての立場を明確にしながら、丁寧に解説している姿勢に好感を覚えた。
内容も、「なるほど」と思うところも多く、たとえば、ASDを含む発達障害をどのように捉えているかは、文化や社会によって差があることについて…
韓国では、他の国でASDと診断される人が、「反応性愛着障害」という診断を受けることが多い
→家族の名誉を重要視する文化が背景となり、かつてあった「冷蔵庫母親説」の悲劇が繰り返されている可能性がある
<第8章 社会との関わりからみる自閉症>
…と指摘しているところは、主人公をASDに設定した韓国ドラマの『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』 (2022年) が、「韓国では画期的なこと」と話題になった理由が初めて理解できた。
以下、チェックした箇所 (一部要約含む) …
☆障害=その他大勢の人たちとの違いによって学業や就労、日常生活に制限が出てくる状態
→障害物競走のハードルのようなもの
→絶対的なものではなく、個人と社会との関係によって決まっている
→個性と障害の境目は曖昧であり、社会的、文化的な背景を抜きにして考えることはできない
<第1章 発達障害とは何か>
☆発達障害 (ハードル) の支援プロセス
1: 個人に働きかける方法=ハードルを乗り越えたり、避けたりする練習
2: 環境に働きかける方法=ハードルを低くしたり、横によけたりする措置
<第1章 発達障害とは何か>
〇ギリシア語のautos (英語のauto) が語源のAutismが日本で「自閉」と訳された経緯はよく分からないが、語感としては「Autism」よりも「Autistic wihdrawal」に近い
→海外では100年前 、日本では70年前の医学の知識に基づいた訳語なので現在の理解とずれてくるのは仕方がない
<第2章 自閉症スペクトラム障害とは何か>
☆診断はレッテル貼りをするためでなく、本人への有効な支援を選ぶためにある
→本人や家族に「医者に何とかしてほしい」と思う状態 (愁訴) がない場合は、診断を受けることはない
<第2章 自閉症スペクトラム障害とは何か>
〇ASDの2つの行動特徴
1: 対人コミュニケーションや対人行動の困難さ
2: 限局的・反復的な行動や興味のパターン (こだわり・常同行動)
<第2章 自閉症スペクトラム障害とは何か>
〇伝統的に、日本の精神医学や心理学の世界では、海外で行われている研究結果を「輸入」するとき、日本の文化に合わせた調整をうまくやっている
→もともと優れた研究や臨床の蓄積があることが、「輸入」をスムーズに行うことのできる理由の一つ
<第8章 社会との関わりからみる自閉症>
〇ASDを含めた発達障害と関わるうえでは、治療や介入といった視点だけでなく、「異文化コミュニケーション」の視点が、今後ますます重要になってくる
<第9章 自閉症という「鏡」に映るもの>
☆ASDを含めた発達障害の研究は、定型発達者が抱えている「常識」を疑い、人間とは何か、人間社会とは何かについて考え直すきっかけになる
<第9章 自閉症という「鏡」に映るもの>
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2024 7/12
ASD、発達障害、発達神経症、精神障害
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