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『競争の戦略』 M・E・ポーター著、土岐坤・中辻萬治・服部照夫訳 ダイヤモンド社 1995(新訂)10.27.99

NHK教育で放送されている『おじゃる丸』こそ合法ダウナーだと思う、
らぶナベ@見終わった後はあらゆるやる気を無くします(^^)

さて、今回はかなり手こずった『新訂 競争の戦略』ダイヤモンド社
M・E・ポーター著、土岐坤・中辻萬治・服部照夫訳(1995年新訂)っす。
タイトル通り競争戦略についてとてもダイレクトに書かれた本。
なまじマーケティングとか経営戦略とかいうことを口に出すなら
一度は読んでおかないとお話にならないとまで言われる一冊。
(確かに就職活動でこれ系の話をして恥をかく人間は読んでなかった)
学術書としては新しいしこれクラスの著者にしてはけっこう若いけど
すでにこの分野では古典的な地位を占める学術書になっている。
でもやたらと分厚いので読み始めるのにかなりの勇気がいる本でもある(^^;
現に僕はこの本を読み終わるのに約一ヶ月かかり、
線引き用のマーカーも3本ダメにした。
その上この本の本体自体だけで5631円もするという
まさに時間、労力、費用の三つがかかる大著。
そういう意味で今まで読んだ学術書の中ではヴェーバー著
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫)や
サイモン著『経営行動』(ダイヤモンド社)に匹敵する。
これで有益じゃなかったらポーターに不幸のメール送りつけちゃいます(^^)

具体的な構成としては全16章を3部構成に分けてる。
パート1(第1章~第8章)は「業界における競争の性質を決める基本原理」
として競争戦略の基本的概念や分析手法について一般化している。
この本の根幹を成している重要な部分、理論的主柱にあたる。
パート2(第9章~第13章)は先端業界や衰退業界などのそれぞれ具体的な
業界環境の中で競争戦略をつくるのに必要な業界分析方法を述べている。
ここの部分は応用編というか自分が注目したり置かれている状況に応じて
見直せるようになっている。ガイドブック的な使い方もできる便利な所。
パート3(第14章~第16章)は拡大戦略や統合戦略のように競争戦略において
採用される主要な戦略についてタイプ別に検証している。
総じてパート1とパート2がとても重要だと感じた。
パート1は基本的な理論・概念構築を担う学術書としての性質があり、
パート2は各業界ごとに対する解説書としての性質がある。
一粒で二度は使える確かに手がかかるだけの一冊になっている。
僕的にはパート3はおまけ的なイメージを受けた。

以下は気になってチェックしたところと必要を感じて要約した部分・・・

○”本書の概要”
<戦略策定の古典的方法について>
目的と手段とを区別することで、戦略の本質はとらえられる。

☆「首尾一貫性の検証項目」
1:内的な一貫性があるかどうか
・目標1つ1つが互いに達成可能か。
・重要な運営ポリシーは目標に合致しているか。
・重要ポリシーは互いに強化しあう関係になっているか。
2:環境と適合しているか
・目標とポリシーは業界の好機にうまく乗れるか。
・目標とポリシーは業界の脅威(競争相手の反撃も含めた)を、
 利用可能な企業資源で対処できる程度に抑え込めるか。
・環境がアクションを吸収して相手にさとられぬように、
 目標とポリシーのタイミングがとれているか。
・目標とポリシーはより広範な社会的関心事にうまく対応できるか。
3:企業資源と適合しているか
・目標とポリシーは競争相手よりも会社で利用可能な資源に
 よくマッチしているか。
・会社の変化できる能力に応じたタイミングで、
 目標とポリシーがつくられているか。
4:コミュニケーションと戦略実行力はどうか
・目標は中枢実行担当者に十分理解されているか。
・目標とポリシーそれと実行担当者が責任を果たそうとする
 情熱との間に十分な一致があるか。
・戦略をうまく実行させるだけの十分な経営能力があるか。

パート1:競争戦略のための分析技法

○第1章”業界の構造分析法”
☆競争戦略をつくる際の決め手は会社をその環境との関係で見ることである。
・・・決め手はこれら外部要因に対するその能力の会社間の差違。

「競争を激化させる構造要因」
互いに代替可能な製品をつくっている会社の集団ーこれが業界である。
5つの競争要因ー新規参入の脅威、代替製品の脅威、顧客の交渉力、
供給業者の交渉力、競争業者の敵対関係の5つの競争要因が
一体となって業界の形相の激しさと収益率を決める。
戦略策定の立場ではそのうち一番強い要因が決め手になる。

「敵対関係の強さ」
競争業者間の敵対関係の強さは主に同業者が多いか
似たり寄ったりの規模の会社がひしめいている、業界の成長が遅い、
固定コストまたは在庫コストが高い、製品差別化がないか
買い手を変えるのにコストがかからない、キャパシティをふやすのは
小刻みにはできない、競争業者がそれぞれ異質な戦略をもつ、
戦略がよければ成果が大きい、撤退障壁大きいなどから決まる。

「参入障壁」
主に規模の経済性、製品差別化、巨額の投資、仕入先を変えるコスト、
流通チャンネルの確保、規模とは無関係なコスト面での不利、政府の政策、
参入に対して予想される報復、参入を抑える価格から決まる。

「撤退障壁」
資産の特殊化、撤退コストの高さ、政略的な関連性で問題を起こす、
感情的障壁、政府および社会からの制約から決まる。
☆最悪の例は参入障壁が小さく、撤退障壁が大きい場合だ。
状況が悪化しても業界のキャパシティは減らないから。

「代替製品」
現在の製品よりも価格対性能比がよくなる傾向を持つ製品、
高収入をあげている業界によって生産されている製品を示す。
これらに対しては抑え叩きのめす戦略をとるかそれとも避けられない
強敵として対処する戦略をとるか決めるべき。

「構造分析と競争要因」
☆効果的な競争戦略とは最良の防衛ポジションをつくること。
・・・競争要因の一番弱いところをみつけること、これが戦略である。
競争要因のバランスに務める、変化をうまく利用する、多角化戦略など。

「業界分析と業界の定義」
業界の定義と会社の欲する事業の定義とをはっきりと分けることが、
業界の境界線を引く際の不必要な混乱を避ける有効なやり方である。

○第2章”競争の基本戦略”
☆「三つの基本戦略」
コストのリーダーシップ、差別化、集中。

「コストのリーダーシップ」
低コストの地位は強力な値引き攻勢に対しても防衛してくれる。
買い手が威力を振り回すにしてもせいぜい自社の次に
低コストの業者に対しギリギリの価格水準に値切るくらいものだから。

「差別化」
コストのリーダーシップとは違う仕方で5つの競争要因に対処できる
安全な地位をつくるため業界の平均以上の収益を約束してくれる。
・・・差別化に成功して顧客の忠実性を得られた企業は
代替製品に対しても同業者より有利な立場にいられる。

「集中」
市場全体では低コストも差別化も達成できないが狭く絞られた
市場ターゲットだけだと低コストも差別化も達成できる。

☆「窮地に立った企業とは」
3つの方向の中で少なくとも一つにおいてさえ戦略がつくれない企業のこと。
市場シェアを確保する資本投資もなければ、低コストの競争に参加する
決意もなく、業界全体を相手にした差別化戦略もなく、
限られた狭い範囲での差別化や低コスト地位を生み出す
集中戦略ももたないからだ。戦略の面ではお粗末な立場にいることになる。
結果として企業カルチャーがあいまいになり
組織のあり方や動機づけシステムが動揺する。
→日産がダメになったのはまさにこの戦略理論で説明できる!
コストのリーダーシップ(トヨタ)、差別化(ホンダ)、
集中(スズキ)もできずどちらつかずで地盤沈下したからだ。

○第3章”競争業者分析のフレームワーク”
☆競争戦略とは競争相手よりもすぐれている点を生かして
その価値を最大にするように事業を位置づけることである。
したがって、戦略策定の主眼は、緊密な競争業者分析にある。
すぐれた競争業者分析は以下の質問に答えられるものでなければならない。
1:この業界ではどの企業を競争相手にすべきか、
その企業のどんな動きを競争対象にすべきか。
2:その競争業者の戦略的な動きは自社にどんな影響を及ぼすか、
その動きをどれくらい重視する必要があるのか。
3:その競争業者と競争を避けたほうが望ましい分野はどこか。
☆競争業者の「現在の戦略」「将来の目標」「仮説」「能力」に注目する。
競争業者が抱いている将来の目標と自社の地位と業界の性格に関しての仮説は
あまり重視されていないが競争業者の将来の行動は
この二つの要素によって決まってくることが多い。

「競争業者分析の構成要素」
<潜在的競争業者の分析>
・現在はこの業界にはいないが非常に低いコストで業界へ参入できる業者。
・この業界に参入することによってあきらかな相乗効果が得られる業者。
・戦略の一貫性から見てこの業界への参入が当然と思われる業者。
・流通チャネルの統合を進めている顧客企業あるいは供給業者。
・現在の競争業者と業界外の関連業者との間で今後起こると思われるM&A。

「将来の目標」
競争業者が現在の地位や利益水準に満足しているかどうかを
推測するために目標を知る。現在の戦略を変えてくる可能性が
どれくらいあるか、企業環境の変化や業者の動きに
どの程度の反応を示すかを予想することができる。
・・・自社の戦略変更に対する競争業者の反応も予測しやすくなる。
また、競争業者が何か新しい動きをとり始めた場合には
それにどの程度力を入れる考えがあるのかを知ることができる。
注意:目標分析は企業内のさまざまな組織階層ごとにすべき。
<事業単位レベルでの目標>
1:業績面積での公表された目標、および公表されていない目標は何か。
2:リスクに対する態度はどうか。
3:企業上もしくは非経済上の価値観や信条といったものをもっているか。
4:組織内での責任と権限はどんなふうに配分されているか。
5:管理システムと報酬システムはどうなっているか。
6:どんな経理システムや会計方式をとっているか。
7:経営者たちはどんな人たちで構成されているか。
8:将来の方向について役員間での意見の一致はどの程度あるか。
9:取締役会はどんなメンバーで構成されているか。
10:業務上の契約によって経営活動が制約されているか。
11:政府の規制あるいは社会的な制約条件にしばられているか。
<多角化企業の本社部門と個別部門の目標>
1:その企業全体の現在の業績はどうか。
2:企業全体としての目標は何か。
3:全体戦略の中でのその事業部門の戦略上の重要度はどの程度か。
4:なぜその事業部門が設立されたのか。
5:その事業部門と他の部門との経済上での関係はどうなっているか。
6:トップはどんな価値観あるいは信念をもっているか。
7:自社内の数多くの事業に適用した基本戦略というものを持っているか。
8:他の部門の業績とニーズから考えてその事業部門に
 どれだけの売上目標投資収益率目標を与えているか、
 また資金面ではどんな制約条件を課しているか。
9:どんな多角化計画をもっているか。
10:企業全体の組織構造からその事業部門の企業内での
 地位と目標についてどんな手がかりが得られるか。
11:企業全体の管理および報酬精度の中での
  その事業部門の責任者の待遇はどうか。
12:昇進が早いのはどんな業績をあげた経営者か。
13:その事業部門の責任者は部内から昇進した人か、
  それとも部外あるいは社外の人か。
14:企業全体として社会からの攻撃を受けるような要素をもっていて、
  それが事業部門に影響を及ぼすようなことはないか。
15:企業あるいはトップ・マネイジメントの中の特定の人が、
その事業部門に特別な愛着をもっていないか。
<ポートフォリオ分析と競争業者の目標>
その事業の目標を知る手がかりだけではなく、投資収益率や
マーケット・シェア、あるいはキャッシュ・フローなどの点から
その事業にどの程度力を注ぐのか、またその戦略上での地位を変える
可能性がどれくらいあるのかを知る手がかりになる。
・・・ポートフォリオ分析を使うと競争業者の事業を「鐘のなる木」、
「刈り取り」、「これから成長させようと意図している事業」に区分できる。
<競争業者の目標と戦略上での位置づけ>
戦略策定の一つのやり方は競争業者に脅威を及ぼすことなしに
目標を達成できるような位置を市場の中に見つけだすことである。

「仮説」
あらゆるタイプの仮説を調べることによって経営者が自社環境を
認識する場合に知らず知らずのうちに入り込んでくる偏見、
もしくは盲点を見つけだすことができる。
1:コスト、品質、技術水準、およびその他の主要な点において、
 その地位がどのへんにあると信じているか。
2:特定の製品あるいは特定の経営政策に対して歴史的あるいは感情的に
 強い一体感を抱いているか、これからのうちどれと結びつきが強いか。
3:文化や地域あるいは国のちがいによって事象認識法と
 それの重要度の決め方にちがいが見られるか。
4:長年にわたってしみ込んだ組織上での価値観もしくは規範があり、
 それらが事象の見方に影響を及ぼしているか。
5:その製品の将来の需要についてどんな考えを抱いているか、
 また業界の動向が意味するところをどのように認識しているか。
6:同業他社の目標と能力をどんなふうに考えているか。
7:新しい市場条件と合わないような業界の定型化した知恵、
 あるいは因習的な荒っぽい法則、業界固有のやり方を信頼しているか。
<事業の歴史>
1:最近数年間の実績と比べて現在の業績とマーケット・シェアはどうか。
2:当該市場における経歴はどうか。
3:本来どの分野でスターだったのか、どの分野で成功したのか。
4:他社のある特定の戦略や業界内での事象に対して、
 これまでにどんな対抗行動を示してきたか。
<経営者の経歴とそのアドバイザー>
1:経営者の専門性は何か。
2:これまで採用して成功した戦略と失敗した戦略のタイプは何か。
3:今の事業以外にどんな事業を経験してきたか、それらの事業の経営方針と
 戦略にはどんな特異点があるのか。
4:どんな大事件と遭遇してきたか。
5:どんな社外活動や社外との関わりをしているか。
6:その企業が採用しているコンサルタント、広告代理店、銀行などは何か。

「能力」
核になる能力、成長能力、迅速な対応能力、変化への適応能力、
持続力から構成されている。

「四つの構成要素の統合」
<攻撃的な動き>
現在の地位での満足度、予想される動き、予測される動きの強さと重大さ。
<防御能力>
弱点、挑発、対抗行動の効果。
<競争分野の選定>
☆競争業者の動機を交錯させたり目標間の整合性を
なくすような状況をもたらす。
・・・ある特定の動きに対する対抗策そのものは
有効であっても結局は企業全体のより大きな利益を損なうという
状況に追い込む。これはすでに市場で成功し確固とした地位を
維持している企業に対して有効。

「競争業者分析と業界動向の予測」
<将来の業界動向予測>
1:それぞれの業者の予想される動きが相互作用を引き起こすなら、
 それは業界の将来にどんな意味をもつか。
2:それら業者の戦略は一点に収れんしていくのか、
 そうなれば共倒れにならないか。
3:業界の予想成長率に見合うだけの成長率を維持しているか。
4:予想される動きが合体して業界構造に影響を及ぼすようになるか。
<情報伝達と統合の重要性>
すばらしいデータが収拾されてもこれが戦略策定に生かされないなら
データ収集時間は無駄になる。
すぐ失われるような断片的なデータでも統合できれば有効な資料になる。

○第4章”マーケットシグナル”
競争相手の動機、意図、目標を示す手がかりにもなるが
事実を隠す見せかけの役割も果たす。

「動きの予告」
有利な地位占領、相手の行動を妨げる脅威、テスト、自社の意思伝達、
懐柔、回避、評判の確保、社内の意思統一などの役割を担う。

「間接的な攻撃」
間接的に反撃できるような市場で小さなシェアを持っていれば
自社のメイン市場への競争業者進出を抑える有効性がある。

○第5章”競争行動”
「脅威的な行動」
反撃の遅れと手強さの間にトレードオフ関係がある場合、
この二つをうまくバランスさせる必要がある。

「防御的な行動」
☆相手に対してその動きが賢明でなかったと思わせるのがすぐれた防衛。
競争相手に譲歩を強いることができてこその防衛効果。
<競争基盤の否定>
相手が目標達成の基盤にしているものを否定してかつその状態が
継続すると思いこませることで行動をやめさせることができる。

「約束」
攻撃及び防御を計画し実施する場合の最も重要なコンセプトは約束。
自社の経営資源と意図を曖昧ではなくはっきりと伝える方法。
約束の価値はその抑止力にある。

「情報と秘密についての覚え書き」
どんな情報でもそれを公開する場合にはそれが競争戦略の
重要な一部であるという認識に立って実施されなくてはいけない。

○第7章”業界内部の構造分析”
「競争戦略の次元」
専門度、ブランド志向度、プッシュ型かプル型か、流通業者の選択、品質、
技術のリーダーシップ、垂直統合、コスト面での地位、サービス提供度、
価格政策、力、親会社との関係、自社と事業を行っている国の政府との関係
・・・などで区分する。

「戦略別企業グループ」
☆<戦略グループと移動障壁>
参入障壁はその戦略グループへの業界外からの企業参入を防ぐだけでなく、
その業界内の企業が一つの戦略グループから別のグループへ
移動するのを防ぐ役割も果たす。(移動障壁)
この考えは業界内での収益性という点で企業間に常に一貫した
格差のある理由も説明できる。業界内の戦略グループは
それぞれ固有の移動障壁をもっており、
それが企業間の収益性に格差をもたらしている。
さらにこの考え方を使うと戦略を変えても全部が全部、
成功するわけではないのに企業ごとに採用している戦略が
異なっている理由も説明できる。

「業界内構造分析が戦略策定に果たす役割」
☆ある業界における競争戦略の策定とは参入すべき戦略グループの選択。
→戦略策定の一番の基本は自社の長所と短所、特に他社にない競争力を
その環境内の利益見込みとリスクに合わせることである。
→長所と短所を検討するフレームワークには構造上から見るやり方と
実行上から見るやり方の二つのタイプがある。

○第8章”業界の進展・変化”
「業界を予測するためのフレームワーク」
業界の変化を説明するよりも変化の原動力になるものを知ることの方が
実り多い→このメカニズムが進展過程。

「進展過程」
成長の長期変化、買い手セグメントの変化、買い手の学習、不確実性の減少、
専有知識の拡散、エクスペリエンスの累積、規模の拡大・縮小、
インプットコストと通貨コストの変化、製品イノベーション、
マーケティングイノベーション、生産工程のイノベーション、
関連業界の構造変化、政府の政策変化、参入と撤退などから決まる。

☆「企業が業界構造を変えることができる」
企業のとる戦略行動によって業界の構造を変えることができる。
→業界の進展を迷惑な既成事実として受け入れるのではなく、
利益機会と考えなければならない。

パート2:業界環境のタイプ別競争戦略

○第9章”多数乱戦業界の競争戦略”
「多数乱戦の原因は何か」
参入障壁の低い、規模の経済性やエクスペリエンス曲線が効かない、
高い輸送コスト、在庫コストが高く売上変動も大きい、創造性が売りもの、
買い手や供給業者が強すぎて大手でも有利にならない、多様な市場ニーズ
規模の不経済が致命的、人手によるサービスが決め手、撤退障壁、新規業界、
いちじるしい製品差別化、各地域の条令、政府による企業集中の禁止。

「多数乱戦業界を制圧するには」
規模の経済性やエクスペリエンス曲線が作用する状況を作り出す、
多様な市場ニーズに標準品で対応する、M&Aで利益の出る規模まで拡大する、
多数乱戦の原因を無力化するか経営から切り離す、
業界の動向をすばやくかぎとる。

「多数乱戦に対処する方法」
多数乱戦は多くの場合いかんともしがたい経済原則が働くから起こる。
こういう状況では戦略によって自社の立場をどう変えていくかが
何にもまして重要になってくる。

「多数乱戦業界の競争戦略策定手順」
1:業界の構造はどうか。競争業者はそれぞれどういう位置にいるか。
2:多数乱戦の原因は何か。
3:多数乱戦状態を変えられるか。その方法は何か。
4:変えて利益が得られるか。その場合の自社がめざす位置はどこか。
5:多数乱戦が避けられない場合はどう対処するのが最善か。

○第10章”先端業界の競争戦略”
形が整ったばかりの業界もしくは再編された業界のことで古い業界でも
環境変化によって競争の仕方が変わればこの業界と同じ問題が起きる。
☆戦略策定の観点ではこの業界の特徴は競争のルールが無いことである。
自社にとって有利なルールを創りあげるのが競争の争点になる。

「構造的環境の特徴は何か」
技術の将来性が確定的ではない、戦略が定まっていない、時間的視野が狭い、
コストは高いが急速に下がる、スピンオフ企業が次々に生まれる、
初めての買い手ばかり、助成金が出る。

「どの市場が早く開拓できるか」
新しい業界の製品をどの市場が早く受けいれ、
どこが遅くまで扉を閉ざしているかを見定めることが重要。

「戦略の選択」
先端業界の戦略策定ではこの時期につきものの不確定さやリスクに対する
対処が必要だがどんな戦略でも採用できてそれが当たると大きい。

○第11章”成熟期へ移行する業界の競争戦略”
「移行期に業界はどう変わるか」
シェア競争が激化、顧客が買い慣れる、コストとサービスに重点が移動、
過剰にならないように増強するのが難しくなる、国際競争が激しくなる、
新製品や新用途が出にくくなる、流通業者のマージンが減るが力は強まる、
利益は低下するが一時的な場合と永続する場合とがある。

「移行期は戦略にどう影響するか」
あらゆるコストで主導権をとるか、差別化か、一点集中主義か、
成熟期に戦略の迷いは許されない。

「成熟期は組織にどんな影響を与えるか」
業績目標の引き下げ、社内規律の厳しさを増す、昇進が少なくなる、
分権から再び中央集権化へ。

「移行期業界の社長のあり方」
厳しい原価管理、職能部門間の調整、マーケティングなどに関する手腕は
急成長業界で企業の形を整えてゆくこととはまた別の手腕。
組織を支えどのように生き残らせようかと案じることは
未開地に挑む気分が消え失せることもあり、特に創業経営者の中には
移行期であると認めなかったり経営の現役から退くなどの兆候がみられる。

○第12章”成熟期へ移行する業界の競争戦略”
「衰退期の競争を左右する構造要因」
・需要面:不確実性、需要衰退の速さとパターン、残った需要領域の性質、
衰退の原因(代替品か人口の変化かニーズの変化によるものか)。
・撤退障壁面:転用のきかない耐久資産、撤退の固定コスト、情報障壁、
他事業との関連性、金融市場への影響、垂直統合、経営者の感情障壁、
政府と社会による障壁、資産処分。

「衰退期の戦略」
<リーダーシップ戦略>
シェアを確保してリーダシップを握る。
<拠点確保戦略>
特定のセグメントで強力な地位を築くか防衛する。
<刈り取り戦略>
もてる力を増加させずに活用してうまく投資を回収する。
<即時撤退戦略>
できる限り早く投資を回収する。

「衰退期戦略の選択」
他社と比較した自社の業界地位に合わせてどのように業界に
踏みとどまるのが望ましいのか判断する過程。
1:有力な競争業者はそれぞれどんな撤退障壁に直面しているか。
 どの企業がすばやく撤退してどの企業が踏みとどまるか。
2:踏みとどまる企業の強い点は何か。
 撤退障壁と考え合わせてどの程度まで踏みとどまるのか。
3:自社の撤退障壁は何か。
4:残る需要領域と対比して自社の強みは何か。

「衰退期の落とし穴」
衰退に気づかない危険、消耗線の危険、
大した力もないのに刈り取り戦略を採る危険。

「衰退期にそなえる」
撤退障壁を高くしてしまうような投資や活動はできる限りひかえる、
衰退期に有利な状況になると考えられる市場セグメントに重点を置く、
他社が代替製品に切り替えるコストがかかるように手を打つ。

○第13章”グローバル業界の競争戦略”
「グローバル競争が有利になる原因」
比較優位性、生産・物流・マーケティング・購買における規模の経済性、
グローバルなエクスペリエンス、製品差別化、独自の製品技術、生産の移動。
・・・これらの原因がグローバル化によって経済性が生じる側面が
事業全体のコストにとってどれほど重要か、
事業の競争力にとってどれほど重要なのかで決まる。

「グローバル競争への障害」
<経済的障害>
輸送と在庫のコスト、国によって異なる製品ニーズ、
侵入を許さない流通チャネル、セールスパーソン、現地での修理部門、
リードタイム、地域市場内での複雑なセグメンテーション、
需要が広まっていない。
<経営管理上の障害>
国によって違うマーケティング、
変化の激しい技術、国情に合わせたサービス。
・制度上の障害:政府による障害、認識不足や経営資源不足から来る障害。

「グローバル業界への進展」
<きっかけとなる環境変化>
規模の経済性が大きくなる、輸送と在庫コストが下がる、政府規制の緩和、
流通チャネルの合理化、生産要素コストの変化、経済・社会環境差の縮小。
<戦略イノベーションがグローバル化を刺激する>
製品の再定義、セグメントターゲットの明確化、国別製品のコスト低下、
企画部品の多用、完成品に代わり主要部品の製品、発想の転換。

「グローバル業界での競争」
政府の産業政策と企業の競争行動、主な進出市場政府との関係、
企業全体としての競争、競争業者分析の難しさ。

「戦略案にはどんなものあるか」
業界の全品種で競争する、特定のセグメントに集中する、
特定の国に集中する、安全地帯を狙う。

パート3:戦略デシジョンのタイプ

○第14″垂直統合の戦略分析”
垂直統合とは技術的には別々の生産、流通、販売、その他の経済行動を
一つの企業内にまとめることである。
多くの垂直統合デシジョンはそれにからむ経理計算を中心として
作るか、買うかのデシジョンなのである。
しかし数字だけに頼らず間接的な影響も考えてその大きさと
戦略的意味を判断すべきである、これがデシジョンの核心である。

「戦略的利得とコスト」
川上企業とは売る側の企業、川下企業は買う側の企業。

「戦略的な利得」
統合の経済性、技術の習得、需要と供給の確保、取引圧力の回避、
差別化の強化、参入又は移動障壁を高める、収益の高い事業への参入、
系列化が進む上での自衛力向上。

「統合の戦略的コスト」
移動障壁を乗り越える費用、打つべき施策の増加、取引相手の硬直化、
撤退障壁を高める、必要資金の大きさ、R&Dの他社依存ができなくなる、
バランス保持の必要性、刺激が鈍る、異なった経営方式の必要性。

「準統合」
長期契約と完全所有との中間のどこかにある関係をつくり出すことである。
少額の株式投資、融資の保証、購入の前払、独占取引契約、
専用配送施設、共同R&Dなど。
このような利益共同体のメリットは善意、情報の共同化、
経営者のつき合い、相互間の債権責務など。
決め手になるのは準統合によって形成される利益共同体が完全統合よりも
コスト・リスクが小さく、それでいて利得は入手できるかどうかである。
→エニックス株を購入した僕は準統合なのか?

「垂直統合デシジョンに見られる錯覚」
一定の条件下では垂直統合が戦略上の地位向上につながるものの、
戦略的に弱い経営を立て直すことには不十分である。
→安易な統合への警鐘。

○第15″キャパシティ拡大戦略”
「キャパシティ拡大デシジョンの構成要素」
競争業者の行動の予測は一回限りで終わるものではない。
なぜなら一社の動きが他の競争業者に影響を与えるからである。
特にその業者が業界のリーダーである場合は他社への影響は大きい。

「キャパシティ過剰になる原因」
<技術面での原因>
規模の経済性・習熟曲線が大きい、キャパシティ拡大には時間がかかる、
繊細最小効率 (MES)が大きくなる、生産技術の変化、
一度に大きくキャパシティを増やす。
<業界構造上の原因>
強力な撤退障壁、供給業者の力、信頼性の確率、
競争業者の統合化、キャパシティのシェアが受注量に影響、
生産能力の新しさとタイプが需要を左右する。
<競争上での原因>
同業者数が多い、信頼できるリーダー企業の欠如、新規参入、
他社に先駆けた設備拡大が利益を増やす。
<情報上での原因>
将来への過大な期待感、競争業者の力の把握を誤る、金融機関からの圧力
マーケット・シグナル機能の崩壊、業界構造の変化。
<経営上での原因>
生産指向型の経営者、設備を拡大した場合のリスクよりも
しなかった場合のリスクが大きい。
(後者の場合は地位と業績にも大きな損益となる)
<政府政策の原因>
設備投資を誘う不当な税制、自国産業育成の方針、雇用の維持と促進圧力。

「需要先どり戦略」
市場の大部分をあらかじめ押さえ競争業者の設備拡大意欲をくじき
市場への参入を遅らせることを意図したもの。
<以下の条件すべてを満たさなければ危険が大きい>
期待される市場規模に見合うだけの設備拡大、おこなう企業の信頼性、
規模の経済性もしくはエクスペリエンス曲線効果が
大きくあらわれる市場での設備拡大、
競争業者が行動する前に先どり戦略意向があることを示す能力、
競争業者による進んで身を引く意志(経済性以外で目標を持っている、
その事業が企業戦略遂行上で核になっている、利益を犠牲にしても
市場地位の維持をはかる意志のある企業を相手にするのは困難)。

○第16章”新規事業への参入戦略”
市場要因の働きが不完全な業界を見つけることが参入の前提。
市場用要因が完全に作用しているなら平均以上の投資収益は無理。

「自社内での開発をもとにした参入」
構造上の参入障壁と参入した業界の既存業者の反撃の二つの障壁がある。

「反撃が生じる可能性」
低成長業界、汎用品もしくは汎用化した製品業界、固定比率の高い業界、
少数寡占業界、老舗の既存業者がある業界、
既存業者がその事業を戦略的に重視している業界。

「参入業界の確定」
<不均衡状態にある業界>
新しい業界、参入障壁が高くなりつつある業界、情報の少ない業界。
<反撃が緩慢か非効果的な業界>
参入に対する反撃コストが得られる利得よりも大きい業界、
家父長的な支配力をもつリーダー企業の結束固いグループがある業界、
既存業者の現在の事業を守る観点から反撃コストが高過ぎる業界、
因習的な観念が支配的で参入業者がこれを利用できる業界。
<参入コストが他社よりも少なくてすむ業界>
<自社の力によって業界構造を変えることができる業界>
<参入によって自社の既存事業にプラス効果が生じる業界>

「参入の基本コンセプト」
製品コストの引き下げ、低価格販売によるシェア獲得、
市場における新しいセグメントの発見、他の流通網を利用する、
広い意味でより優れた製品販売、新しいマーケティング手法の導入。

「吸収合併による参入」
事業買い取り価格は会社市場で設定されている点が重要。
<利益をもたらすだろう吸収合併>
底値の額、会社市場の機能が不完全、他の買い手の非論理的な行動、
吸収した事業をうまく運営するための独自の能力。

「段階的参入」
ある戦略グループへ参入して次に別のグループに参入するという
段階的な参入戦略をとることも可能。(参入リスクの軽減)

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1999 10/27
経営学、戦略論、経済学
まろまろヒット率5

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『敗者のゲーム』 チャールズ・エリス著、鹿毛雄二訳 日本経済新聞社 199909.09.99

5070円の時に買ったエニックス株の先週終値は1万600円、
さらに1.5倍に分割されているので(100株→150株に)
50万7000円を投入した株が現在の時価総額159万円になっているっす。
資産を3倍にしてようやく安定した投資戦術を展開できるようになったと
感じている、らぶナベ@自由化スタートの10月から本格化だと踏んでるっす。

さて、『敗者のゲーム』チャールズ・エリス著、鹿毛雄二訳
(日本経済新聞社)1999年初版を読みました。
この本は株式投資関係のHomePageを見ると
必ずと言って良いほど推奨本として紹介されている投資本。
いままで投資関係の本は何だか薄っぺらそうなので読んでこなかったが、
“Winning The Loser’s Game”という原題に妙に引かれたので読んだ一冊。
確かに市場では圧倒的多数が失敗者で圧倒的少数が成功者になる、
つまり統計的に外から見れば市場とは「敗者になるゲーム」でしかない。
(これはどこの世界でもそうなんだろうけど)
それを踏まえた上でその中でも確実に勝っている人間はいる、
彼らを勝たせているのは一体何なのか、何が勝者と敗者を分けているのか、
ということに注目して投資における重点や姿勢を述べている本。

この本は簡単で基本的なことに集中することの必要性を繰り返し述べている。
そしてたとえ正確な答えがすぐには出なくても自分なりに
市場や自分自身への分析や考察を続ける重要性を特に強調している。
(個人投資家にとって一番の危険は市場の変化などの外部要因ではなく
本人が投げやりになり精神的放棄に陥ることだと警告している)
その結論の結び方が面白くて・・・
「問題は『運命の星でなく、われわれ自身の中にある』」として、
投資を学びたいならこの言葉が載っている・・・
「シェークスピア『リア王』を読むことをお薦めする」
・・・と皮肉っているのに笑ってしまった。
そういえば最近、答えがでないからという理由で
問題から眼をそらそうとする姿勢の人を何人か見たことがあるが
それでやっていけるほど人生は甘くないだろうということを
あらためて感じた。人生とは間違いなく「敗者のゲーム」なんだから。
少なくとも問題に向き合わないでやっていけるほど僕は器用でないし
何よりもそれでは決して満足はできないだろうと妙に感心してしまった。

また、この本ではそれに関連して・・・
「その土地に家を建てるためにその土地の気候風土を考える場合も
前の日の天気で判断することはないだろう、投資も同じだ。」
・・・というような表現を使って細かいことにまどわされず
大目標を大切にして、で~っんと構えることを奨めている。

この本はHowto本というより個人投資家への指南書的な内容なので
金融工学的な理論は少なかったがそれだけに説得力があった。
敗れるはずの舞台で勝つことの快感、負けが自然の状態からの挽回、
一度それを体験するとその味が忘れられないんだろう、僕も同じだ(^_^)
この本を読んだ結論・・・
「人生は自分への投資だ、敗者のゲームから逃げるな」。

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1999 9/9
戦略論、株、経済学
まろまろヒット率4
確実 投資

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『軍事思想史入門』 浅野祐吾著 原書房 197905.18.99

テレビ東京系列にて火曜日の7時から放映している
『KAIKANフレーズ』を見て「これって俺たちの時代で言うところの
『アイドル伝説えり子』のバンドヴァージョンか?」と感じている、
らぶナベ@しかし『アイドル天使ようこそようこ』は良かった、
田中陽子はかなりきっつかったけど(^^)

さて、『軍事思想史入門』浅野祐吾著(原書房)1979年初版。
中世から現代までのヨーロッパ史と古代から現代までの中国史における
軍事思想の展開を通史的に紹介している一冊。
断片的なものをつなげ合わせたという側面が強いために、
読んでいてそれほどガツンと来るような箇所は少なかったが
一度はこのようにまとめて軍事思想史を見てみることは必要なのだろう。

この本の中でもっとも印象深かったのは戦史研究に対する批判の代表例として
常にやり玉に挙がる戦前の軍国主義時代に対しての反論として・・・
「決して、戦争や軍隊についての知識が日本人に普及していたのではない。
むしろそれは軍事機密の名の下に、
国民の手の届かない所に秘蔵されていたのである。
・・・つまり少数の専門家と、多数の無知な人間というのが
戦前の軍事思想の普及状態だった。」
・・・と述べている箇所は実に説得力があるものだった。

以下はこの本でその他にチェックしたところ・・・

○プロイセンのフリードリッヒ大王の言葉・・・
「戦勝とは敵にその地位を譲ることを余儀なくさせることである。」

○よく話題にのぼるモルトケとシュリーフェンの違いについては
そのいくつかを列挙して対比している、以下はその一部・・・
「モルトケは撃破しやすい敵をまず攻撃しようとしたが、
シュリーフェンは最も強大で、危険な敵を
全力をあげて撃滅する必要を説いた。」
「モルトケが外交との調節をはかることを考えたが、
シュリーフェンは政治家を信ぜず、武力による撃滅戦に傾倒した。」
「モルトケが作戦計画において初期作戦を重視し、
綿密な計画作戦を指導するが、
その後は状況の変化に対応する情況作戦を考えたのに対し、
シュリーフェンは全期間を通じて緻密な計画作戦が可能であると信じた。」

○フラーからの引用・・・
「小銃が歩兵をつくり、歩兵が民主主義をもたらした。」

○毛沢東の十大軍事原則・・・
1「まず分散した敵を討ち、集中した強大な敵はあとで撃つ。」
2「まず小、中都市および広大な郷村を占拠し、あとで大都市を占領する。」
3「敵の生産力を殲滅することを主目的とし地域の奪取は主目的としない。」
4「絶対優勢の兵力を集中し、敵を四囲から包囲殲滅につとめ、
 不徹底な消耗戦を避ける。」
5「準備と確信の無い戦いは行わない。」
6「勇敢に戦い、犠牲と疲労、連続作戦を恐れない気風を養うこと。」
7「つとめて運動戦によって敵の殲滅をはかる」
8「都市攻撃にあたっては敵の守備薄弱部を、
 中程度の守備に対しては状況と能力の許す限り機を見て、
 堅固な守備に対しては条件の成熟を待ってこれを奪取する。」
9「敵の兵器と人員の大部を捕獲、捕虜として自己を補充する。
 わが軍の人力と物力の補給源は主として前線にある。」
10「部隊の休息と整備は二つの戦役の間をりようして行うが、
 休息を長きに失せぬよう、また敵に反撃の余裕を与えない限度で行うこと。」

○あとがきにて・・・
「歴史は過去を取り扱うものであるが、
それを扱う方法は過去からだけでは生まれてこない。
将来に対するある種の見通しがあってこそ
過去の扱い方も出てくるのである。」

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1999 5/18
戦略論、政治学、歴史
まろまろヒット率4

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『戦争学』 松村劭著 文芸春秋 199804.04.99

スキンヘッドにした、らぶナベ@「変質者っぽい」と言われて
間違った方向にイメチェンしてしまったことに後悔中っす(T_T)

さて、『戦争学』松村劭著(文芸春秋)1998年初版を読み終えました。
著者は陸上自衛隊で作戦幕僚や総幹部防衛部長などを歴任した元陸将補。
(つまりホンマもん)
そのためか新書なのにこの本は戦争学というなじみの薄い内容を
有史以来から核戦争の時代まで戦略、戦術の変遷を
体系だって既述しようとしている珍しい一冊。
このような系統の入門書としてはなかなかの良書だろう。

内容の方は最初に戦略と戦術を・・・
「戦略は、戦場における勝利のためのリスクを最小限にするように
事前に準備し、また戦場における勝利の果実を最大限に活用する策略。」
「戦術は、戦場において最大のリスクに挑戦し、
最大の勝利を獲得するための術。」
・・・と著者なりに定義してから始めている。
また、冒頭部分で日本の平和論には
戦術研究が徹底的に欠けているとしている。
忌むべき病気を研究する医学のように忌むべき戦争を研究する戦争研究が
あまりにもおざなりなことを、こういう本の例にもれず嘆いている。

以下は気になったり印象に残っている点を列挙・・・
指揮官の決断力についての既述の中で、
元の状態の把握、微小変化の発見、何物かの認識、
敵か味方かの識別、真偽の判別、正確な報告の伝達のそれぞれが
80%の精度であると仮定して実際に頭脳に入ってくる情報について・・・
「指揮官は約25%の情報量で決断を求められている。」
・・・と断言しているのはちょっと言い過ぎのような気がしたが
完璧を踏まえてからしか動かない官僚思考型が多い日本の中では
強調したかった点なのだろう。僕も同感してしまう。

戦史の基本中の基本であるカンネーの戦いについては・・・
「この戦闘は戦術の極意をすべて含んでいる。
弱点を見せて敵を中央突破の攻撃に誘い込んで逆に敵に弱点を生じさせ、
歩兵陣の両翼の防御と、中央の歩兵陣の遅滞行動で敵を拘束し、
左翼の騎兵で機動打撃する攻撃。」と述べている箇所は
今まで僕が読んだこの戦いについての説明の中では
一番簡潔でかつ要点をまとめてくれていると感じた。

「戦時向きであり、平時向きであるような武将は、この世に存在しない。」
・・・とチンギス・ハーンが述べていると書いているが
どうもここらへんはうさんくさい。
リデル・ハートの著作あたりからの引用か?

キャプテン・ドレイクの言葉として・・・
「イングランドの防衛線は国境や英国海峡にはない。
大陸側の港の背中にある。」
・・・としている言葉は海洋防衛の基本を示す言葉だろう。
ただこの純軍事的な考えが日本の朝鮮侵略につながっていったという
政治的事実も無視できないと思う。

そして、この本の中でもっとも面白かったのは
ナポレオン戦争以降盛んになった戦史研究についてだ。
一般的に戦闘開始以前の理論戦闘力が優位な側が勝つという考えが
当然のこととされている。(当たり前と言えば当たり前だね)
しかし、過去605の戦例から理論戦闘力の比
(「Force Raito」=「F.R」)を表にしてまとめてみると・・・
理論戦闘力が優勢側の勝利は辛うじて過半数を超える56%で
劣勢側の勝利は36%(残り引き分け)。
また、劣勢側が攻撃したケースが26%あり、
そのうち勝利もしくは引き分けが59%になっている。
事前に相手より三倍以上の兵力整えられれば勝利するなどのような
一般化されている常識は史実からは遊離していると述べている。

また、ソ連のチェモシェンコやドイツのグーデリアンなどに
強い影響を与えたとされるJ・F・フラーの
『機甲戦ー作戦原則第三部の解説ー』を紹介しているのだが
この中で戦いの原則を著者なりの注釈を加えて既述している。
特に・・・
「戦いにおいては、明確な目標を確立し、徹頭徹尾、追求せよ。
(注)当然の話であるが、これほど実行が難しいものはない。」
「敵の作戦計画を破壊するように、機動せよ。
機動の目的は、敵の精神の均衡を破壊することである。
(注)馬鹿な指揮官は、敵の物理的戦闘力を破壊しようとする。
優れた指揮官は、敵の思考力を破壊する。」
「集中の原則・・・(注)わが決勝点に戦闘力を集中しようとすれば、
敵も集中しようと努力する。
要点に対して相対的に優勢な戦闘力を集中するには、
適切な分散によって敵に分散を強要することが必要である。
集中のタイミングは、敵の反応が遅れた瞬間である。」
・・・などは様々な方面にも応用できるものだろうが
以前読んだリデル・ハートの理論そのままといった感じだった。

ロンメルの言葉として・・・
「大胆な作戦は、常に予備と代替の作戦計画を持っている。」
・・・これもリデル・ハートの『戦略論』などに添ったもの。

また、フラーはこの本の冒頭で研究を含めた戦前での準備について・・・
「戦争になって、新しい戦闘教義を創造することは、
よほどの天才でない限り不可能である。」と述べているが
これは戦争だけでなくすべての物事においても通じることだろう。

それとこの本を読むまで意外に理論として認識していなかったのが
航空戦力を砲兵の代わりとして使用するということだ。
ポーランド侵攻戦でグーデリアンを始めとするドイツ軍は
フリードリッヒやナポレオンが砲兵に騎兵を支援させたように
航空戦力に機甲部隊を支援させたとしている。
航空機はその維持費の高さ、防御力の脆弱さ、運用の難しさから
騎兵の後継者とした考えを僕はもっていたが砲兵の後継者としての
運用が現代戦でのデビューでもあったのだということが意外だった。

十七世紀の英国の海軍戦闘訓令の失敗から有事における法の原則を・・・
「決められないことは決めるな!」と言い切っているのは
ちょっと行きすぎだと思う(^^;

冷戦後の戦争作戦については連合作戦には戦闘力の要素を
相互に補完し合う方法(古代ローマ型)と
連合する国々がそれぞれ完全な軍事力の要素を持って連合する方法
(第二次大戦型)があるが、前者はかつて技術的に困難が多いことと
連合部隊内における主権の問題によって崩壊したことになっている。
そのため「戦闘力の要素を補完し合う連合作戦は過渡期の方法であろう。」
と述べているが最近のNATOによるユーゴ空爆などは
前者に位置するものだろうこれからどうなるか見きわめていきたい。

最後に・・・
「名将は、育てられるものではない。育つ環境を与えるだけである。」
・・・というのは軍事教育だけでなく教育すべてに通じる言葉だろう。

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1999 4/4
戦略論、歴史、政治学
まろまろヒット率3

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『補給戦―ナポレオンからパットン将軍まで』 M・V・クレヴェルト著、佐藤佐三郎訳 原書房 198012.23.98

らぶナベ@98年ももうすぐ終わりっすね、
たぶんこの本が今年の読み納めの本になるんでしょう。

今年の僕は吉本プロジェクトの運営と自身の就職活動と大学院入試準備など、
間違いなく今までの人生の中で一番忙しい年だったので
(こんなに新幹線、飛行機使ったのも始めて)
なかなか一冊の本をちゃんと読むことができなかったんだけど
この本を読み終えて一年に読んだ本を数えてみると、
1998年は35冊の本を読み終えたことになるっす。
95年(1回生時)に読んだ総数17冊は問題外として
(遊びまくっていたから)
何とか96年(2回生時)の総数31冊を辛うじて越えている程度。
97年(3回生時)の総数68冊には遠く及ばない。
・・・まだ低回生のみんな、いまのうちに少々無理してでも
読めるだけ本は読んでおきなさい。
じゃないと責任を担うポジションについてホントに時間が取れなくなった時に
はまったく本が読めなくなってダメダメ人間になっちゃうよ(;_;)

さて、『補給戦―ナポレオンからパットン将軍まで』マーチン・ヴァン・クレヴェルト(クレフェルト)著、佐藤佐三郎訳(原書房)をば。
戦史において戦略、戦術などの目立つ面ではなく補給という
地味だが結果に対して決定的要因を与えるものに注目した本。
将軍や司令官やひとたび命令を下せば思い通りその軍団が動き、
トップの戦略や決断だけが勝敗を分かつ要因だと思いがちになる
この分野に一石を投じている非常に興味深い一冊。

リデル・ハートによるシュリーフェン計画の考察はドイツ軍の旋回運動にしか
注目せずその補給システムを無視しているという批判に始まり
「ナポレオンを『戦争の神様』と呼び、ナポレオンの制度の本質と
見なしていたものを表現するために、『絶対的戦争』という言葉を
発明したのは、クラウゼヴィッツであった。」と、
クラウゼヴィッツがナポレオンを讃えるあまり
その活動に決定的な影響を与えた補給体制を無視したと論述を展開している。
特にこの本の後半部分、第6章「ロンメルは名将だったか」、
第7章「主計兵による戦争」(第二次大戦中の連合国の補給に注目した章)は
普通、物量と一言で単に言い切ってしまう補給というものが
いかに多様な要素をはらむかということを述べている。
この本の結論的部分と言うべき最終章のタイトルが
「知性だけがすべてではない」という名前なのが
この本を一番言い表しているように思える。

以下はこの本のテーマである「補給」についての著者の結論的見解として
考えられるウエーベルの言葉の抜粋・・・
「諸君が軍隊をどこへ、いつ移動させたいと思っているかを知るには、
熱錬も想像力もほとんど必要としない。
だが、諸君がどこに軍隊を位置させることができるか、
また諸君がそこに軍隊を維持させることができるかどうかを知るには、
たくさんの知識と刻苦勉励がとが必要である。
補給と移動の要素について本当に知ることが、
統率者のすべての計画の根底とならなければならない。
そうなって始めて統率者は、これらの要素について危険を冒す方法と時期とを
知ることができるし、戦闘は危険を冒すことによって
始めて勝利が得られる。」

また、以下の箇所は著者の意見が結論的に述べられていると
思われるところの抜粋・・・・
「歴史上の偉大な軍人は、計画立案の時間的長さには限界があることを
悟っていた。これを悟らなかった軍人は、必ずしも成功を収めなかった。
過去に存在したおびただしい数の司令官たちは、
政治的運命の変遷や戦術的条件の変化によって、
理想的だと考えていた数量と種類に近い資源を使って、
戦争をすることができなかったであろう。
このことは、司令官にはある種の個人的資質が必要だということを意味した。
例えば適応性、機略縦横、即製能力、そしてなかんずく決断力である。
これらの資質を欠いていたら、
いかに分析的頭脳を持ち洞察力に富んだ司令官でも、機械より劣るであろう。
だが司令官がそうした資質を発揮するためには、柔軟性のある幕僚と、
過度の組織化によってこちこちになっていない指揮機構が必要だ。」

以下はそれ以外の興味深かった箇所・・・

「一般的に兵站の歴史とは、軍隊が現地挑発への依存から
しだいに脱却することである。」

「オーバーロード作戦の立案者たちは、ヒンデンブルクの金言、
すなわち戦争で単純さのみが勝つということわざに、
明らかに違反していたのである。」
ナポレオンの言葉として「戦争とは残酷なものだ、
そこでは決定的な場所に最大の兵力を集中することを知っている者がかつ。」

・・・この本は抜群に面白い本だが読んでいて改めて思うのは、
補給というのは難しいなということだ。
それはいわば勝敗を決する必要条件ではあるが絶対条件ではないからだ。
歴史上十分な補給システムを維持していた軍隊が
補給がまったく崩壊していた軍隊に負けてしまった例も多い。
(どちらかというと戦史ではこちらの方が注目される)
決戦兵力よりも補給ばかりに力を入れて負けた国もある。
まさにディレンマの連続、やっぱり戦争なんてするもんじゃないな。

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1998 12/23
戦略論、マネイジメント、歴史
まろまろヒット率4

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『ナポレオンの亡霊―戦略の誤用が歴史に与えた影響』 リデル・ハート著、石塚栄&山田積昭訳 原書房 198011.28.98

この前のゼミのメンバーで「もしミッドウェー海戦終了直後に
講和条約が成立したら」という仮定が出たっす。
そうしたらいまごろ「JR満州」とか「NTT台湾」とかできていて
『ズームイン朝』なんかは「では次はアリューシャン諸島にズーム、イン!」
とかいうことになってしまっていて、
韓国料理、北京料理、マラヤ料理、台湾料理などがすべて
「和食」になっていたんだろうなぁって話になったっす。
・・・この読書会もML化してこういうやばい話が堂々とできるようになって
うれしい、らぶナベ@自己紹介まだの人はかるくお願いね~(^^)

さて、『ナポレオンの亡霊~戦略の誤用が歴史に与えた影響~』。
前に読んだリデル・ハートの『戦略論』(同じく原書房)が
無類のおもしろさだったので、その本の大元になった
リデル・ハートの代表著作というべきこの本を手に取った。

基本的に前にまだアドレス帳管理だったころの読書会にアップした
『戦略論』のエッセンスだけ取り出した感じという印象があるが
ナポレオンの戦略研究が時代背景を無視した哲学的理論に発展し、
その様々な背景、状況を無視した戦略的誤解が理論として
いかに肥大していったかを考察している興味深い一冊。
この本の初版は第一次大戦と第二次大戦の狭間、
1934年というところにも時代の流れ的なおもしろさを感じる。
また、これは末梢なことだが『失われた時をもとめて』
マルセル・プルーストが軍というものを理解していたと
述べているのが意外だった(『ゲルマンの方』を読めばわかるらしい)。
以下はこの本の中で気になったところ&印象深い箇所の摘出・・・

・「陸軍は胃袋だけ、すなわち補給されただけ前進する」

・好戦的というイメージのあるモーリス・ド・サックスの言葉として
「われが優越を保持し攻撃可能の場合のほか、
状況の如何にかかわらずその攻撃は中止せよ」

・「戦争ではレスリングと同様、態勢をくずさずに相手を投げようとすれば、
自身の消耗を招き、また手詰まりになり易い」

・用兵理論上の大家ブールセの言葉として
「計画には、若干の代案を用意すべきである」

・「ジョミニはあまりにも幾何学的であったし、
クラウゼビッツはあまりにも純粋哲学的に過ぎた
・・・ジョミニの偏見は・・・
誰でもすぐにそれが誤りであることがわかるのに反し、
クラウゼビッツの方はそのとおり実行するのが極めて難しく、
その強調する概念に、慎重な制限条件があるにもかかわらず、
概念そのものが強烈な印象を人々に与えた」

・ジョミニの戦争基本原則
「1、戦略的に一大優勢兵力を戦域の決定的地域に間断なく投入するとともに、
   わが軍の安全を保持しつつなるべく遠く敵背後連絡線上に兵力を指向すること。
2、如上の部隊運用にあたっては、
  わが大量集中部隊で敵の一部と交戦することを策すること。
3、同様に指揮下部隊をして、・・・戦術的部隊運用にあたり、
  わが終結部隊を戦場の決定的地点に投入するか、
  もしくは敵の抵抗不可能な部位に指向するように指導すること。」

・クラウゼビッツへの批判として
「『戦争とは他の手段をもっていする政治の継続にほかならない』
という議論に始まる彼が作り上げた理論に対する論争は、
政略を戦略の奴隷とする、
すなわち政略を戦略に従属させることに終わってしまった」

・「絶対戦争なる言葉の意味するものといえば、
相対する軍の一方が抵抗を持続する能力を焼尽するまで戦う戦闘を意味し、
実際的には勝者も力を消尽して限界に達することを物語るのである。
・・・換言すれば絶対戦争とは、
戦争主宰者がどこで止まるべきかが解らない戦いである」

・戦争を防ぎようの無い天災のように捉え感情優先の平和、
戦争論議があることに対して
「戦争が二者択一的に、
地震だとか病気だとかと厳密にいえないいにしても、
地震よりも病気の方に大分似ているといえる。
またその本質、措置ならびに影響に対する科学的究明の必要性が
高いことも極めて病気に似ているのである」

・「多くの哲学者や科学者は、これまで適応性ということが
生存の秘訣であることを唱えてきた。
しかし歴史というものは、適応性をもって変えていくことに
失敗した一覧表のようなものである」

・「批判を抑圧することはそれを払拭することではなく、
ただ目に見えぬ方向にそれを振り向けさせるだけで
堂々と率直に意見を発表させるよりも、遙かに破壊的なものとなる」

・違いがいまいち見えてこないレギオンとファランクスの違いについて
「ローマ人は実業的、現実主義であり、
ギリシア人は哲学的、芸術的理想家である。
レギヨンの達人はナポレオンであり、
ファランクスの達人はフリードリヒ大王と言える。
レギオンは第二線決戦主義といえるし、
ファランクスは第一線決戦主義といえる」

1998 11/28
戦略論、歴史
まろまろヒット率4

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『戦略論―間接的アプローチ』 リデル・ハート著 原書房 上下巻 198611.16.98

らぶナベ@こんな差し迫った時期にじっくり一冊の本を読み終えるというのも
なかなか乙なものですな、特に考えながら読まないといけないような
良書は(^^)

さて、そういうわけで『戦略論 上・下』リデル・ハート著(原書房)をば。
佐藤満教授から借りた本。
一回生の時から気になっていていつか読もうと思っていた戦略書の一つ。
著者は第一次世界大戦、第二次世界大戦を経験し、
特に第二次大戦終了直後に作戦制作、戦闘指揮をおこなった
ドイツ将官たちのインタビューを通して現代における戦略論を模索した人物で
クラウゼビッツを批判し孫子への回帰を唱えたことで有名な人。
クラウゼビッツの「敵主力の捕捉と殲滅」という戦略概念が
両大戦をこれほどまでに不毛なものにしたと主張し、
敵の撃破を目指した直接的攻撃ではなく
「間接アプローチ」によって敵を消耗させその意図を挫くという
孫子で言うところの「戦わずして勝つ」ことに戦略の価値を見いだしている。
「間接アプローチ」というのは耳慣れない言葉だが「外堀を埋める」や
「将を得ようとすればまず馬を射よ」のような東洋では
ごく普通に使われて来たメジャーな概念のことなのだけど
ヨーロッパ、特に20世紀の現代戦ではあまり注目されてこなかったので
著者はこういう言葉をあえて使ったようだ。
(やたらと柔術とかの単語も出てくる(^^))

本の構成としてはそのほとんどを歴史的な戦略研究が占めている。
それこそギリシア時代(ペルシア戦争、ペロポンネソス戦争、
フィリッポス&アレクサンドロスの征服)や
ローマ時代(ポエニ戦争、カエサルを中心とした内乱)から
第二次世界大戦(著者にとってはリアルタイムだったので
この記述が一番多かった)、アラブ・イスラエル戦争(第一次中東戦争)まで
ヨーロッパ史を中心に主要な戦争、戦いを見直して
一定の戦略概念を見いだそうととしている。

そうした事例研究を元にしてこの本の結論としては・・・
1:目的を手段に適合させよ(消化能力以上の貪食は愚)
2:常に目的を銘記せよ
3:最小予期路線(又は最小予期コース)を選べ
4:最小抵抗戦に乗ぜよ
5:予備目標への切り替えを許す作戦線をとれ
6:計画及び配備が状況に適合するよう、それらの柔軟性を確保せよ
7:対手が油断していないうちはー対手がわが攻撃を撃退し
又は回避できる態勢にあるうちは、わが兵力を打撃に投入するな
8:いったん失敗した後それと同一線(同一の形式)に沿う攻撃を再開するな
・・・という戦略概念の要約を著者がまとめている。

以下はこの本の中で印象に残った箇所と記述しておくべき箇所・・・
・1866年、1870年のモルトケが指導した両戦闘について
「例外は、例外とならぬ一般の場合の規則を立証する」

・歴史的事例研究の要約として
「常勝の司令官らは天然及び物質的に強固を極める
陣地に立て籠もった敵に直面したときは、
直接的方法でその敵と取り組むことはほとんどしなかった。
状況の必要に迫られてあえて直接的攻撃の冒険を行った場合もあるが、
その結果は彼らの記録を失敗でよごすことになった。(一部省略)」

・レーニンの言葉を引用しながら
「いかなるキャンペーンにおいても敵を精神的に攪乱して、
わが決定的打撃が実行可能になるまでは戦闘を延期しておくことが
もっとも堅実な戦略であり、また攻撃を延期しておくことが
もっとも堅実な戦術である。」

・ヴェルサイユ講和会議でのドイツ海外植民地全没収案についての反論として
第二次大戦のイタリアの例を出しながら
「本国との間を遮断され易い海外領土を欧州大陸の一強国が保有することは、
その国の侵略的傾向を抑止することになり易い。」

・第一次大戦のドイツ革命による終結について
「勝利と敗北の間のバランスは心理的印象のほうに傾くものであり
物理的打撃についてはそれが間接的であった場合にのみ、
そのほうへ傾くものである。」

・クルスク戦車戦、アルデンヌ反抗戦などのナチスドイツ後半の
戦略について拳闘家ジェム・メイスの言葉
「彼らを我に向かって来させよ。
それによって彼らは自らをうち負かされることになる。」を引用しながら
「ドイツは、自分で自分を打ちのめすところまで行った。(中略)
ドイツが勝利の問題を解決しようとして
過度に直接的なアプローチをとったために、
連合側はこの問題を間接的に解決し得ることになった。」

・クラウゼビッツの有名な定義、
「戦争(戦略)とは政治(政策)の一手段である」と
「戦略とは戦争の目的を達成するための手段として諸戦闘を用いる術である。
言い換えれば、戦略は戦争の計画を形成し、
戦争を構成する数個のキャンペーンの取るべき予定のコースを描き上げ、
そしてそれぞれのキャンペーンにおいて戦われるべき
諸戦闘を規整するものである。」についての反論として
「この定義は戦略そのものが、政策の分野
すなわち戦争を遂行すべき最高の分野に冒し入っているが、
もともとこの分野は必然的に政府の責任に属すべきものであり(中略)
その手先たるべき軍事指導者には上述の責任を負わせるべきではない。」
また、「戦略の定義をはっきりと戦闘の使用方法に絞っているところで
戦闘は戦略目的のための手段に過ぎないということになっている点が
おかしい」、
「クラウゼビッツの弟子たちが目的と手段を混合し、
戦争においては一個の決定的戦闘に対して他のあらゆる考慮を
従属させるべきであるという結論に到達することはきわめて起こりやすい。」

・ナポレオンの失敗について
「敵が適時にその地点に増援を行い得ないというのでない限り、
意図した決定的地点における優越的兵力分量は十分なものとはいえない。
また、その地点における敵が単に数的に劣勢であるだけでなく、
精神的にも弱化しているというのでない限り、
我が優越的兵力量も十分であるとはいえない。
ナポレオンはこの保証を軽視したために苦杯をいくつか嘗めた。」

・近代ヨーロッパの戦争目的の一つであった合邦について
「意見の相違を受け入れるよりも
意見の相違を抑圧してしまう方が悪い結果を招く。」

・大戦略の章では結論的に
「弱い者いじめ型や強盗型の人間は自力で立ち向かってくる人間に対する
攻撃を渋るということは個人について考えても共通の経験である。
その渋り方は平和型の人間が自分よりも大きい攻撃者と取り組み合うのを
渋るよりももっとはるかにひどいもである。(中略)
好戦型の人間や国家と真の講和を行うことは困難であるが、
その一方それらの人間や国家を休戦状態に入るよう誘致することは
より容易である。そしてこれは彼らを打破するよりも、
遙かにわが精力を消耗することが少ない。
(中略)サスペンス(未決からくる不安)の状態は辛い(中略)
しかし、サスペンス状態でも戦勝の蜃気楼を追って
国力を蕩尽するよりはましである。」

・付録のアラブ・イスラエル戦争の章では
「真の目的は、戦闘を求めるよりもむしろ
有利な戦略情勢を招来することにあるのであって、
その有利な戦略情勢とは、
それのみで戦いの帰すうを決定できることが最も望ましいが、
それができない場合には戦闘によってその有利な情勢を継続することによって
戦いに決をもたらす底のものであるべきである。」

こうしてみると全体的に少し直接アプローチの弊害を強調し
過ぎじゃないかなと思う所もあったけれど
確かに日露戦争以来の日本軍を見ても
クラウゼビッツの強い影響を受けていて、
敵主力の捕捉と撃破のために無理な進撃を続けて消耗し
その戦略を太平洋戦争でも適用させようとしたきらいはあると思う。
(海軍でも根強く続いた艦隊決戦思想の大元はこれ)
第一次大戦と二次大戦はその双方の将官がクラウゼビッツ理論を学び
その実践の場としてあったという言い方はできるかもしれないと思った。

ps98年度吉本興業インターンシップ事業化プロジェクト政策科学部代表の
(僕の代よりも長い名前になっているよな(^^;)やすなりへ。
そうは言うモノの吉本プロジェクトの基本は直接アプローチっすよ(笑)
あえて突撃戦術を採用でき、直接攻撃ができる人間が行って始めて
間接アプローチの意味があると思うっす。

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1998 11/16
戦略論、歴史
まろまろヒット率5

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『ドイツ参謀本部』 渡部昇一著 中公文庫 198609.19.98

「僕の署名の引用当てた人には僕が昼御飯おごってあげましょう」と言って
からメールでいくつか答えが来ているんだけど誰もまだ当たっていない、
第2ヒントは後にこの詩に曲がつけられて有名な歌になっています。
さあ、当ててみよう(^^)

さて、本題の『ドイツ参謀本部』渡部昇一著(中公文庫)を読んだです。
組織論では必ずと言って良いほど参考文献に昇ってくる、
「スタッフ」に注目した名著。
前々から読みたい読みたいと思っていたがその度に忘れてしまい、
ようやく読み終えることができた。
プロイセン時代からドイツ参謀本部が如何にして誕生し、展開し、
そして衰退していったかを書いている。

これがまためちゃめちゃおもしろい!(^o^)
シャルンホルストやグナイゼナウ(共に参謀本部創設者)がナポレオンとの
戦いを通じて如何に参謀本部という組織を築き上げていったかという
箇所はもちろん戦史オタクとして興味深かったが、
この本の根幹は何といってもドイツ参謀本部を通してスタッフとラインとの
葛藤、スタッフとリーダーとの確執を描こうとしているところだなと感じた。

特にモルトケ時代とシュリーフェン時代の参謀本部を比べて見て
スタッフの数の激増と独立した建造物、組織時代の知名度があがるにつれて
硬直した組織思考になっていったという箇所が妙に印象に残っている。

ちなみに後書きにあった組織体の代表としてヴァティカン、ドイツ参謀本部、
ロンドン・タイムズの三つがヨーロッパでは有名と著者が書いていたが
ロンドン・タイムズってどんな組織なの?
この組織についての参考文献とか知っている人教えて下さい。

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1998 9/19
組織論、戦略論、歴史、政治学
まろまろヒット率4

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『絶対負けないゲーム理論の思考法』 嶋津祐一編 日本実業出版社 199711.24.97

読んでいてやたらと前に読んだことのある『戦略的思考とは何か』
(TBSブリタニカ)に出て来た事例が多いなあと思ったら、
この本の編者は『戦略的思考とは何か』の訳者であると気づく(^^;
ただ、ゲーム理論のエッセンスを理解するという点では
こっちの本の方がずっと読みやすく、かつわかりやすかった。
ゲーム理論に関しては「相手が合理的行為者(アリソン風に)で
なければ意味がない」とか「実行段階での不確定要素を排除し過ぎる」など
などのさまざまな批判があるようだが、僕としてはゲーム理論を考える上で
まず前提となる利得表の数値化がはたして可能なのかという点が
もっとも気になる。
この戦略ごとの結果および影響の数値化がまず割出せないとゲーム理論の
思考が始められないわけだが、「そもそも数値化できるくらいの
状況判断が出来ているなら戦略なんて必要ないやろ」と思ってしまう。
これは僕が政策形成論のゼミにいるからか?(笑)
このことについてはゲーム理論の創始者、ノイマンがその著書の中で
頻繁にポーカーの例えを引用して研究していたにもかかわらず、
実際のプレイヤーとしては絶好の鴨だったというエピソードが
すべてを語っているような気がする(^^)

ゲーム理論とは現状で使う戦略を選びだす道具よいうよりも
終わってからの分析に使う理論のように思われる。
また、ゲーム理論では「勝っても最も少ない勝ち方、負けても
最悪ではない負け方」という現状にできるだけ近い選択を選びだすという
性質があるため、状況を一変させなくてはならないような状況下での
戦略的思考としてはあまり適切な思考法とは言えないと思う。
社会に変化が少ない時期の「無難」な戦略と言えると思う。

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1997 11/24
ゲーム理論、意思決定論、戦略論
まろまろヒット率★★★

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『三菱総研戦略革新ノート』 三菱総研経営コンサルティング部著・牧野昇監修 プレジデント社 199209.03.97

9月8日から本格的に始まる吉本興業インターンシップに関しての
何か参考になるかと思って読んだ本。
もともと大学の古本市で300円で買ったものだが、
これほど記述すべき点が少ないビジネス書もめずらしい。
主にCIを中心に政策提言をしているのだが、非常に具体性に欠け
イメージ先行の主張になっている。まるで広告代理店のような本。
この薄さは1992年出版という時期も影響しているのかなあ?

そこそこ面白いと思ったのは「何ができるのか?」という分析先行の
環境・資源適合型アプローチと「何をしたいのか?」という
意思先行のソフト・システム型アプローチの記述だけ。
でもこれも今さらこんな言い方しなくても良いのにと思う。

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1997 9/3
戦略論、経営学
まろまろヒット率1

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