Archive for the ‘小説’







『海国記』 服部真澄著 新潮社 上下巻 200705.30.11


今月は構想した松阪市情報のかけ橋委員会がスタートした、まろまろです。

さて、『海国記』服部真澄著(新潮社)上下巻2007。

院政がおこなわれていた平安時代後期、海の道は富が流れる宝の道でもあった。
その海の道に注目した人々が新しい時代の担い手となっていく・・・

経済的な視点をからめながら、平家とその縁者を中心にえがく歴史小説。
平安時代後期から鎌倉時代前期までの100年以上にわたる長編で、
登場する天皇家だけも白河上皇から後堀河天皇まで実に14代にわたっている。

『平家物語』よりもずっと長い時間軸は内容面にも反映されていて、
社会・経済的な流れを強調した物語となっている。
そうした大きな流れの中で繰り広げられる人間模様の浮き沈み、儚さが強調されているのが印象的。

特に、平清盛の誕生の場面にある・・・
「幻視と願いとの境は、あいまいであった。双方の境を確かに分けてゆくものがあるとすれば、明日という時代の波である」
・・・という一節は、大河小説としてのこの物語の性格を凝縮して表しているように思えた。

ちなみに、この本はある経済学者の方からお貸しいただいた。
大きな流れの中で生きることの意味を伝えていただいたように思えた一冊でもある。

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2011 5/30
歴史小説
まろまろヒット率4

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『半分の月がのぼる空』 橋本紡著、山本ケイジイラスト アスキー・メディアワークス 200301.30.11


松阪市民講座の「地域の魅力を発見発信講座-街歩き『てくてく松阪』を通した地域資料作りのすすめ-」の講師をつとめた、まろまろです。

さて、『半分の月がのぼる空』橋本紡著、山本ケイジイラスト(アスキー・メディアワークス)2003。

急性肝炎で入院した僕は、長期入院中の里香と出会う。
気が強くてわがままな里香だけど、時々思いつめたように外を見つめることがある。
里香が見つめる先には砲台山と呼ばれる山があった・・・

伊勢市を舞台に、病院で出会った高校生の二人の交流をえがくライトノベル。
ライトノベルと言ってもよくある荒唐無稽な話ではなく、入院中の人物を題材とする、いわゆるサナトリウム文学の流れをくんでいる。
内容も、すたれゆく伊勢市の町並みと里香の病気が重なりあって、漠然とした不安と哀愁を感じさせられるものとなっている。
中でも、第三話「砲台山へ至る道」の第一節の最後にある・・・
「そうして、僕たちは走りだした。たぶんー。終わりのある永遠に向かって。」
・・・という一文が印象的。

ちなみに、僕にとってはこの本が生まれて初めて通読したライトノベルとなる。
たまたま伊勢のまんぷく食堂をおとずれた時にこの本の存在を知り、今回読んでみることになった。

現代版サナトリウム文学としても、ご当地小説としても読むことができる一冊。

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2011 1/30
小説、ライトノベル
まろまろヒット率3

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『城のある町にて』 梶井基次郎著 筑摩書房『梶井基次郎全集』より 198608.31.10


松阪市ホームページ検討委員会の委員長に就任した、まろまろです。

さて、『城のある町にて』梶井基次郎著(筑摩書房『梶井基次郎全集』より)1986。

主人公は、結核の療養のため、城のある町に滞在する。
そこで暮らす日々の中で、幼くして亡くした妹のことや自分の病気に思いを馳せながら、
城のある町に生きる人々と交流を持って行く・・・

・・・大正14年(1925年)発表の梶井基次郎の短編小説。
著者自身が前年に松阪に滞在した体験を題材にしている。
(城とは松阪城址のこと)

『檸檬』などに代表されるように、梶井基次郎と言えば淡々とした文体の中にある陰鬱さが特徴的だけど、
読んでみると、この作品では淡々とした文体の中にも明るさが感じられた。
特に・・・
「今、空は悲しいまで晴れていた。そしてその下に町は甍を並べていた」
・・・という箇所での、城のある町(松阪)の風景描写が活き活きとしていたのが印象的。

今回、僕はご縁があって松阪に貢献する機会を得たけれど、
自分の社会貢献もこの短編のような明るさがあるものであってほしいと思って読み終えた一冊。

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2010 8/31
小説
まろまろヒット率3

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『伝奇集』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス著、鼓直訳 岩波書店 199306.17.10


まろまろ記9周年の「まろまろ茶話会2010」開催を正式発表した、
まろまろ@今回は原点回帰として本の交換会もしますので、まろみあんの方はぜひいらしてくださいな☆

さて、『伝奇集』ホルヘ・ルイス・ボルヘス著、鼓直訳(岩波書店)1993。

ガルシア=マルケスと並ぶラテン・アメリカ文学を代表する作家・小説家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの代表的短編集。
原題は“Ficciones” (1944)。
読んでみると、中でも・・・

海賊版の百科事典に書かれている架空の国家を調べることで現実と架空の境界線が曖昧になっていく、「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」。

巨大な図書館の中で生まれ育った司書が図書館の空間と自分の人生を振り返る、「バベルの図書館」。

夢を見ることで一人の人間を創造しようする男をえがく、「円環の廃墟」。

・・・の3つが印象に残った。
特に「円環の廃墟」の諸行無常を感じさせる最後は印象深い。

著者は『ボルヘス、文学を語る』の中で、「われわれは暗示することしかできない、
つまり、読み手に想像させるよう努めることしかでない」と語っているように、暗示に富んだ内容のものが心に響いた。

暗示させることを意識的に書かれただけあって、現代にも通じるテーマ性を持った作品が多い。
たとえば、「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」はシミュレーテッド・リアリティを、
「バベルの図書館」はインターネットを、「円環の廃墟」は仮想現実を、それぞれ思い起こさせられた。

そんな暗示に富んだ著書の小説は現代にも影響を与えていて、
ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』の中に出てくる図書館は「バベルの図書館」をモデルにしている。
(しかもその図書館長の名前は「ホルヘ」だったりするw)

ちなみに、短編集は音楽のアルバムのようなもので、中に収められている1本だけ(シングルだけ)ほしい時がある。
電子書籍がどのように普及していくのかはまだ不透明だけど、電子書籍普及によって
短編小説がより手に入りやすく、そしてより発表しやすくなることを期待している。
そんな現代的なテーマも思い起こさせられる短編集。

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2010 6/17
小説、短編集
まろまろヒット率4

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『鬼平犯科帳〈1〉』 池波正太郎著 文藝春秋 200002.26.10


せっかく電源が使えるN700系新幹線に乗ったのに、Let`s noteのACアダプタを忘れて来たことに気づいて「そして、僕は途方に暮れる」 by 金色鍋生です。

さて、『鬼平犯科帳〈1〉』池波正太郎著(文藝春秋)2000。

浅間山の噴火や相次ぐ飢饉によって治安が悪化した江戸時代中期、長谷川平蔵(宣以)は江戸の火付盗賊改方長官に就任する。
闇社会にも精通する情報網と苛烈な取り締まりぶりから、長谷川平蔵は鬼の平蔵、鬼平と呼ばれていく・・・

1968年初版の池波正太郎の代表作、鬼平犯科帳シリーズ第1弾。
僕にとって鬼平犯科帳と言えば、二代目中村吉右衛門が演じる時代劇の印象が強いけれど、
今回は池波正太郎記念文庫で開催されるイラスト展のお誘いが
まろまろ談話室(mixiまろみあんコミュニティ)に寄せられたので、予習のために読んでみた。

読んでみると、鬼平は基本的に「まとめ役」(著者談)で、同心や盗賊、庶民たちが各話の主役となっている。
江戸の庶民の暮らしぶりを丁寧にえがきながら、人間味あふれる話が進んでいくというストーリー展開。

ただし、単純な「人情もの」ではなく、人情の空しさや儚さが強調されている。
人間の持つ憧れや信頼というものが、いとも簡単に崩れていく様子が鮮明にえがかれているのが印象深い。
特に第3話「血頭の丹兵衛」の中で、密偵となった粂八がかつての親分に対して言い放つ言葉は胸が打たれた。

ちなみに、僕は大阪(上方)出身だけど、ちょうどこの本を読んでいる時に引率をしていた際には、
「若けえ連中には腹いっぱいにさせてやらねえとな」などという風に江戸口調になっていたらしい。
まったく、何にでもすぐに影響されちまっちゃあいけねえや。

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2010 2/26
時代小説
まろまろヒット率4

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『坊ちゃん』 夏目漱石著 新潮社 195001.29.10


まろまろ@Appleから発表されたiPadが成功するかどうかは一先ずおいて、
電子書籍の普及によって版元から出版された書籍とWebサイトがまったく同じ土俵に躍り出る点に注目しています。
電子書籍普及の影響は、読み手よりも書き手や発信者の方によりimpactのあるものになるでしょう(^_-)

さて、『坊ちゃん』夏目漱石著(新潮社)1950。

江戸っ子の「おれ」は、無鉄砲で真直ぐな気質を持つ江戸っ子。
四国の中学に赴任した「おれ」は、田舎根性丸出しの悪質な生徒や教師たちと闘ってゆく・・・

明治39年(1906年)発表の夏目漱石初期の代表作。
道後温泉に行った時に通読したことが無かったことを思い出したので手に取った一冊。
著者が松山中学(愛媛県尋常中学校)に赴任した体験をもとにしているので、方言や名所などの舞台装置は松山になっている。
(ただし実際の夏目漱石は主人公と違って優遇されていた模様)

読んでみると、まず読みやすいことが意外だった。
夏目漱石の作品は、乾いた文体で陰気な世界観を語る印象が強くて(『こころ』など)、
読みにくい気がしていたけれど、この作品は文体も展開も軽くて自然に読み進めることができた。
それは初期の作品ということもあるけれど、現存する原稿には手直しが少ないとのこと。
確かに寝かせることや推敲をあまりせず一気に書き上げたことが、ところどころから伝わってくる。

特にいたずらをした生徒を追求する第4章で・・・
「いたずらだけで罰は御免蒙るなんて下劣な根性がどこの国に流行ると思ってるんだ。
(中略)学校へ這入って、嘘を吐いて、護摩化して、陰でこせこせ生意気ないたずらをして、
そうして大きな面で卒業すれば教育を受けたもんだと癇違いをしていやがる。」
・・・と主人公に語らせる部分は、この作品を貫く妥協の無い反骨&反俗精神を、
思い切りよく書き上げたことが伝わって来て印象深い。

悪を懲らしめる勢いの良さを感じる作品だけど、よく読めば善は勝っていないことに気づく。
決してハッピーエンドにはならない勧善懲悪ものとして、近代を表現しようとした意欲作。

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2010 1/29
小説
まろまろヒット率3

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『墨東綺譚』 永井荷風著 岩波書店 199109.21.09


mixiまろみあんコミュニティまろまろ談話室で盛りあがったので、永井荷風プレイをしてきたまろまろです。

さて、『墨東綺譚』永井荷風著(岩波書店)1991にて。

初老の作家は隅田川沿いの花街、玉の井で娼婦と出会う。
娼婦との思わぬ出会いは、作家が起草していた作品の構想と重なってゆく・・・

1937年初版の永井荷風の代表作。
この岩波書店版は初版と同じ木村荘八の挿絵が入っている。

読んでみると、昭和初期の私娼街、玉の井(現在に東向島近辺)の情景が鮮明にえがかれている。
著者自身も、作中で主人公に・・・
「小説をつくる時、わたしの最も興を催すのは、作中人物の生活及び事件が開展する場所の選択と、その描写とである」(p29)
・・・と言わせているように、鮮やかな描写が印象深い。

娼婦(売春婦、現在の風俗嬢)との遊びには造詣が無いので、登場人物への感情移入はできなかったけれど、
町の風景や季節の移り変わりの描写は読んでいて感じいるものがあった。
情景を感じる作品。

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2009 9/21
小説
まろまろヒット率3

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『城崎にて』 志賀直哉著 角川書店『城の崎にて・小僧の神様』より 195408.22.09


まろまろ@城崎温泉にいってきました☆

さて、『城崎にて』志賀直哉著(角川書店『城の崎にて・小僧の神様』より)1954。

大けがをした自分は、温泉地の城崎で療養する。
三つの小さな命の死をかいま見た自分は、偶然に助かった自分を振り返る。
そして生と死の間にある隔たりの薄さを感じる・・・

・・・志賀直哉によって1917年に発表された心境小説(心情小説)。
前々から読んでみたいと思っていた10ページに満たないこの短編を、
今回は志賀直哉が実際に宿泊した旅館(三木屋)に同じように泊って、
志賀直哉が見ていた中庭を眺めながら読んでみた。

読んでみると、簡潔な文章の中に城崎の情景と心の動きが伝わってくるものだった。
特に印象に残ったのは、自分(志賀直哉)が生と死の間にある隔たりを感じる場面・・・
「生きている事と死んで了っている事と、それは両極ではなかった。それ程に差はないような気がした。
もうかなり暗かった。視覚は遠い灯を感ずるだけだった。」
・・・という箇所は、余韻を感じさせるものとして心に残った。

谷崎潤一郎が『文章読本』の中で例文として挙げているのも納得できる短編。

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2009 8/22
小説
まろまろヒット率3

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『ダ・ヴィンチ・コード』 ダン・ブラウン著、越前敏弥訳 角川書店 上中下巻 200408.13.09


まろまろ@ギックリ腰になっちゃいました(T_T)

さて、『ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン著、越前敏弥訳(角川書店)上中下巻2004。

パリのルーヴル美術館で、館長の死体ががレオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」の姿で発見される。
調査の結果、この姿は館長が死の直前に自分自身でかたどったものだと判明した。
宗教象徴学の大学教授ロバート・ラングドンと、暗号解読官のベズ・ファーシュは、
事件に巻き込まれながら、館長が残した暗号(コード)を解読してく。
そこにはキリスト教発祥以来の謎が深く関わっていた・・・

世界中でベストセラーとなったミステリー小説。
原題は“The Da Vinci Code” (2003)。
冒頭でわざわざ「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、すべて事実に基づいている」
と書いていることもあって、内容について物議をかもしだした問題作でもある。
すでに問題となった歴史解釈のあやしさや事実誤認についての反論も一通り終わり、
ブームも落ち着いているので、「いまさらかよ」と自分でも突っ込みながら読むことになった一冊(^^;
(以前は「俺ん家コード」なども流行ったことがあったw)

今回あくまでフィクションとして読んでみると、数々の名画や建築に隠された象徴をヒントに、館長の残した暗号を解いてくのは確かに刺激的。
また、特命係長プレイで講義を担当することもあるので、回想で登場するロバート・ラングドンの様々な講義シーンも面白く感じられた。
そして物語が佳境となる、第3巻の171ページ目の驚きは純粋に物語として面白いと感じた。

振り返れば、修道院が舞台の『薔薇の名前』や、禅寺が舞台の『鉄鼠の檻』などの宗教教義を題材にしたミステリーをこれまでよく読んできた。
いずれ自分でも宗教教義を使ったミステリー小説を書きたいと思っているくらい好き。
そんな僕にとっては十分に楽しめたミステリー作品でもある。

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2009 8/13
小説
まろまろヒット率4

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『ピュタゴラスの旅』 酒見賢一著 集英社 200107.02.09


実は最近ピュタゴラスにご縁がある、まろまろです。

さて、『ピュタゴラスの旅』酒見賢一著(集英社)2001。

「ピュタゴラスは旅人であった」

・・・ピュタゴラス教団の教主、ピュタゴラスは突発的な旅に出る。
教団はピュタゴラスの旅に後継者と期待される英才の少年、テゥウモスを同行させる。
輪廻転生を信じ、無知な人々の期待に応えようとするピュタゴラスの態度に、少年テゥウモスは疑問を感じてゆく・・・

表題の『ピュタゴラスの旅』を含む五編の短編集。
何と言っても表題の『ピュタゴラスの旅』が印象深い。

伝説に包まれた哲学者、ピュタゴラス(ピタゴラス,Pythagoras)を主役にした歴史小説というだけでも珍しいけれど、
宗教的な救いに応えるピュタゴラスと、科学の探究を求める弟子テゥウモスとの対立の中に、
宗教と科学と哲学が、まだ渾然一体だった時代の思想性がえがかれている。
「旅」の意味が、実際の旅と、精神の探求の意味の両方が重ねあわせられている短編。
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2009 7/2
歴史小説、哲学
まろまろヒット率3

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