Archive for the ‘ミーム論’


『ダーウィン文化論―科学としてのミーム』 ロバート・アンジェ編、佐倉統・巌谷薫・鈴木崇史・坪井りん訳 産業図書 200407.07.05

「京たこ」が京都には無いようにNewYorkには決して無い「NewYorker`s Cafe」で作業することが多い、
らぶナベ@よく利用されるかたはご一報ください、合間にまろまろとお茶しましょう(^_-)

さて、『ダーウィン文化論―科学としてのミーム』
ロバート・アンジェ編、佐倉統・巌谷薫・鈴木崇史・坪井りん訳(産業図書)2004。

ミーム論(ミーム学、memetics)の研究論文集。
編者が「ミームについて現在の論争点をはっきりさせる」ことを目的とすると言っているように(序章)、
ミームに関連する各分野の研究者たちがミームの有効性について論じている。
ミームに懐疑的な研究者の論文も掲載されているが、その傾向は後半にいくにしたがって強まる。

読んだ感想は、いろいろな議論はあるけど結局「操作的な定義以上のミームを同定することと、
その複製メカニズムをはっきりさせることの両方がなければミーム論は離陸できない」(11章)
というのと同じ感覚を持った。

ちなみにこの本は日本語訳版だけ各章の研究者紹介の項目がある。
この項目のおかげでその主張を唱えている人の背景がわかってとても有益だった。
(立体的に議論の様相がとらえられる)
これを書いた訳者は僕の指導教官だったりするが、彼はこういう研究者紹介をさせると上手い。

また、奇しくもこの本の中でも一番ミームに肯定的なブラックモア博士(第2章担当)とは、
読んでいる最中に実際に会う機会があった。
断片的に知っていた彼女の情報が実際に会うことによってパズルのようにつながったが、
ミームという言葉にはこういう情報のデジタルな側面を表わす響きがあるんだろう。

以下はチェックした箇所(要約含む)・・・

○ミーム=記憶のアイテムで、生物個体の神経系に保存されている情報の一部。
観察者が聴衆かすることで同定される。
観察者の裏付けは、以前にほかの生物個体の神経系に保存されていた
同じ記憶アイテムを裏付けた先行経験に依存している(Lynch, 1998)
<第1章 序論(ロバート・アンジェ)>

○ミーム研究をめぐる三つの論争・・・
・文化を主に構成しているものは、独立して伝達される情報単位とみなしていいのか
・いわゆるミームなるものは、自己複製子として機能しうるだけの要件を備えているのか
・ミーム論のようなダーウィン的、選択理論的なアプローチが文化の科学として最適であり望ましいのか
<第1章 序論(ロバート・アンジェ)>

○ミーム駆動=ミームは、現在成功しているミームを選択する脳を遺伝子に作らせたとする仮説
→人間の脳は選択的模倣装置
<第2章 ミームの視点(スーザン・ブラックモア)>

○私たちの周りにあるすべての文化的存在は、
熾烈なコピー競争の、現在の勝者であるがゆえに存在している
<第2章 ミームの視点(スーザン・ブラックモア)>

○人間の本性は、ミームと遺伝子が複雑な環境下で複製の競争を行った産物であり、
神秘的な導きの原理や自由意志とともにある内なる自己の余地など存在しない
<第2章 ミームの視点(スーザン・ブラックモア)>

○ミームは新しい研究プログラムであるから試行とテストによって評価されるべきである
<第3章 ミーム論をまじめに取り扱う―ミーム論は我らが作る(デイヴィッド・ハル)>

○文化の自然科学に対する主要な2つのアプローチ=
1:文化の進化に焦点をあてたアプローチ(心理的機構の進化に関心)
2:文化的進化に焦点をあてたアプローチ(遺伝子-文化の共進化に関心)
・・・この2つは統合されるべき
<第4章 文化と心理的機構(ヘンリー・プロトキン)>

○認知過程=心的表象を伴う過程
 →表象に対してエージェントが行う行為によって完成する
社会的認知過程=社会的信念、目標を伴う過程
 →エージェントの社会的信念、目標に対して行為を推敲することにより実現する
<第5章 心を(社会的に)通したミーム(ロザリン・コンテ)>

○ミーム論の利点
1:アプローチが基礎的
2:発見的であり新しい解釈や再構築を促す(進化的アプローチの特徴)
3:学際的
4:多岐に渡る問題を取り扱える
<第5章 心を(社会的に)通したミーム(ロザリン・コンテ)>

○科学としてのミーム論の未来は、ミームが脳内で確認されるかどうかではなく、
むしろどの程度までミームが心の中に宿るか、
その根拠や過程が明らかにされるかどうかにかかっている
<第5章 心を(社会的に)通したミーム(ロザリン・コンテ)>

○協力に必要な2つの条件
1:協力しあっているエージェントが1つの共通目標を持っている
2:彼らがその成就に対して相互に依存している
(Conte and Castelfranchi, 1995)
→交換においてはエージェントは相互依存さえしていればいい
<第5章 心を(社会的に)通したミーム(ロザリン・コンテ)>

○人間のニッチ構築は部分的には社会伝達ミームに依存しているものの、
人間の遺伝子の選択的環境にとどまらず、ミームの選択的環境をも形作る
<第6章 ミームの進化(ケヴィン・レイランド&ジョン・オンドリン=スミー)>

○もっとも成功しているミームは、ニッチ構築という形で実現しており、
自分たちの好みに応じて、選択的環境に効果的なバイアスをかけている
<第6章 ミームの進化(ケヴィン・レイランド&ジョン・オンドリン=スミー)>

○ミームを好きかどうかは、単純に「細分派」か「統合派」か、
分析を拠り所にするか解釈を拠り所にするかということに帰すかもしれない
<第11章 結論(ロバート・アンジェ)>

○操作的な定義以上のミームを同定することと、
その複製メカニズムをはっきりさせることの両方がなければミーム論は離陸できない
<第11章 結論(ロバート・アンジェ)>

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2005 7/7
ミーム、進化論、文化研究
まろまろヒット率★★★
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『遺伝子vsミーム-教育・環境・民族対立』 佐倉統著 廣済堂ライブラリー 200106.03.03

毎週一回くらいは我が家でお食事会を開きたいと画策している、
らぶナベ@気分は栗本はるみだす。

さて、『遺伝子vsミーム-教育・環境・民族対立』佐倉統著(廣済堂ライブラリー)2001年初版。
さくら組研究室の文献購読で『ミーム・マシーンとしての私』を発表したのをきっかけに、
ミーム論がどういう風に使われているのかもう少し知りたくなって関連本を探していたところ、
研究室の端っこにひっそりとあったのを見つけたので(研究室長が著者だから当然だけど)
さくさくっと借りてさくさくっと読んだ一冊。

内容はメディア、教育、環境、民族の各問題をミームの視点で論じている。
読んでみると確かにレベルの違う話を統一的に話せる可能性のあるところが
魅力的な理論だけど、進化論のDNAのように「これがミームだ」と言える物質が
見つからないことには信頼して使えない理論のような気がする。
僕がミーム論で興味を感じた文化・技術の自然選択的(不作為的)普及と、
性的衝動と表現衝動との関連についてもあえてミームを使わなくてもよさそうなフレイバーが(^^;
著者もあとがきで「ミーム概念の有効性は、定量的な記述や予測ではなく、
比喩やアナロジーにもとづく問題発見能力にある」と言っているように
ちょっとこましな比喩以外にはあまり使えなさそうな感じがした梅雨のはじめ。

以下はチェックした箇所(一部要約)・・・

○生命体というは、進化することができるシステムという意味
 →自分で変化できるという意味
<1-2 知識という生命体>

○生命の適応能力=自然選択を起こしうる能力→突然変異できる能力と同値
<1-2 知識という生命体>

○生物学的な文化の定義=遺伝子によらず次世代へと受け継がれていく情報の体系
<2-1 利己的な複製子たち>

○ミーム学最大のポイント=文化を進化するシステムとみなす点
 (生物進化論のツールを使える)
<2-1 利己的な複製子たち>

○進化=自己複製するシステム(生命)が累積的に変化していくこと
<2-3 老年期の役割>

○科学はどの価値が正しいのか直接答えを出せないが、
 議論のための共通の場を提供することはできる
<2-3 老年期の役割>

○(自然)選択のメカニズム=1:無方向の変異が生じる、
 2:選択が起こることで適応的な進化の方向が決定される、という二段階の過程
<3-1 伝えることの意味>

○ミーム概念の有効性は、定量的な記述や予測などではなく、
 比喩やアナロジーにもとづく問題発見能力にある
<あとがき>

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2003 6/3
自然科学、進化論、ミーム論
まろまろヒット率3
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『ミーム・マシーンとしての私』 スーザン・ブラックモア著、垂水雄二訳 草思社 上下巻 200006.02.03

『マヤ文明展』でマヤ暦のTシャツ(略して”マヤT”)を買ってしまった、
らぶナベ@展示側の戦略に簡単に乗ってしまう良い顧客です(^^;

さて、『ミーム・マシーンとしての私』上下巻
スーザン・ブラックモア著、垂水雄二訳(草思社)2000年初版。
技術、文化、考え方や理念などのも一種の遺伝子のように、
それ自体が人から人へと媒介していくという考え方=「ミーム論」の本。
(もともとはドーキンスの『利己的な遺伝子』から)

内容は第1の自己複製子=遺伝子に続く第2の自己複製子=ミームが、
人間の言語や脳を形づくり、そして「自己」というものもミームの複合体
「自己複合体(selfplex)」だという仮定をしているかなり挑戦的な一冊。
すごく面白い切り口なんだけど大部分が仮説や仮定の話を前提にしているので、
もうちょっと証拠がないと簡単には納得できない感じがした。
(物証の重視が訴訟法の原則だす(^^))

ただ、僕は『利己的な遺伝子』を読んだときにもメモしたように、
このミーム論という考え方には・・・
1:文化や考え方の普及・発展の不作為性が強調される点と、
2:何かを伝えたいとか表現したいという欲求が本能的なんだと説明できる点で、
(遺伝子を残す→性的衝動へ、ミームを残す→表現的衝動へ)
かなり興味を持っている。
こういう視点でミーム論を扱った本があれば教えてちゃぶだい。

以下はチェックした箇所(一部要約)・・・

○ミーム=非遺伝的な手段、特に模倣によって伝えわたされると考えられる文化の一要素
 from “The Oxford English Dictionary” of “meme=An element of a culture
 that may be considered to be passed on by non-genetic means, esp. imitation.”
<序文>

○私たちを特別なものにしているのは模倣の能力であるというのが本書の主題
<1 奇妙な生き物>

○私たちの観念が私たち自身の創造したものであり、
 私たちのために働いていると考えるかわりに、それらが自律的なミームであり、
 自らがコピーされることのみのために働いていると考えなければならない
<1 奇妙な生き物>

○その科学理論が有効であるかどうかの基準=
 1:その理論は他の競合する理論に比べてより簡潔ないし包括的に説明できるかどうか
 2:検証可能な予測を導くことができ、その予測が正しいと証明できるかどうか
<1 奇妙な生き物>

○ダーウィンの自然選択=変異・淘汰・保持(遺伝)が要件
 →この三つがそろっていればその種は増加する傾向を持つ
 →ダーウィン主義は「心の助けなしに混沌から構造をつくりだす図式」(Dennet1995)
<2 ミームとダーウィン主義>

○ミーム理論の要点は、ミームを独立した自己複製子として扱うことにある
 →遺伝子のではなく、ミームの複製のためにミーム淘汰が観念の進化を駆動する
  (これが従来の大半の文化的進化の理論からミーム学を分かつ大きな相違)
<3 文化の進化>

○人が考えることを止められないことへの解答=ミームの「雑草理論」
 =除草した庭はすぐに植物が生え、そこには遺伝子の生存競争が始まる
 →空っぽの心にはミームが入り込んで来て、脳内でミームの生存競争をおこなう
<4 ミームの視点から見る>

○「模倣」の定義=ある行為の仕方を、それがなされたところを見て覚える学習
 (Thorndike 1898)
 →他者の観察を通じて環境について学ぶ「社会的学習」(Heyes 1993)とは違う
<4 ミームの視点から見る>

○成功する自己複製子の条件=忠実度・多産性・長寿(Dawkins 1976)
<4 ミームの視点から見る>

○言語の機能=うわさ話→うわさ話は毛づくろいの代用(Dunbar 1996)
 →うわさ話も毛づくろいも社会的集団の結束を維持する機能を果たす
<8 ミームー遺伝子の共進化>

○ミームが生まれて人々が模倣しあうことによって、
 より高度な忠誠度・多産性・寿命のミームが駆動して
 言葉を生み、人間の脳を巨大化させた
 (言語の機能も、巨大な脳もミームのためにある)
<8 ミームー遺伝子の共進化>

○ミームが発生すると生まれる過程=
 1:「ミーム淘汰」(あるミームが他のミームの犠牲のもとに生き残る)
 2:「ミーム模倣力の遺伝的淘汰」(最良の模倣者をよりよく模倣できるものが
   より大きな繁殖性向度を持つ)
 3:「最良の模倣者とつれあいになることの遺伝的淘汰」
<9 社会生物学の限界>

○芸術的な能力と創造性が異性を引きつけるディスプレイとして
 性淘汰を受けてきたという主張があるが(Miller 1998)、
 その理由は創造性と芸術的な表出はミームをコピーし、使い、拡める方法であり、
  すぐれた模倣者の印だから
<10 セックス、セックス、セックス>

○利他主義のトリック=
 1:利他的な行動は自分自身のコピーを拡め、私たちをより利他的にする
 2:利他主義はその他のミームが拡まるのを助ける
 →利他的な好ましい人に入り込んだミームは意地悪な人に入り込んだミームよりも
  よりコピーされやすいだろうという単純な考えに立脚
<13 利他主義のトリック>

○宇宙人による誘拐がミームとしてなぜ普及するのかについて
 1:睡眠麻痺という恐ろしい個人的体験に答えを与えてくれる
 2:西洋人に訴えかけるところがある(神に代わる強大な存在としての宇宙人)
 3:センセーショナリズムに敏感なマスコミと視聴者の存在
 4:反証不可能性が高い(陰謀説によっても防御)
<14 ニュー・エイジのミーム>

○宗教がミームとして成功した理由=
 1:反証不可能性と脅しと約束によって守られている
 2:普及のために美・真理・利他主義のトリックを用いている
 3:人間の心と脳は宗教的な観念にとりわけ感受性をもつように形づくられている
<15 ミーム複合体としての宗教>

○宗教と科学との違い=検証を要求するかどうか(これが科学の核心)
 →宗教は理論を構築した後はそれが検証されることを妨げる
<15 ミーム複合体としての宗教>

○情報は淘汰を受ける自己複製子
 →進化的なアルゴリズムが実行され、それがデザインを作り出す
 (デザインは全面的に進化的アルゴリズム遂行の結果)
<16 インターネットのなかへ>

○伝達が何よりも重要なミームの視点では日本語の複雑な文字体系が生き残るか疑問
<16 インターネットのなかへ>

☆自己は巨大なミーム複合体=「自己複合体(selfplex)
 →ミームにとっては自己の内部に入り込める観念=「私の」考えになれるものが勝者
 →自己はミームの最大の保護者であり、ミーム的社会が複雑であればあるほど、
  自己という保護の内部に入り込もうと戦っているミームがより多く存在している
<17 「私」という究極のミーム複合体>

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2003 6/2
自然科学、進化論、ミーム論
まろまろヒット率★★★
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