Archive for the ‘言語学’


『論理哲学論考』 ウィトゲンシュタイン著、野矢茂樹訳 岩波書店 200310.08.07

この本で読書日記500冊目になった、まろまろ@数の追求はしていないとはいえ一つの区切りを感じてます(^^)v

さて、『論理哲学論考』ウィトゲンシュタイン著、野矢茂樹訳(岩波書店)2003。

20世紀を代表する哲学者、ルートヴィッヒ・ウィトゲンシュタイン(ヴィトゲンシュタイン)の代表的著作。
原題は”Tractatus Logico - Philosophicus” (Ludwig Josef Johann Wittgenstein, 1922)。
前期ウィトゲンシュタインの考えをまとめたものだけど、そもそも著者の生涯で完成された著作はこの一冊のみ。

ウィトゲンシュタインと言えば、数々の伝説的なエピソードで知られている哲学者だけど、
実際に読んでみると確かにまずウィトゲンシュタインの孤高ぶりがよく伝わってきた。
「私がいっさい典拠を示さなかったのも、私の考えたことがすでに他のひとによって考えられていたかどうかなど、
私には関心がないからにほかならない」(序)
・・・と言い切っているところなどは彼の唯我独尊ぶりがある意味でまぶしい。

ウィトゲンシュタインはこの本を書いた頃(前期)の考えの誤りを後に修正するけれど、この本がすべて否定された訳ではない。
たとえば・・・
「哲学の目的は思考の論理的明晰化である。
哲学は学説ではなく、活動である。
哲学の仕事の本質は解明することにある
哲学の成果は「哲学的命題」ではない。諸命題の明確化である。
思考は、そのままでいわば不透明でぼやけている。哲学はそれを明晰にし、限界をはっきりさせねばならない。」(4.112)
・・・という部分などは、ウィトゲンシュタインの哲学に対する変わらないスタンスとして印象深い。

また、この『論理哲学論考』には初版からバートランド・ラッセルの解説がついていて、それが議論になったことでも知られるけれど、
日本語版は訳注が用語集としても書かれているので読む際の参考として役立った。

ちなみにこの本は、後にウィトゲンシュタインが博士号を取得するための博士論文として提出されている。
口頭試問の後に、試験官だったラッセルとムーア)の肩を叩いて、
「心配しなくていい、君たち理解できないことは分かっている」と言ったという伝説も含めて、
哲学書としてだけでなく一つの生き様を表現した本としても読める一冊。

以下はその他でチェックした箇所(一部要約含む)・・・・

○およそ語られうることは明晰に語られうる
→論じえないことについては、ひとは沈黙せねばならない
<序>

○命題の意味を特徴づける命題の各部分を、私は表現(シンボル)と呼ぶ
→表現は形式と内容を特徴づける
<3.31>

○値の確定がシンボルの記述にすぎず、それが何を表しているかには触れないということ、
値の確定にとって本質的なのはこのことだけである
<3.317>

○定義とは、ある言語から他の言語への翻訳規則である
<3.343>

○確率とは一般化にほかならない
<5.156>

○世界の意義は世界の外になければならない
→世界の中ではすべてはあるようにあり、すべては起こるように起こる
→世界の中には価値は存在しない
<6.41>

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2007 10/8
哲学、論理学、言語学、記号論
まろまろヒット率4

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『コミュニケーション学―その展望と視点』 末田清子・福田浩子著 松柏社 200304.15.04

弊社建物に新しい顔が増えてどぎまぎしている、らぶナベ@実は人見知り系です(^^;

さて、『コミュニケーション学-その展望と視点-』
末田清子・福田浩子著(松柏社)2003年初版。

評判が良かったので読んでみたコミュニケーション学関連領域の概要書。
コミュニケーションをめぐる用語の定義や研究の背景を丁寧に紹介してくれている。

コミュニケーションに対する各分野からの主要なアプローチを
「機械論的視点」、「心理学的視点」、「相互作用論的視点」、
「システム論的視点」に分類して紹介したり(3、4章)、
言語学からのアプローチや(5、6、7章)、
コンテクスト研究(9章)に対するフォローもされている。
定義・引用・索引が充実しているので辞書としても使えるし、
コミュニケーション学関係の概要書では決定版的ではないだろうか?

以下はチェックした箇所(一部要約含む)・・・

☆コミュニケーションの定義=
・ラテン語の共通項(communicare)が語源→当事者が共通項をつくりあげるプロセス
・”Culture is communication and communication is cultre”(E.T.Hall)
・本書の定義=シンボルを創造し、そのシンボルを介して意味を共有するプロセス
<第1章 コミュニケーションとは何か>

☆コミュニケーションの特徴=
シンボルを介して行われる、言葉や行為そのものに意味はなく人が意味づけする、
意識無意識を問わず人はコミュニケーションを行う、
あるコミュニケーション場面を同じように再現はできない、
コミュニケーションとはプロセス、コミュニケーションの問題は単純化できない
<第1章 コミュニケーションとは何か>

☆コミュニケーション論をめぐる主要な4つの視点・・・

☆「機械論的視点」(The mechanistic perspective)
・命題:「どのチャンネルが一番大きい量のシグナルを送れるか、
     どれくらいノイズが生じるか」の問いに答えるために構築
・特徴:全体は部分の総体に等しいとういう立場
・研究:チャンネルの違いによるコミュニケーション効果など
・コミュニケーション能力:いかにノイズを減らし効率を高めるか
・文化の扱い:文化は要素として組み込まない
→古いモデルでシンプルなので広く使用されている

☆「心理学的視点」(The psychological perspective)
・命題:「刺激をどのように選択し、どのように反応しているか」
・特徴:メッセージの意味はコミュニケーションを行う人が与えるものであるという立場
・研究:概念フィルターを持った個人など
・コミュニケーション能力:いかに当事者相互のフィルターを近似させられるか
・文化の扱い:人が様々な刺激を選別して取り入れる際のフィルターを形作るもの
→メッセージの送り手よりも受け手側に焦点を当てているので応用範囲が広い
  (特に異文化間コミュニケーションではよく使用される)

☆「(シンボリック)相互作用論的視点」(The interactionist perspective)
・命題:「(言葉や行為などの)シンボルがいかに創造され、共有されるか」
・特徴:コミュニケーションは役割取得・遂行によって成立するという立場
・研究:シンボルがある文化でどのように創られるか、変るかなど
・コミュニケーション能力:当事者がどの程度意味を共有しているか
・文化の扱い:コミュニケーションの当事者が共有するシンボル
→文化や副文化の創造、言語発達、認知的プロセスなどに応用可能

☆「システム論的視点」(The perspective of general systems theory)
・命題:「いかにコミュニケーション・パターンを探求するか」
・特徴:全体は部分の総体よりも大きいという立場
・研究:小集団や家族内コミュニケーション・パターンの探求など
・コミュニケーション能力:いかにルールに従ってコミュニケーションできるか
・文化の扱い:習得されたある解釈のシステム(知識体系)であり受け継がれるもの
→まだ新しい理論
<第3章 コミュニケーションの4つの視点>
<第4章 文化に対する視点の多様化>

☆四つの視点の分類・・・

「機械論的視点」&「心理学的視点」
・法則によってコミュニケーションは司られる
・因果関係の探求
・仮説検証型の量的研究(quantitative research)

「シンボリック相互作用論的視点」&「システム論的視点」
・調整可能なルールがコミュニケーションにはある
・現象の探求
・仮説構築型の質的研究(qualitative research)
<第3章 コミュニケーションの4つの視点>

☆言語の定義=
・「言語は思考を形成していく器官である」(Humboldt)
・”a set(finite or infinite) of sentences, each finite
in length and constructed out of a finite set of elements”(Chomsky)
<第5章 言語コミュニケーション(1)>

☆言語の特性=
1:超越性(displacement)、2:恣意性(arbitrariness)、3:生産性(productivity)
4:文化的伝承(cultural transmission)、5:非連続性(discreteness)、6:二重性(duality)
<第5章 言語コミュニケーション(1)>

○普遍文法(Universal Grammar)=
人間の言語の能力を言語能力(competence)と言語運用(performance)に分けて、
前者の言語獲得装置(Language Acquisition Device)が
人類には生まれながらに備わっているとすること(Chomsky)
<第6章 言語コミュニケーション(2)>

○言語学のコミュニケーション能力(communicative competence)=
文法能力(grammatical competence)、社会言語能力(sociplinguistic competence)
談話能力(discourse competence)、方略能力(strategic competence)
(Canale&Swain)
<第6章 言語コミュニケーション(2)>

○協調の原則(cooperative principle)=
会話のやり取りはある程度までは協調的作業であること(H.P.Grice)
<第6章 言語コミュニケーション(2)>

○会話の格率(Maxims of conversation)=
量の格率(Maxims of quantity)、質の格率(Maxims of quality)、
関連性の格率(Maxim of relation)、様態の格率(Maxims of manner)
<第6章 言語コミュニケーション(2)>

☆言語コミュニケーションの特徴=
デジタルである、新しい社会現実を創ることが可能、
抽象思考で重要になる、内省的である(Trenholm&Jensen)
<第7章 言語コミュニケーション(3)>

○言語コミュニケーションの意味の3レベル
・意味論レベル=外延的(denotative)意味+内包的(connotative)意味
・統語論レベル=語彙が文法的に正しい順序に並べる必要性
・語用論レベル=CMM(Coordinated Management of Meaning)
<第7章 言語コミュニケーション(3)>

☆コミュニケーション能力研究の歴史的な2つの潮流
・レトリック研究(humanistic rhetorical study)
 →構想(invention)、配置(disposition)、修辞(style)、
  記憶(memory)、所作(delivery)から構成
・社会科学的研究(social-scientific communication theory)
<第7章 言語コミュニケーション(3)>

○翻訳・通訳の等価性=
語彙の等価性、慣用表現の等価性、文法的等価性、経験・文化的等価性、概念の等価性
<第8章 言語と文化の相互作用>

○イーミックとエティック
・イーミック(emic)=ある特定の文化の枠組みに依存して事象をみる
・エティック(etic)=ある特定の文化の枠組みに依存しないで事象をみる(Pike)
<第8章 言語と文化の相互作用>

☆コンテクストをとらえす尺度は主に2つ・・・
・静的か、動的か(コミュニケーションを規定するのか、お互いに変化していくものか)
・コミュニケーションが起こっている場のことか、その場を取り囲む背景か
<第9章 コミュニケーションの場と背景>

☆コンテクストの種類(Malinowski)=
・状況のコンテクスト(context of situation)
 →活動領域(field)、役割関係(tenor)、伝達様式(mode)が構成要素
・文化のコンテクスト(context of culture)
<第9章 コミュニケーションの場と背景>

☆コンテクスト化(contextualization)=
言語及び非言語を使ってある時ある場所で言った言葉と過去の知識を結びつけ、
会話を保持していくプロセス(Gumperz)
→コンテクスト情報をもとにある会話表現を選ぶこと(Maynard)=
 自己コンテクスト化(self-contextualization)
<第9章 コミュニケーションの場と背景>

☆Hallのコンテクスト定義=
「できごとを取り巻く情報であり、そのできごとの意味と密接に結びついているもの」
→共有している情報量が多ければハイ・コンテクスト文化、
 共有している情報量が少なければロー・コンテクスト文化
<第9章 コミュニケーションの場と背景>

○言語コード=制限(restricted)コード+複雑(elaborated)コード(Bernstein)
<第9章 コミュニケーションの場と背景>

○音調学(Vocalics)=韻律素性(prosodic features)+周辺言語(paralanguage)
<第11章 非言語コミュニケーション(2)>

☆ジェスチャーの機能=
1:表象記号(Emblems)、例示子(Illustrators)、感情表示(Affect displays)、
発話調整子(Regulators)、適応子(Adaptors)
<第11章 非言語コミュニケーション(3)>

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2004 4/15
コミュニケーション学、言語学、社会心理学、心理学、教育学
まろまろヒット率4

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『ことばと国家』 田中克彦著 岩波新書 198111.19.03

TBS系列の『新すぃ日本語』にまろまろと通じるものを感じる、らぶナベです。

さて、『ことばと国家』田中克彦著(岩波新書)1981初版。
佐倉助教授に薦められた言語学の本。
方言と別の言語との間の線引きは何をもってするのか、
純粋言語と雑種言語との違いは何なのかなどの疑問から、
ことばにまつわる社会性や歴史的背景を紹介している。
特にことばが政治的、歴史的に形成されてゆくことを紐解きながら、
(口語は文語が崩れたものだと思いがちだが実は口語の方が言葉の本質など)
ことばをめぐる常識の中に隠された様々な偏見を指摘している。

僕自身、日本語空間の中では大阪弁を話していることや
WEB空間の中では日本語でメディア活動をしていることもあって、
自分が使っている言語のマイノリティ性を感じることが多いので
(日本語自体が世界的に見て60分の1の市場規模)
この本の内容はけっこう考えさせられた。
ラジオ、テレビの普及で方言が消えていっているように、
WEBの進展で日本語はより少数派になっていくんだろうか?

以下はチェックした箇所・・・

○言語学というのは、本来実用性を動機としていることばの研究に、
それを無視してアプローチするという矛盾した姿をさらけ出している
<一 「一つのことば」とは何か>

☆あることばが独立の言語であるのか、それともある言語に従属し、
その下位単位をなす方言であるのかという議論は、
そのことばの話し手の置かれた政治状況と展望とによって決定されるのであって、
決して動植物の分類のように自然科学的客観主義によって
一義的に決められるわけではない
<一 「一つのことば」とは何か>

○ことばがくずれていくのは、それが生きている証拠である(略)
死んだことばは決してくずれず、乱れることがない
<二 母語の発見>

○文法はその本性において、ことばの外に立ってことばを支配する道具である(略)
ことばは現実であるのに対して文法は観念であり規範である
<三 俗語が文法を所有する>

☆学説をおぼえておいて、おうむ返しにくり返すことは、
それは科学とは何の関係もない、神秘の教義にしてしまう
→こういう場合はなるべく素朴に、しろうとっぽく具体的に考えてみたほうがよい
<七 純粋言語と雑種言語>

○ことばは、だれもが誤りをおそれず、権威におびえず、自由に使うからこそ、
さまざまな表現がうまれて発展していくのである
<八 国家をこえるイディシュ語>

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2003 11/19
言語学、歴史
まろまろヒット率3
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