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『刑法総論講義』 前田雅英著 東京大学出版社 1998(3版)08.03.00

これで憲法・民法・刑法の基本三法すべての体系書を一通り
読み終えたことになる、らぶナベっす(リーガルなフェチ化進行中)

さて、『刑法総論講義』[第3版]前田雅英著(東京大学出版社)1998年第3版。
同じ著者が書いた『刑法各論講義』に続いて読んだ総論についての体系書。
総論を読んで改めて思ったが刑法は議論のための議論をしている感じがする。
人の命を奪うほどの刑罰を扱うのだからある程度は普遍的な方程式は
必要だろうがそれにかなりこだわりすぎているように思える。
もともと人間がすることに対して処罰を加えるんだから
一律的な方式を当てはめることは本質的に限界があるはず。
(実際に刑法の中には形式的理論では説明が苦しい部分が多くある)
その前提の上で議論していかないと現実と隔離した議論が
延々と続いてしまう、そういう点では民法の方がずっと大人に感じる。
最近、具体例である刑法各論が見直されてきたというのは
当然といえば当然の流れだろう。
著者も実質的という言葉を使ってこの方向性を強調しているが
まだまだ足りないと思う。抽象的な議論に足を取られ過ぎないことも大切。

<序章>
☆犯罪の定義=「その国の国民が刑罰を使ってまで
守ろうとする利益を侵害する行為」
=刑罰は副作用の強い薬品のようなものなので他の手段で
犯罪防止が図れるならばなるべく用いるべきではなく、
効果が期待できない場合も用いるべきではない

○犯罪には自然科学が探求するような本質は存在しない→
刑法学は基本的に犯罪をどう設定するのが国民の利益に通じるか、
国民の意識にかなうかを考察する学問

○具体的な犯罪行為を確定する「犯罪論」と犯罪に対する効果としての
刑罰を論じる「刑罰論」は表裏の関係にある

○行刑法に犯罪学を加えたものを「刑事政策学」
→刑法、刑事訴訟法、刑事政策学を「全刑法学」と呼ぶ

☆刑法の機能=「規制的機能」、「保護的機能」、「保障的機能」

☆戦前の反省から刑罰法規を形式的に解釈して恣意的刑罰権の運用を防止する
形式的犯罪論=「刑罰謙抑主義」が戦後の主流だったが徐々に
「処罰に値するか否か」に注目する「実質的犯罪論」が台頭してきている

☆日本の刑法典の犯罪の類型が包括的で条文自体が少ないという特徴は
法解釈の裁量の幅が広いことを意味する=罪刑法定主義の枠内であっても
判例が法規範性を持たざるを得ない要因が存在している(日本刑法最大の特徴)

☆犯罪は「それ自体の悪(mala inse)」とされた自然犯と
「禁じられた悪(mala prohibita)」とされた法定犯に分けられることもあるが
両者の差は質的なものでなく量的なものに過ぎない

☆通常の公判手続で有罪を言い渡される被告人の数は認知件数と比べると
かなり少ないが(起訴率自体も半数)、その分公判手続での無罪率が
極端に少ないのが日本の刑事司法最大の特徴
←刑事事件の処理を刑罰を科すことの有無という通常の流れから
離脱させて処理することを「ディバージョン」

<第1章 刑法理論の発展>
○犯罪を「構成要件に該当し、違法で、有責な行為」と
三分説で定義したのはベーリング

☆旧派刑法学と新派刑法学の違い・・・
・旧派刑法学
フォイエルバッハ、ヘーゲル、小野清一郎
応報刑論=刑罰と保安処分は峻別される二元主義
客観主義
   vs
・新派刑法学
リスト、ベーリング、牧野英一
目的刑論=刑罰と保安処分は一体化する一元主義
主観主義
→ドイツ刑法学を基盤に日本の刑法学は
新派理論と旧派理論の対立を軸に発展してきた

☆現在でも刑罰論は応報刑論と目的刑論との対立から整理すべき=
「犯罪が起こったから刑を科す」vs「犯罪が起こらないように刑を科す」
(主要な対立点は犯罪行為における「自由意思」を承認するか否か)
→通説は折衷的な「相対的応報刑論」=「刑罰は犯罪結果に対する応報であり
犯罪予防の効果も期待できるから正当化される」

☆違法性は客観的に判断し、責任は主観的に判断する

<第2章 犯罪論の基本構造>
○法的安定性の要請が強い点が民法と比較した時の刑法最大の特徴
→安定性を求めるならば形式理論が最も適しているとされる

○犯罪論に求められる要件・・・
処罰に値するだけの害悪の存在すること(違法性)、
行為者にその行為に対する非難が可能であること(責任)

○法益侵害説=結果無価値論、法規範違反説=行為無価値論
→違法性の根拠を客観的なものに限定するか否かの争い

☆違法性阻却事由判断とは「可罰的法益侵害を超える利益の有無」

<第3章 罪刑法定主義と刑法解釈>
○罪刑法定主義は類推解釈の禁止が要請されるがあまりにも厳格な解釈は
妥当性を欠く→刑法各論の役割の大部分はこの類推解釈の禁止原則が
どの程度まで厳格に追及されるかに答えること

○合憲性を争う際に用いられる「明確性の理論」は法規それ自体の明確性を
問う理論だが判例は不明確の故に違法だとする主張に対して
法規が一見不明確に見えても「一定の解釈を行えば」明確となるという
判断を下すことが多い(アメリカやドイツでもみられる)
=不当な法規自体を違憲無効とするのではなく法文に限定解釈を
加えることによってそれを合憲とする「合憲的限定解釈」が用いられる
→影響の広がりと混乱を考えると法規そのものの違憲無効という
伝家の宝刀はできる限り抜くべきではないため

☆憲法学者は法令自体を違憲無効とすることについて抵抗感が少ない
=裁判官が実質的な立法活動を行うことは慎むべきであるという
権力分立原理論が強く意識されている
一方、刑法解釈学では合憲で合理的な処罰範囲を設定するには
どのように実質的に解釈すればよいのかという形で議論が展開される
(解釈学のためその対象となる法文自体の違憲性という問題意識は少ない)

○類推解釈は禁止されているが拡張解釈は許容されるとされる(最決平8.3.19)

☆刑法解釈の特色を論じる際に援用されるのが電気窃盗判例(大判明36.5.21)
→条文解釈として不合理なものはやはり罪刑法定主義の観点から
構成要件該当性を否定するが可能な限り具体的該当性を考慮して
柔軟な解釈をおこなうのが日本の刑法解釈の特色
=権利行使と財産犯論や共謀共同正犯論でも用いられる(最判平8.2.8)

○日本の刑法は「属地主義」(1条1項)を採用しているが日本国民の
国外犯については犯罪地の内外を問わずに刑法の適用を認める
「属人主義」を適用する(3条)

<第4章 客観的構成要件>
○客観的構成要件は違法行為の類型なので構成要件に該当する行為は
正当化事由(違法性阻却事由)が存在しない限り違法
→客観的構成要件の最も重要な構成要素は「結果」と「行為」

○一定の身分を有する場合のみ処罰するのが「真正身分犯」(賄賂罪など)
一定の身分を有する場合を重く処罰するのが「不真正身分犯」
(業務上過失致死傷害罪など)

☆刑法典は主体を自然人である個人を対象にしてきたが最近法人自体の
責任を問うべきであるという考え方が有力視されてきている(最判昭40.3.26)
←現在認められている法人処罰はあくまで個人を処罰した場合に
併せて事業主を処罰する「両罰規定」にすぎない

○軽微犯についての無罪判例は刑事司法システムの中で微罪処分や
起訴猶予によってふるい落とされるので実際上は非常に少ない

☆意識不明の重傷者を勝手に手術して治療する行為は「推定的同意」
として論じられる問題=緊急避難もしくはそれに準じる要件が
必要とされる(許された危険概念が使われることもある)

☆刑法での「行為」=「意思に基づく身体の動静」

○不作為の真正身分犯→「命令規範違反」
不作為の不真正身分犯→「禁止規範違反」
=不真正身分犯を罰するには「作為との等価値性」が求められる

○不作為とは絶対的な無為ではなく「一定の期待された作為をしないこと」

○犯罪論の対立が最も鮮明となるのが未遂の処罰範囲

☆中止未遂(43条後段)の要件には「結果発生防止の努力」が必要とされる

☆因果関係の相当性の判断基準=実行行為に存する結果発生の確率の大小、
介在事情の異常性の大小、介在事情の結果への寄与の大小

○因果関係の相当性判断について判例は「あれなければこれなし」の条件説を
採用しているとされてきたが現在は相当因果関係説を採用するに到っている
(最決昭42.10.24)

☆「相当因果関係説」=一般人の社会生活上の経験に照らして
通常その行為からその結果が発生することが「相当」と認められる場合に
刑法上の因果関係を認める説

<第5章 正当化事由>
☆正当化事由(違法性阻却事由)とは違法性がゼロになるのではなく
処罰に値しない程度になることを意味する
(生じた法益侵害を上回るだけの利益を担っているか否か)
判例が共通に挙げる要件=「目的の正当性」、「手段の相当性」、
「法益の衡量」、「相対的軽微性」、「必要性・緊急性」

☆正当防衛の要件=「法益の相対的な権衡」、「防御手段の相当性」
(防衛手段の必要最小限度性)

☆正当防衛よりも緊急避難の要件は厳しい→何も不正の侵害を行っていない
者に向けられた法益侵害行為を正当化するには他に避ける方法がない
唯一の方法に限られる=「補充性」が必要
←過失犯における結果回避義務と重なる面がある

<第6章 責任>
○未必の故意と認識ある過失の区別が故意と過失の限界線となる

○犯罪遂行意思は確定的であるがその遂行は一定の条件にかかっている
「条件付故意」には故意責任が認められる(最決昭56.12.21)

○法律の錯誤か事実の錯誤かの議論については最判平1.7.18が重要
(法律の錯誤を事実の錯誤と認定)

○事実の錯誤には客体の錯誤、方法の錯誤、因果関係の錯誤がある
→判例は個別の客体に対する認識を重視しない法定的附合説を採用

☆「法定附合説」は認識した内容と発生した事実が一致していなくても
構成要件の範囲内で附合していれば故意を認める
(およそ人を殺そうとしたのであるから他人であっても殺人既遂罪)

☆故意と実行行為との罪の重さが違う抽象的事実の錯誤(38条2項)にも
法定附合説が適用されて両者の構成要件が「重なる範囲」で処罰される

○過失の注意義務=「結果予見義務」&「結果回避義務」
→予見可能性&結果回避可能性が議論の中心になる

☆「許された危険」=本来的に法益侵害の危険を伴う
鉱工業・交通・医療などの行為につき社会的有用性を根拠に
法益侵害の結果が発生した場合でも一定の範囲で許容する考え方
←社会の活発な活動の維持を優先する価値判断が特色
(「新過失論」や「信頼の原則」などに影響)

☆「森永ヒ素ミルク事件判決」(高松高判昭41.3.31)では
結果回避義務を課す前提として具体的結果の予見可能性は不要で
行為になんらかの不安感が伴えば足りるとした「不安説」が採用された
→処罰範囲を限定する新過失論とは逆の方向性(ただし判例では定着せず)

<第7章 共犯>
☆教唆犯を処罰する61条での犯罪は何かという解釈には
「制限従属性説」(違法は連帯に責任は個別に)が通説

○共犯についてのすべての問題は形式論では決定し得ない

○共同正犯とは違い意思が通じ合わない「片面的教唆」、
「片面的幇助」は成立可能

○「自己の犯罪か否か」が正犯と共犯を分ける基準
→ただし判例は殺人や強盗などの重たい罪に対しては
見張り行為も共同正犯と判定している

○65条1項は「連帯的作用」、65条2項は「個別的作用」を定めたもの
=1項は真正身分、2項は不真正身分

○重い罪を教唆したところ正犯者が軽い罪を実行した場合
→両罪の重なる範囲で軽い罪の教唆犯を認める
軽い罪を教唆したところ正犯者が重い罪を実行した場合
→両罪の重なる範囲で軽い罪の教唆犯を認める(制限従属性説)

☆共犯と中止犯との関係=共犯者・共同正犯者の一部が任意に中止し、
かつ結果発生を防止した場合に、本人についてのみ中止未遂が認められる

<第8章 罪数論>
○条文上数個の構成要件に該当するように見えるが実は構成要件相互の関係で
一個の構成要件にしか該当しないのが「法条競合」
(特別関係、補充関係、択一関係、吸収関係)

○法条競合には含まれないが一罪と評価されるものの総称=「包括一罪」
(付随犯、狭義の包括一罪、接続犯、不可罰的事後行為)

☆数罪を犯した場合でも、一個の行為が数個の罪名に触れる「観念的競合」と
犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れる「牽連犯」は
「科刑上一罪」(54条1項)として扱われる(既判力は他の部分にも及ぶ)

○確定裁判を経ていない数罪のことを「併合罪」(45条)

<第9章 刑罰の具体的運用>
○執行猶予の取消=「必要的取消」(26条)と「裁量的取消」(26条の2)

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2000 8/3
法学、刑法
まろまろヒット率4
法務 キャリア

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『刑法各論講義』 前田雅英著 東京大学出版社 1999(3版)07.26.00

心斎橋そごう本店に「夏の売りつくしセール」というポスターが
貼ってあったのを見て「夏に限らず君自身が売りつくしやろ?」と思わず
突っ込んでしまった、らぶナベ@マジで誰か買ってあげてください(^^;
(そごう&大丸は御堂筋を中心にした心斎橋界隈の象徴なもので)

さて、『刑法各論講義[第3版]』前田雅英著(東京大学出版社)1999年第3版。
刑法学の第一人者が書いた刑法の基本書、スタンダードな一冊らしい。
このシリーズは総論と各論でワンセットとして構成されているが
刑法は各論の方が読んでいて面白いし最近その重要性が
妙に注目されているようなのでまずは各論から読んでみた。
刑法各論は結局は具体例を集めたものなので今まで読んだ
入門書の知識でも十分に対応できるものだった。
こうした分量の本のわりにはチェック項目自体も少ないし
あえていえば目新しいものも少なかったように思える。

法学の中では人命まで扱う刑法は一番厳しく事例も深刻なものばかりだけど
だらこそ思わず笑ってしまう具体例もいくつかあった。
例えばわいせつの罪で出てくる「わいせつ」の定義について
「家族だんらんの場での朗読がはばかれるか否か」を基準にした
最高裁判決がある(最判昭32.3.13)がそれは子供が基準になり
わいせつ概念を広げすぎるので不当とだ学説から批判されていることや、
殺人罪か同意殺罪かが争われた事例(3年以上の懲役か7年以下の懲役か)で
究極のSMプレイとして下腹部をナイフで刺すことを依頼された結果、
被害者を死亡させた事例について同意殺を適用した判例などを読んでいると
法廷で「この本は家族団らんの場で朗読しても大丈夫か?」とか
「この場合のSMプレイとはこういった趣向のもので・・・」とかいう話を
真剣に議論している姿を想像して微笑んでしまった、不謹慎かな?(笑)

以下は、チェック・・・
<序論>
☆各論では圧倒的に構成要件該当性判断が重要な役割を果たす
→その中でも実際上重要なのが各犯罪類型の「実行行為とは何か」

<第1章 生命・身体に対する罪>
○自殺は犯罪ではないのにそれを教唆・幇助した人間を処罰する
自殺関与・同意殺罪(202条)は61条・62条とはまったく別個の
「他人の生命の否定に関与する行為の処罰を独自に規定したもの」と考える

○自殺関与罪(202条)と同意殺人罪の区別は
その人が直接手を下したといえるかどうか

○自殺関与・同意殺人罪の解釈上最も問題となる殺人罪(199条)との区別は
「真意に基づく殺害の嘱託があったかどうか」
→究極のSMプレイとしてナイフで刺すことを依頼されてその結果被害者を
死亡させた事例について199条の成立を否定し202条を適用した
(大阪高判平10.7.16)=3年以上の懲役と7年以下の懲役の差

☆錯誤による殺人同意があった場合は「自殺が真の自己決定に基づくか否か」
という規範的評価によって202条の成否を判断する
また199条か202条かが問題となる場合には錯誤の重要性以上に
殺人罪として「実行行為性が認められるかどうか」を検討しなくてはいけない
→199条で処罰するには積極的に殺したと同視し得る事情が必要=
心中と偽って青酸ソーダを飲ませた事例では199条を適用(最判昭33.11.21)

○傷害罪(204条)の未遂処罰は規定されていないが
実質的には暴行罪(208条)が傷害未遂をカヴァーする

☆傷害罪とは「人間の生理機能への侵害」を罰する規定なので
女性の髪の毛を剃る行為は傷害罪ではなく暴行罪を適用(大判明45.6.20)
また近時の判例を総合すると傷害の態様にもよるが全治4、5日までは
204条の構成要件には該当しないとするのが合理的と思われる
→10年以下の懲役か2年以下の懲役かの差

○同時傷害罪(207条)は同時犯として暴行を加え傷害の結果が生まれた場合に
意思の連絡を欠いても「共同正犯」として扱われる刑法の特例

☆同時傷害の同時犯が共同正犯として扱われるのは
「同一期間におこなわれ」、「意思の連絡がないこと」、
そしてどの行為が傷害結果を生じしめたかが不明であることが要件
(意思の連絡があれば本条に関係なく共同正犯となる)
→207条は事実上被告人に挙証責任を転換する規定

○暴行罪は「身体に対する有形力の行使」を罰する規定なので
拡声器を使って耳元で大声を発する行為も208条に該当する
(大阪高判昭45.7.3)

○凶器準備集合罪(208条の2)の凶器とは殺傷用の「性質上の凶器」だけでなく
使い方次第では殺傷にも使用できる「用法上の凶器」を含む
また要件である「共同加害の意思」は積極的な攻撃目的だけでなく
相手が攻めてきたら反撃するといった受動的なものも含む(最決昭37.3.27)

○過失犯は刑法典上は例外的犯罪として規定されているが
我が国の刑法犯の中では過失犯(特に過失致死傷害罪)の占める割合は大きい

☆過失傷害罪(209条)は親告罪で過失致死罪(210条)は罰金刑しかない
→故意犯と比較して著しく刑が軽いのがその特徴

☆業務上過失致死傷害罪(211条)の要件である「業務」には
「社会生活上の地位」に基づき、「反復継続性」があり、
かつ「生命・身体への危険」を含むことを要求されている
→ただし業務の範囲は非常に広がっているので誤って人を殺害しても
業務性が否定されるのは家事、育児、自転車の運転ぐらいに限られる
=罰金しかない過失致死罪の適用は実際上はほとんどなく
5年以下の懲役であるこの211条が適用される場合が多い

○遺棄の罪は処罰範囲が微妙で可罰判断が国や時代によってかなり異なる犯罪
→日本では女性が犯す率が圧倒的に高い

☆遺棄罪の保護法益は生命、身体に対する危険犯(個人法益に対する罪)と
するのが現在の通説なので被害者に完全な同意が存在すれば遺棄罪は不成立
→ただし遺棄致死罪の場合には過失致死罪が成立し得る
(同意殺が可罰的であることと同じ)

○遺棄罪(217条)と保護責任者遺棄罪((218条)が処罰する遺棄には
安全な場所から危険な場所に移す「移置」と
危険な場所に放置する「置き去り」とがある
→不作為である置き去りに対しては被告人に保護義務がある場合のみ
218条で処罰される(最判昭34.7.24)

<第2章 自由に対する罪>
☆強要罪(223条)は一種の結果犯であり未遂処罰があることが
脅迫罪(222条)とは異なる→3年以下の懲役か2年以下の懲役の違い

☆強制わいせつ罪(176条)は被害者に男性を含む点が強姦罪(177条)と異なる
→7年以下の懲役か2年以上の懲役の違い

☆住居侵入罪(130条)の保護法益は「住居に誰を立ち入らせ
誰の滞留を許すかを決める自由」=「新住居権説」が通説(最判昭58.4.8)
→それゆえ大家が家賃を払わない間借り人を追い出すために
侵入する行為も130条を構成する(最決昭28.5.14)

<第3章 名誉・信用に対する罪>
☆たとえそれが真実であっても名誉毀損罪(230条)が適用されるが
公共の利害に関するなど一定の要件が備わった事実の場合には
それが真実と証明されれば処罰されないのが230条の2
→名誉への罪はドイツでは原則としてそれが真実であれば不処罰とされ、
逆にイギリスでは真実であるほど摘示する行為は法益侵害が大きいとされた
→日本の230条の2はこの二つの中間的な処理をするものといえる

☆業務妨害罪(234条)と公務執行妨害罪(95条)とを分ける「公務」とは
「強制力を行使する権力的公務」であるかどうか(最決62.3.12)

<第4章 財産に対する罪>
○現行の財産犯規定では情報そのものを財産として保護することは難しいので
情報の盗用などの行為類型に対してはまず著作権等の無体財産権の侵害として
保護を拡大していく方向が模索されなくてはならない
(情報自体を盗む罪も検討されたが1987年の立法は見送られた)

○物であっても誰の所有にも属さなければ財産犯の客体にはならない
→野生動物を捕獲する行為は銃猟法違反などになることはあっても
窃盗罪(235条)には当たらない

☆保護法益である財物の要件として必要な「他人性」は
民法上の権利の有無とは独立して判断すべき=「独立説」
→抵当権の有効性が民法上争われていても建造物損壊罪(260条)が
成立するとした判例がその代表(最決昭61.7.18)
=社会通念上一応は尊重すべき経済利益が認められれば他人性の要件は足りる

☆財産犯の構成要件解釈では法的権原に基づかない所持の侵害も
窃盗罪や詐欺罪に該当すると解し、自己の財物や権利に基づく
奪取行為の可罰性は違法性阻却の問題として処理される(最決平1.7.7)

☆毀棄罪を除く財産犯に対して判例&通説は客観的構成要件要素の認識を
超えた「不法領得の意思」という「主観的超過要素」を加えて要求する

○不法領得の意思=「自ら所有権者として振る舞う意思」、
「物の経済的用法に従って利用・処分する意思」

○窃盗罪は未遂を処罰する(243条)が財物の占有侵害の危険が
希薄な段階で処罰する必要はない(最決昭40.3.9)

○窃盗罪の既遂は被害者が占有を喪失し行為者(もしくは第三者)が
占有を取得した時点で成立する(最判昭24.12.22)

☆不動産侵奪罪(235条の2)にも242条が適用されるので
たとえ自己の不動産であっても他人の占有に属し
または公務所の命令で他人が看守する不動産は他人の不動産とみなされる
ただし過去に不動産の占有を開始した後にその占有が不法となっても
235条の2は成立しない→占有の態様が質的に変化した場合には侵奪を認める
(最決昭42.11.2)

○親族間の犯罪に関する特例(244条)は
強盗罪と毀棄罪以外のすべての財産犯に適用される

☆強盗罪(236条)と恐喝罪(249条)とを分けるのは暴行&脅迫が
「相手の反抗を抑圧する程度」の強度かどうか(最判昭24.2.8)=客観説が通説
→5年以上の懲役か10年以下の懲役かの違い

○強盗致死傷害罪(240条)における「負傷」とは
「強盗の機会に他人に傷害を加えること」(最判昭23.3.9)

☆「処分(交付)」が詐欺罪(246条)と窃盗罪とを分ける概念とされてきた
→現刑法は利益窃盗を処罰しないので処分行為の存否は詐欺罪と無罪を分ける

☆通説&判例は詐欺罪も財産犯である以上その成立要件として損害を要求する
→損害については「実質的個別財産説」で判断(大判昭3.12.21)
=医師であると偽って適切な薬を販売した事案で詐欺罪の成立を否定

☆恐喝罪(249条)の脅迫は脅迫罪(222条)の脅迫とは異なり
相手またはその親族の生命・身体・名誉・自由・財産に対する
害悪の告知に限定されない=婚約者に対する害悪も含まれる

☆債権者が債務者を脅して債権を取り立てる行為が恐喝罪に当たるかどうかの
判断については「実質的個別財産説」が有力だが
その判断基準は結局、実質的違法性阻却事由の問題に帰着する
→判例は「権利性」と「手段の相当性」の二つの要素を中心とした
違法性阻却判断を採用している(最判昭30.10.14)=無罪判断も多い

☆権限がないのに所有者でなければできない処分をすることが横領罪(252条)
=「権限逸脱」
単に権限を濫用するに過ぎないのが背任罪(247条)=「権限濫用」
→背任罪だけには未遂処罰規定がある(250条)

○背任罪が処罰する任務違反行為の典型例は無担保もしくは
十分な担保なしに貸し付ける「不正貸付行為」(最決平10.11.25)
ただしその裁量の範囲内であれば不適切な貸付であっても
任務違反とはならないのでそれを超えて権限濫用したといえる場合に
始めて背任罪が認められる(最決昭38.3.28)
それ故そもそも濫用の余地のない者にとっては背任はあり得ない

○背任罪でも不処罰な「主として本人のため」の行為判断で重要なのが
損害発生の確率、得られるであろう利益の衡量、
危険な取引を行わなければならない必要性の程度を踏まえた上で
本人のために行ったかという主観的メルクマールの判断(最決平10.11.25)

<第5章 公衆の安全に対する罪>
☆社会法益に対する罪は実害が発生していなくても
「抽象的な危険が発生した段階」で刑罰権を発動する点に最大の特徴がある

☆現住建造物放火罪(108条)や他人に対する非現住建造物放火罪(109条1項)
とは違って、自己に対する非現住建造物放火罪(109条2項)と
建造物等以外放火罪(110条)は「公共の危険」の発生=一般人をして
他の建造物に延焼すると思わせる程度の状態を要件とする「具体的危険犯」

<第6章 偽造の罪>
○テレホンカードなどのカード型有価証券のどの部分が
財産権を表示しているかについては可読部分と磁気部分の両者を含む
「一体説」が判例(最決平3.4.5)

○権限逸脱→偽造罪成立→横領罪、権限濫用→偽造罪不成立→背任罪

<第7章 風俗秩序に対する罪>
☆公然わいせつ罪(174条)とわいせつ物頒布罪(175条)でのわいせつの定義=
「徒に性欲を興奮または刺激せしめ」、
「普通人の正常な性的羞恥心を害し」、
「善良な性的道義観念に反するもの」の三つの要件をみたすもの
(最判昭26.5.10)

<第8章 国家法益に対する罪>
☆ロッキード事件判決(最判平7.2.22)は賄賂罪(197条以下)における
「職務権限」を実質化したものとされる
=賄賂罪における職務概念にとって重要なのは
「法的に明示された範囲内のことを行ったか否か」や
「通常職務として行っているのか否か」ではなく
「職務として影響を及ぼし得るか否か」

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2000 7/26
法学、刑法
まろまろヒット率4
法務 キャリア

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『この一冊で「刑法」がわかる!』 松山正一著 三笠書房 199602.06.00

刑法関連で読み終えた3冊目の本。
さらに今まで理論書で把握した骨格に肉付けする目的で
判例が豊富な三笠書房の『この一冊でわかる』シリーズを
読んできたがこれでこのシリーズをすべて読み終えたことにもなる。
内容の方は他の法律版と同じように刑法でもその例にもれず
実によく様々な具体例を紹介してくれている。(その数ざっと79例)
特に刑法は事例である各論を中心に考えるとわかりやすいので
なかなかに読んでいて楽しかった。
この本を読んで初めて知ったことだが『死刑囚』や『泥棒日記』で有名な
フランスの作家ジャン・ジュネは本人も常習窃盗犯で
終身刑まで言い渡されたことがあるらしい。
その時はサルトルやコクトーの奔走で特赦を得たらしいが
「彼の作品って単なるマニアの結晶やん(^^;」と突っ込んでしまった。
僕の痛いものコレクションに新たなコレクションが加わった。

以下、チェック&まとめたところ・・・

○刑罰の分け方=「生命刑」、「自由刑」、「財産刑」、「名誉刑」

○日本の刑罰は重い方から死刑→懲役→禁固→罰金→拘留→科料→没収
・死刑~科料までが「主刑」で没収は「付加刑」

☆一つの行為が複数の犯罪にあたる場合は刑罰の量刑の枠を
それぞれ刑罰の重い方を選んでその範囲内で処罰する(54条1項)
=「観念的競合」

○懲役刑(13条)と禁固刑(16条)は共に無期と有期があり、
有期の上限は15年だが最長「20年」まで延長することが可能

○「拘留」は刑法上の刑罰だが同じ発音をする
「勾留」は刑事訴訟法上の強制処分で刑罰ではない

○裁判を下される全犯罪の90%以上が罰金刑
(罰金は原則1万円以上、科料は千円以上1万円未満)

○刑罰の「科料」と同じ発音の交通違反などで支払う
「過料」は行政上のもので刑罰ではない
→「科料」を「とがりょう」、「過料」を「あやまちりょう」と呼ぶことも

○刑期は暦による年や月の単位で計算する(22条)
→2月と3月とでは3日も違う

○執行猶予を加えることができるのは3年以下の懲役か禁固、
または50万円以下の罰金の時のみ(25条)

○執行猶予中の犯罪でももう一度だけは執行猶予を受けることができる

○仮釈放で出所した人間の数が満期釈放で出た人間の数を上回っている(56%)

○例外的だが教師に「暴行罪」(208条)を適応した判例がある

○他人の封筒などの信書を開けると「信書開封罪」(133条)
→内容を見なくても読める状態であれば該当

○「あの肉はミミズの肉だ」などの嘘の情報などで業務活動を妨げれば
実害の有無に関わらず「信用毀損及び業務妨害罪」(233条)

○憲法20条「信教の自由」を刑法上で実現させたのが
「宗教的感情に関する罪」(188条~192条)

○民訴では証人や身内にとって重大な利害関係のある事柄については
裁判での宣誓を拒否できる(民事訴訟法196条)
刑訴でも証人自身や身内などが処罰を受ける可能性のある
事柄については宣誓を拒否できる(刑事訴訟法146条)

○警官が無理矢理職務質問をすれば「公務員職権乱用罪」(193条)、
また条件が整っていない逮捕や要件が整っていない勾留をおこなえば
「特別公務員職権乱用罪」(194条)

○職務上知った他人の秘密を漏らすと「秘密漏示罪」(134条)

○「傷害罪」(204条)と「暴行罪」(208条)との線引きは問題となるが
被害者が精神衰弱症になるまでイタ電をし続けた犯人には
物理的攻撃をしていなくても傷害罪が適用された判例がある

○ペットが他人を怪我させれば買い主は「過失傷害罪」(209条)
→ただし親告罪

☆「過失」=「注意義務違反」=
「予見可能性」+「回避可能性」があったにも関わらず
「結果予見義務」or「結果回避義務」を欠いたこと
○全くの第三者でも喧嘩をはやし立てると「傷害現場助勢罪」(206条)
☆単純な理論上では殺意無しで殴って相手が死んでしまえば
「傷害罪」(204条)+「過失致死罪」(210条)で懲役最大10年だが
結果的に死を招いた傷害に対しては「あれ無ければこれ無し」の
条件関係を重視して「傷害致死罪」(205条)を適応し懲役最大15年
→故意犯よりも過失犯が重く処罰されることを「結果的加重犯」
過失致死罪」(210条)よりも「業務上過失致死罪」(211条)の方が重い

○13歳未満の女の子との性交は同意を得ていても「強姦罪」(177条)
また、強姦罪は原則的に親告罪だが輪姦の場合は告訴無しでも成立する

○要求を受けたのに人の住居などから立ち去らなければ「不退去罪」(130条)

☆線引きが難しい「強盗罪」(236条)と「恐喝罪」(249条)との違いは
主観的な判断でなく客観的な性質に注目
→被害者が現実に反抗を抑圧されたかどうかは問わない

○借金の返済であっても強要すると「恐喝罪」(249条)

☆借金の借用証でも破ると「私用文書毀棄罪」(259条)
→「毀棄」とは文書としての役割を果たさなくすることなので
隠匿行為も毀棄のうちに含まれる

○「公用文書毀棄罪」(258条)は親告罪ではないが
「私用文書毀棄罪」(259条)は親告罪

☆預かった封書全体をネコババすると「横領罪」(252条)、
中身だけ抜き取ると「窃盗罪」(235条)でこちらの方が重たい
→占有を侵害している方が罪が重い

○ローン返済完了前に商品を売っても「横領罪」(252条)に該当
→支払が終わるまでその商品の所有権は売り主にあるため

○「盗品などに関する罪」(256条)は懲役刑と罰金刑の
両方が科される刑法上では唯一の罪

○役員が焦げ付くとわかっていた融資すれば「背任罪」(247条)

☆犯人自身とその家族が証拠を消しても「証拠隠滅罪」(104条)にはならない

☆被害者やその家族、目撃証人を脅したり面会を強要しただけで
「証人威迫罪」(105条の2)

○最近の判例による違法ではない安楽死の要件・・・
1:耐え難い肉体的苦痛があること
2:患者の死が避けられず、かつ死期が迫っていること
3:肉体的苦痛を除去・緩和する方法を尽くし、他に手段がないこと
4:生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があること←これが一番重要

☆「建造物損壊罪」(260条)と「器物破損罪」(261条)は
物理的に使用できなくする場合だけでなく
心理的に使えなくした場合でも該当する

☆「併合罪」の量刑の枠はもっとも重い刑の1.5倍を上限とする(47条)

☆原則的には悪事を重ねる再犯の刑期は2倍になり
情状酌量された犯人の刑期は2分の1になる

○親告罪で告訴権のある被害者に犯人が自分の罪を告げて処分を委ねると
自首と同じ扱いを受ける=「首服」(42条)

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2000 2/6
法学、刑法
まろまろヒット率3
法務 キャリア

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『伊藤真の刑法入門』 伊藤真著 日本評論社 199701.18.00

ようやく去年のうちに蒔いた「策」が実ってきてモンゴルにタダで
行けることになりそうな、らぶナベ@でもこの時期に行くって超極寒やん(^^;

さて、『伊藤真の刑法入門』伊藤真著(日本評論社)1997年初版。
日本の刑法は参考に使ったドイツ刑法の単語をそのまま直訳した
専門用語が多くてパッと見はかなり難しそうな感じがするけど
内容や構造自体は民法よりもずっと単純なので
単語さえ丁寧に押さえればかなり楽な法律。
ただ、六法の中では一番学説が鋭く対立していて
いろんな学説が出てくるのでちょっとうざったい所もある。
これはやっぱり刑法が人を殺せる法律だからだろう。
(刑法学者にも必要以上に攻撃的な人間が多いのはこのためか(^^;)
しかしこの本の著者も「いちばん最初にマスターできるのは刑法」
と書いているように誰かの学説の立場に立って研究するとか
資格試験用に勉強するとかではないなら(単にまんべんなく学ぶだけなら)
あまり学ぶ価値が見出せない法律だなぁっと感じた。
戦うなら刑法よりもやっぱり民法だ(^o^)
それとこの本を読んでみて国自体に対する罪がまだ残っていることを知った。
最近、社会的権威を破壊するというような意図を持って子供やお年寄りを
殺している事件が目立っているけどどうせ権威に楯突く犯罪をするなら
刑法第77条の内乱罪に該当するような楯突きかたをして欲しいもんだ。
でかいことを言って弱い立場の人ををちまちま攻撃する姿は
見ていてなさけなさを感じてしまう。
悪いことは完全に小さくやるか完全に希有壮大にやるか二つに一つだ(^_^)

以下、そんなこんなでその他にチェックした箇所・・・
<刑法総論>
○刑法は「法益保護機能」(処罰の範囲を広げるべき)と
「自由保障機能」(処罰の範囲を限定すべき)の二つの調整がテーマ

○イギリスでは取り調べの状況を全てテープで録音している

<犯罪の定義>
☆『犯罪とは「構成要件」に該当する「違法」で「有責」な行為』
・「構成要件」とは一般的、類型的な形式的判断
 →手術も傷害罪の構成要件に該当する
・「違法性」とは個別具体的な事情
 →手術は構成要件に該当するが違法性はないので犯罪は阻却
・「責任」とは思いとどまらなかったことを非難できること
 →責任主義(責任なくして刑罰なし)

<構成要件>
○「構成要件要素」=
・「客観的構成要件要素」(その事実の外面性)
 →実行行為、結果、因果関係を検討
・「主観的構成要件要素」(その行為者の内面性)
 →故意かどうかを検討
・・・の二つから成る
→まず客観から入って主観にうつるのが特徴

<客観的成立要件>
○客観的構成要件要素=「実行行為」、「結果」、「因果関係」の三つ
→結果が発生したときだけ因果関係を検討するこの順番が重要

○「実行行為」の定義・・・
「法益侵害の現実的危険という実質を有し、
構成要件に形式的にも実質的にも該当すると認められる行為」
→法益侵害の危険性を持っているかどうかが
実行行為の有無の判断するポイント(このため呪いは犯罪ではない)

○「不作為犯」=何もしないこと自体が実行行為にあたること
EX:溺れている「自分の」子供を助けなかったことなど
→「作為義務」の有無が不作為犯の成立要件!

○「間接正犯」=
他人を「道具のように」利用して間接的に犯罪をおこなうこと
→「道具理論」のため道具のように使われた人には責任が無いとされる
(間接正犯の成立要件は主観的要素と客観的要素から成る)

○犯罪の分類
・「正犯」=「直接正犯」&「間接正犯」
・「狭義の共犯」=「教唆犯」&「幇助犯」
・「結果犯」=結果の発生を要求する
・「挙動犯」=結果の発生を必要とせず一定の行動をするだけで犯罪になる

○因果関係には・・・
・「条件関係」=「あれなければこれなし」
・「相当因果関係」=「社会通念上相当であること」
・・・の二つが必要とされるのが通説→「折衷的相当因果関係説」

<主観的構成要件>
○主観的構成要件=「構成要件的故意」
「故意」とは「客観的構成要件要素(犯罪事実)に該当している事実を
認識、認容していること」

☆刑法では故意犯が原則!(38条1項)
過失を処罰する規定が例外的に明記されていなければ裁けない
→「窃盗罪」(第235条)は故意犯なので過失で人の物を盗めば処罰されない

○「構成要件的錯誤」があるときは構成要件的故意が阻却されるかどうかが
論点となる→「具体的符合説」VS「法定的符合説」(通説)

<違法性>
○構成要件に該当すれば原則として違法だが
例外的に違法性が阻却される場合がある→「違法性の阻却」

☆何をもって「違法」と言うのか?
「法益侵害説」VS「法規範違反説」が刑法の根本!
→通説は「法規範違反説」

○二つの説の違い・・・
・「法益侵害説」=結果無価値論(結果が悪い)だけ
 →故意犯と過失犯の違いはない
・「法規範違反説」=行為無価値論(行為が悪い)+結果無価値論
 →故意犯と過失犯は違う

○「違法性阻却事由」=
・「正当行為」←「法令行為」・「正当業務行為」・「一般的正当行為」(35条)
・「緊急行為」←「正当防衛」(36条)・「緊急避難」(37条)・「自救行為」

○被害者の承諾があれば一般正当行為として違法性が阻却される場合がある
→尊厳死の問題に出てくるか?

○「正当防衛」と「緊急避難」の違い・・・
「正当防衛」=相手が不正=正対不正
「緊急避難」=相手が正=正対正

○過剰防衛は「任意的減免」(36条2項)になる

<責任>
○行為者を非難する(=責任を負わせる)ためには・・・
・「責任能力」
・「責任的故意、責任的過失が無い」
・「期待可能性」
・・・の一つでも欠けてはいけない

○「責任能力」=「是非弁別能力」+「行動制御能力」

○「刑の減軽」は有期ならば半分になるのが普通

○責任無能力は原則無罪だが「原因において自由な行為」理論によって
修正されることがある

☆故意・・・
・「構成要件的故意」
・「責任故意」=「違法性阻却事由を基礎づける事実の不認識」
 +「違法性の意識の可能性」

○「違法性阻却を基礎づける事実の不認識」
「誤想防衛」などの場合は故意責任は向けられないこと=勘違いは許される
→ルイジアナ州で起こった服部君射殺事件で被疑者に無罪判決が出たのもこれ

○「違法性の意識の可能性」には「制限故意説」が通説

○「期待可能性」は実際の事件で認められることはない→最後の安全弁

     ☆☆故意犯の成立要件☆☆
○構成要件
・「客観的構成要件」=実行行為→因果関係→結果
・「主観的構成要件」=構成要件的故意
         ↓
      <構成要件に該当>
         ↓
○違法性阻却事由はないか?
・「正当行為」=法令行為・正当業務行為・一般的正当行為
・「緊急行為」=正当防衛・緊急非難・自救行為
         ↓
      <違法性阻却なし>
         ↓
○責任要素
・「責任能力」=是非弁別能力+行動制御能力
・「責任故意」=違法性阻却事由を基礎づける事実の不認識
 +違法性の意識の可能性
・「期待可能性」
         ↓
       <責任あり>          
         ↓ 
       <故意犯成立>

○修正された構成要件
・時間的修正→「未遂」、「予備」
・人的修正(共犯)→「共同正犯」(60条)、「教唆犯」(61条)、
 「幇助犯」(62条)、「共謀共同正犯」(条文無いが判例では認められている)

○「未遂」が処罰されるのは各本条で定められている場合だけ!(例外的)

○未遂・・・
・「中止未遂」=自己の意思により中止
 →刑罰は必ず減軽もしくは免除の「必要的減免」(43条但書)
・「傷害未遂」=たまたま中止
 →刑罰の減軽は裁判官が判断する「任意的減軽」(43条本文)

○「免除」とは有罪と判断するが刑を執行しないで免除するという意味

○「未遂犯」と「不能犯」を分ける「実行行為としての危険性」は
科学的見地からではなく一般人の見地から判断する

○「実行の着手の意義」では「実質的客観説」が通説

○「共同正犯」には個人責任の原則を修正した「一部実行全部責任」を適用

○共同正犯の成立要件・・・
・主観的要件=共同実行の意思が存在すること
・客観的要件=共同実行の事実が認められること

○教唆犯の犯罪性に関しては「共犯従属性説」VS「共犯独立性説」
・・・共犯従属性説が通説で特にその中の「制限従属性説」が有力

○幇助犯の成立要件=「幇助行為」&「被幇助者の実行」
→幇助犯の刑は「正犯の刑を減軽する」

○幇助の物理的方法による場合を「有形的従犯」、
精神的方法による場合を「無形的従犯」

<罪数>
○二個以上の犯罪の場合はまとめて数罪と呼ぶ

○一罪か数罪かは「包括的一罪」と「法条的競合」がある

○数罪の場合の処罰方法は
・「科刑上一罪」=観念的競合(54条1項前段)と牽連犯(54条1項後段)
・「併合罪」=確定裁判を経ない数罪

<刑法各論>
○最近は各論の重要性が見直されている

☆刑法各論を学ぶ時は常に「保護法益」から見ていくのがとても重要!

○保護法益には「個人的法益」、「社会的法益」、「国家的法益」がある

○胎児などの何をもって「人」になるのかは「一部露出説」が通説

○「傷害罪」(204条)=人の生理的機能を害すること
「暴行罪」(208条)=人の身体に向けられた有形力の行使のこと

○「業務上過失致傷罪」(211条)の「業務上」とは
「仕事の上で」という意味ではない!

○「脅迫罪」(222条)は本人かその人の親族に害を与えると
告知しなければ該当しない→友達や知り合いでは該当しない

○「強要罪」(223条)=義務のないことを行わせること

○「名誉毀損罪」VS「表現の自由」との調整を図る目的で
戦後になって「230条の2」が生まれた
→「公共の利害」、「公益目的」、「真実の証明」の
三つの要件の下では違法性が阻却される(230条の2の1項)
・違法性がたとえ阻却されなくてもそれが真実だと信じていたときは
「違法性の錯誤」として違法性が阻却される場合がある(誤想防衛と同じ)

○「名誉毀損罪」(230条)と「侮辱罪」(231条)との違いは
事実を摘示するのかしないのかの差

○刑法での「信用」とは経済的信用に限る

<財産罪>
☆財産罪の分類方法には「占有」に注目する!
・占有が移転するか、移転しないか
・被害者の意思に反しての移転か、瑕疵ある意思に基づく移転か

☆「財物」の意義に関しては「有体性説」VS「管理可能性説」
通説は管理可能性説の中の「物理的管理可能性説」
→単なる情報のようなものは財物とは認められない!

☆財産罪の保護法益は「占有説」が通説
→判例占有説ではひったくり犯人からバッグを取り戻すのは
窃盗罪の構成要件に該当するが自救行為として違法性は阻却

☆「窃盗罪」(235条)の客体は「財物」しかなく「財産上の利益」は
客体にはならないので財産上の利益を盗んでも窃盗罪には該当しない!
→最初から意図しないで無銭飲食すれば刑法では無罪になる場合がある
・「財産上の利益」も客体になるのは「強盗罪」(236条)、
「詐欺罪」(246条)、「恐喝罪」(249条)、「背任罪」(247条)だけ
 →これらは「2項犯罪」と呼ぶこともある

☆財産罪総論では「保護法益」と「不法領得の意思」が論点になる

○窃盗罪の成立のために必要な「不法領得の意思」・・・
・「所有権者として振る舞う意思」(不可罰的な使用窃盗と区別するため)
・「物の経済的用法に従って使用、処分する意思」(毀棄罪と区別するため)
→黙って友達の消しゴム使った&チャリ乗ったは窃盗罪にはあたらない

○死者に占有は無いので死者からの窃盗というのはありえないが
判例では被害者を殺害した者自らが殺害直後に財物を奪取した場合には
窃盗罪が成立すると考えられている
(死者が生前有していた占有を侵害したという説明)

○「強盗罪」(236条)は暴行、脅迫を手段とするところが特徴
→殴った後で物を取る意思が生じた場合は強盗罪ではなく暴行罪&窃盗罪
反抗を抑圧する状態になった後に物でも取ってやろうと思って取った場合は
強盗罪にはならない→刑の重さが違うので裁判で争われる争点になるだろう

○「強盗致死傷害罪」(240条)で被害者を死亡させた時は
「死刑又は無期懲役」の日本の刑法では珍しくとても重たい刑罰

○単に人を騙す罪というのは日本にはない!
→財産上の利益を侵害しない限り無罪

○「横領罪」(252条)の保護法益=「委託信任関係」
→信頼を裏切る場合は刑罰が重い
・種類は「単純横領」、「業務上横領」、「占有離脱物横領」

○「社会的法益に対する罪」の代表・・・
「放火罪」(108条以下)、「偽造罪」(148条)

☆「公共の危険」=「不特定または多数人の生命、身体、財産に対する危険」
→放火罪は社会的法益に対する罪なので
現住建造物放火罪の場合は殺人罪よりも重たい

○放火罪をいつ既遂とするかは「独立燃焼説」が通説

○「偽造罪」(148条)の保護法益=「文書の公共的信用、社会的信用」
→成立には「行使の目的」が必要

○日本の偽造罪では「形式主義」(作成名義の真実性を確保する)を原則にして
例外的に「真実主義」(内容の真実性を確保する)を取り入れている

○国家的法益に対する罪の代表は「内乱罪」(77条)

○「偽証罪」(169条)は「法律で宣誓した証人」だけがその対象になる

○「賄賂罪」(197条)の保護法益=「公務員の職務に対する信頼」
→成立には不正なことをやる必要はない

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2000 1/18
法学、刑法
まろまろヒット率3
法務 キャリア

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『3時間でわかる刑法入門』 新保義隆監修 早稲田経営出版 1999(補正)11.30.99

京都伏見に現存している寺田屋では「龍馬寿司」なるものが
売られていると知って「やりすぎ!」と思わず突っ込んでしまった、
らぶナベ@でも話の種になるので龍馬が生きてても許すだろうな(^^)

『3時間でわかる刑法入門』新保義隆監修(早稲田経営出版)1999年初版補正。
始めて読んだ刑法関連の本でかつ11月に読んだ11冊のメモリアル記念本。
(たぶんこの記録は僕にもやぶられないだろう)
刑法に始めて触れてみたがもともと法学はしょせんルールでしかなくて
そのルールをどう当てはめるかだけの話にすぎないものだけど
このルールや適用に関しての緻密さや厳密さは刑法が一番しっかりしている。
これは刑法が場合によっては人を殺せるほどの力を持っているからだろう、
学説や判例での議論がやたらと盛んなのも与える影響の大きさからだ。
その分、かなり自由度があって適用に広がりのある民法に比べて学びやすい。
(類推適用も禁止されている)自由があるということは
それだけ複雑になることでもあるんだとあらためて納得した。
(民法はそういう意味でいい加減な法だろう、個人対個人の話だしね)

内容の方はそもそも刑法をぜんぜん知らなかったので読むだけで楽しかった。
特にニュースとかで何となく耳に入っていた用語のちゃんとした概念説明や
刑法の適用についての学説がある程度体系立てて書かれていたので
読みながらパズルを埋めるような快感をおぼえていった。

以下はややこしかったり押さえておくべきと思ってチェックした箇所・・・
☆現在の刑法はその行為の社会的不当性よりも結果に注目する
「結果無価値論」が学説的には優勢になっている。

○「不能犯」と「未遂犯」の区別をどうするかが
判例と学会を巻き込んで論争になっている。
・「不能犯」は危険性のない行為をして犯罪を実現させようとすること。
(呪いなど)→刑法としての処罰はされない。
・「未遂犯」は実行行為をしたが結果が生じなかったこと。
→刑法として処罰される。

○刑法での「責任」とは「思いとどまらなかったことを非難できる事情」。
責任がなければ犯罪として成立しない。

○窃盗罪は所有権ではなく占有権を対象としている。

☆窃盗罪は財物そのものを対象としているが
強盗罪は財物そのものに加えて「財産上の利益」も対象としている。
→キセル乗車は窃盗罪には当たらないが
タクシーに無理矢理乗るのは強盗罪が成立する。
(どちらも財物そのものではなく財産上の利益を侵害している)

○「事後強盗罪」とは取り返しを防ぐ、逮捕を免れる、証拠隠滅が成立要件。
さらに奪うことはこれと違い「強盗罪」に当たる。
→盗みに入って相手に見つかり暴行や強迫をすれば事後強盗罪だが
開き直ってさらにさらに物を取れば強盗罪になる。

○14歳未満は刑法上は未成年になる。(「刑事未成年」)

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1999 11/30
法学、刑法
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